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14.とんちんかんソラ

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 その後も二人の攻防戦は続いた。
 何だかんだと理由をつけては近づき触れようとするソラと、顔を真っ赤にして逃げるプラド。
 そんなアホな事をしていても、ちゃんと目的地に辿り着くのが優等生コンビである。

 次の目的地はゴーレムの生息地。
 ゴーレムが生息しているであろう場所は、岩場か沼地になる。
 岩場のゴーレムは岩で体を形成されている。一方沼地のゴーレムは泥で形成される。その為、岩場のゴーレムより素早いが防御力が劣り、攻撃さえ当たればわりと簡単に倒せる。
 特に話し合いは無かったが、二人が選んだのはもちろん沼地だ。

「居たな……」

「ふむ」

 二人で木の陰に隠れながら、やや疲れた様子のプラドが呟いた。
 沼地には二人が睨んだ通り、泥で形成されたゴーレムがノシリノシリとかっ歩する。
 ただ予想外だったのは、想定していたゴーレムより少しだけ大型だと言うことだ。

「……行くか?」

「まぁ、余裕だろ」

 今度はソラが声をかければ、プラドは余裕だと胸を張る。そんなプラドの隣でソラはジッとゴーレムを見つめた。
 平均より少し体が大きな事以外は、どこにでも居る普通のゴーレムに見える。
 しかしなぜだろうか、ただのゴーレムのはずなのに妙な違和感を覚えるのは……

「……プラド」

「何だよ」

「やはり岩場に行かないか?」

「は?」

 ソラはそれなりに魔物との戦闘を経験してきた。たいがいは得意の魔術で難なく討伐したし、大きな怪我もしたことが無い。
 けれどそれは、直感でわずかでも危ないと感じたら引き返す判断を間違えなかったからだろう。
 そして今回も、ソラの直感が危ないのではないかと訴えてくるのだ。
 しかし、そんなソラをプラドは鼻で笑う。

「少し大きいだけだろ。何をビビってんだ」

「しかし……」

「俺達二人でかかれば余裕だろ」

「……二人で──」

 プラドの言葉に、ソラの心は揺れた。
 二人でかかれば余裕──、そうだ、今は一人ではないのだ。
 大きなゴーレムが何だ、小さな違和感が何だ。たとえ想定外の事態になろうとも、二人で力を合わせれば乗り越えられるだろう。
 何より、プラドが自分を信用してくれた。プラドが、二人なら余裕なのだと言ってくれたのだ。今期待に応えないでどうする。

「分かった、行こう」

 とたんに自信が湧いてきたソラは、あれほど不安に感じていたゴーレムもたいしたことない魔物に見えてくる。
 大丈夫、二人ならば大丈夫なのだ。
 自分とプラドにかかれば、あんなヤツは取るに足らないのだ。

「頼むからとんちんかんな事はするなよ」

「とんちんかんとは?」

「さっきからお前はとんちんかんな事しかしてねーだろ!」

「そうか」

 それは知らなかった。今後はとんちんかんな事態にならないよう細心の注意を払ってプラドにかかった魔術を検証しよう。
 と、どう考えてもとんちんかんな事態が解決しない思考に落ち着いてしまったソラだったが、本人はいたって真面目に考えての結果だ。今後も間違いに気づく日は来ないだろう。

 そんな事より今のソラの頭は、目の前のゴーレムをいかにプラドと連携して倒すかで占められる。
 隣ではすでに魔術を展開させる準備を始めたプラドが居る。
 それにならいソラも魔術の準備を始め、一呼吸おいてプラドを見た。
 二人で視線を合わせ、無言でうなずき合う。プラドが手をおろしたまま三本の指を立てた。それが二本、一本と減っていき、最後の指を折った瞬間──

 木から飛び出したプラドの手からは爆音が、ソラの手からは青い光が飛び出す。
 先にゴーレムへ辿り着いたのはソラの魔術だった。
 泥の体に直撃し、大きなへこみを作って泥が飛び散る。
 その時点で、ソラは珍しくて慌てた。
 ──おかしい

「プラド! 待て!」

 すでに魔術を展開していたプラドに、ソラの制止はとうてい間に合わない。
 プラドの魔術もゴーレムの頭に直撃し、大きくへこむ。しかし、それだけだ。

「ちっ、防御力が高いな」

「違うプラド! 一旦引こう!」

「何言ってんだ。さっさと畳み掛けるぞ!」

 そう言ったプラドが更に数種類の魔術を展開させようとしたのがソラも感じた。
 だけどダメだ、それは失敗する……と直感で分かった。

「……っ!? 何だこれ!?」

 完璧に展開したはずの魔術が、手元で小規模な爆破を起こして消えていく。

「うぉっ!? お、おいメルランダ!」

 それでも懲りずに魔術を使おうとするプラドの腕を引き、必死にソラは逃げようとした。

 ゴーレムは魔術に弱い。ソラの魔術が直撃した時点で致命傷を与えていなければおかしいのだ。
 なのにゴーレムは倒れなかった。そして、ゴーレムがソラ達に気づいた途端、周りの空気が変わった。
 魔力が吸収されている。それだけでは無い、おかしな魔力が辺りに流れ、展開しようとする魔術を邪魔している。
 ソラは確信した。こいつは異変種だと。

 
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