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いただきます

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「なんかべとっとする」
「チャーハンってパラパラがいいんじゃなかったっけ」
「無理」

 そっか。だよね。プロじゃないもん。それはいい。べとってしててもいい。ただ、納豆が主張しなければ。

「出来た。多分」
「多分……?」

 一抹の不安を残しながらも、お皿に盛ってカメラに向けてチャーハンを見せる。

「出来ました! これから二人で食べたいと思います!」

 キッチンからリビングに移り、並んで椅子に座る。目の前にはチャーハン。納豆入り。

「ぬおお……」

 なんか変な汗出てきた。
 三吉君を見たら、眉間に皺寄せてチャーハンを凝視していた。仲間……!

「食、べようか。もしかしたら納豆効果で卵の味しないかもしれないし、チャーハン効果で納豆も味薄れてるかもだし」
「……うん」

 いくらもがいたって食べないと罰ゲームは終わらない。

「いただきます!」

 勢いに任せてスプーンを口に突っ込む。

 おッ。

 これは……!

「不味いぃ~~~~~ッ」

 ダメだ。奇跡が起きて味あんまりしないじゃんとかなるんじゃないかとちょっとだけ思ってたのに、全然そんなことなかった。納豆主役。

「納豆が俺に攻撃してくる!」

 急いでお茶を飲む。中和させないと。

「三吉君どう? 納豆が主張してるからそっちは平気、じゃなかったね」

 隣では三吉君が俯いて震えていた。仲間よ。

「写真撮ろうか」
「そうだな」

 二人とも真顔で納豆チャーハンとともに写真を撮る。無理、納豆の香りを浴びながら笑顔とか無理。撮影なら一瞬だけ気合い入れてやれるかもだけど、オフの状態じゃ無理。

 この後も屍になりながら、二人でひいひい言って食べる。これ、一人じゃ食べ切れなかったな。仲間がいてよかった。



「ご、ごちそうさまでした!」

 どうにかこうにか完食し、カメラを止めた。これでちゃんと食べたという証拠になる。もう一生食べたくない。吐きそう。

「生きてる?」
「死んでる」

 よかった。生きてるみたい。

「そうだ」

 納豆の衝撃で忘れてたけど、三吉君に聞きたいことがあったんだ。スマホをいじって画面を見せる。

「何?」

 そこには、数日前に俺を悩ませた呟きが表示されている。

「俺たちがドラマだけじゃなくて、オフでも仲が良いんじゃないかみたいな呟きが多くて。事務所は問題無いって言ってるけど、三吉君はどう?」

 もし三吉君が嫌だったら否定しておいた方がいい。三吉君は画面を食い入るように見てから答えた。
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