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黙っとれ

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『モンスターを倒すとドロップするんだけど、収納鞄に【自動回収】の魔法を付けてもらってあるから、知らない間に倒したモンスターのドロップ品も入ってると思う。数は本当にどれくらいか分からないんだけれど、数万本はあると思う』
 す、数万っ!
『だから、子供たちにあげてくれないかな』
 ……ローポーションはきっと体力だか何かを回復する薬なのだろう。収納鞄の中の食事とは違う。薬であれば、今、このやせ細ったこの子たちに必要な物じゃないだろうか。毎日毎日使うものではない。今だけ使うと考えれば渡してもいいなか。数万本もあるならこの子たちの体がしっかりするくらいまでは足りるだろうし。
 いや、本数の問題ではなく、私も何かあげたい。してあげたい。
 健康のためなんてごちゃごちゃ考えてるけど、結局は自分のエゴなのかも。彼らのプライドを傷つけたりしないだろうか。彼らの今までの生活を脅かすようなことになりはしないだろうか。私はいつまでもここにいるつもりもない。日本へ帰る方法を探したいし、帰れるならすぐに帰るつもりで……。
 ……そうだ。この子たちなら、誰かのためということなら……。今だけの特別で、今後頼るようなことはないと自覚すれば……。
「よし。ディラ、ちょっと何もしゃべらないで、ただ優しそうな表情で微笑んでてくれない?」
 剣を持ち上げて小さな声で囁く。
『分かった』
「皆、ご飯の後は、これ。えーっと、すごく大事な剣なの」
『大事、ユキが僕のこと大事って言ってくれた!』
 黙っとれ!
 ずんっと地面に剣を突き立てる。
 お、立った立った。
「わー、勇者の剣みたいだ。ねぇ、おばばの話してくれた勇者の剣ってこうして地面に立ってたんだよね?」
 ドンタ君が目を輝かせた。
「そうじゃな。1000年前の勇者様の伝説ではそう伝わっておる」
 1000年前!勇者の伝説!どこの世界にもそういう創作物ってあるんだ。勇者しか抜けないエクスカリバーみたいなやつだよね?違うかな?
『へ?1000年?』
 ディラ、黙ってなさいって言ってるのにっ!
「そう、これは、えーっと、すごい剣で、剣の精霊みたいなのに、えーっと毎日お供えしなくちゃいけないの」
 収納鞄からローポーションを取り出し、マルシャちゃんを手招きする。
「ほら、これを持って。お供えいたします。お召し上がりくださいって剣の前に置いてね」
 ミーニャちゃんの手にローポーションを手渡し、それからそっと両肩に手を置く。


===============
はじめのうちは「怒らせないように」とか言ってたのにね。
今では、黙っとれ!とか言うまでに……あ、心の中でだけど。
いつもご覧いただきありがとうございます。
感想をいただくと泣いて喜びます。
どのくらい泣いて喜んでいるかと言えば、ディラを想像してもらえると
私の喜びようが伝わるかと……。
もちろん、全然反応がないと、置いてきぼりのディラ状態になってます。
……そう、私にとって読者様がディラにとってのユキみたいな存在!

お供え(感想)すると、空腹(やる気)が満ちます
……と、書いてみて、ああ、私、ディラみたいな人間なの?
まって、一緒なの?と、戸惑っている……
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