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「馬に乗れるなら、もう一つの馬に乗って、一緒に街まで走れ。体重が軽いお前なら馬の負担も少ないだろうし、一人が脱落しても二人ならどちらかが街にたどりつけるかもしれない。二人とも街にたどり着けたら、お前がギルドに、そっちは兵に、分かれて報告しに行ってくれ」
 御者が、もう一頭も馬車から切り離しながらうなずいた。
「待て、いやだ、こんなところに置いていかれたくないっ!私が馬に乗って、街へ……」
 と、往生際悪く押さえつけられた商人が声を上げる。
 御者とぺーぺーが馬に乗った。
「俺たちはC級だ。頼りないかもしれないが、多少は戦える。お前の大切なご主人様は俺たちに任せてくれ」
 二人の冒険者がバーヌに声をかける。
 バーヌが不安そうな顔を見せた。
「危険が迫れば、すぐに助けてくれと声をかけるから、安心してくれ」
「ふっ、それは安心だな。無理する前に声を上げてもらえる方が……だろう、金狼」
 女性冒険者の言葉に、バーヌが私の顔を見る。
「なるべく、赤目の気を引き付け、馬車から遠ざけますから……そして、もし、どうにもならなくなったら、ユーキを抱いて逃げます」
「うん。ありがとう。バーヌ。どうにもならなくなる前に、ちょっと無理かなって思ったくらいで戻ってきていいんだからね?二人も引っ張って戻ってきてね?」
 二人というのは、ソーサスさんと女冒険者だ。
 今まで黙っていた商人が、荷物をほどいた。
「すまない。私たちは戦えない。だが、支援することはできる……」
 と、荷物から何本かのポーションを取り出した。
「使ってくれ!効果大が2本、中が4本ある」
「いいのか?効果大は結構するだろ?」
 別の商人が荷物を開ける。
「生きるも死ぬも一連托生だ。こういうのを冒険者ではパーティーっていうのだったかね?私たちも今回はパーティーの一員になれたというわけだ。……使ってくれ。防御力が上がる」
 キラキラと宝石のような石が3つ付いた腕輪?を差し出す。
 誰が使う?と、3人が顔を見合わせている。
「付けろ」
 と、ソーサスさんが腕輪を受け取ると女性冒険者に差し出した。
「私?」
「ああ、それがいい」
「まずは、火矢を打ち込む、効果など全くないだろうけれど、注意をそらすことはできるはずだ」
「分かった、そのすきに足元を狙おう。視覚を中心に狙っていくのが得策だと思う」
「そうだな、腹の下に潜り込めれば」
 と、3人は赤目に向かって駆けだしながら連携を取るために話をしている。
「身を隠しましょう、赤目の木がそがれた隙に、道をそれて森の中に」
 残った冒険者の言葉に、それぞれが馬車を下りるために準備を始める。
「ポーションと傷薬だけ持ってばいいな」
「大丈夫か?走れるか?」
「この布も使えるんじゃないか。上からかぶれば、見つかりにくくなると思う」
 と、こちらはこちらでどうするのがベストかと話をまとめ始めた。
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