【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

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強み

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「二人とも、早く逃げて。お願い……」

涙をためて、僕たちに訴えてくるラコ。

僕たちは彼女を一旦ソファに座らせて、落ち着かせようとした。

最初、ラコは「逃げて」の一点張りだった。

しかし僕とジルさんが粘り強く説得すると、ようやく口を割った。

「お父さんが捕まった。

あの男が……カウガを酷い目に遭わせたあの男が、お父さんを連れていったの。

それからカウガに伝えろ、って。

『お前がこの店に逃げてきたことはわかっている。どこへ隠れても無駄だ、今すぐ国の治安局に出頭しろ』って。

俺の名前を言えば奴は分かるから、って名前を言った。

ザン=ダールアンだ、って」

『あいつに、ドースさんが捕まった……』

頭の中が真っ白になった。

「そんなのだめだ……今すぐ治安局に行かなきゃ……!」

「カウガ君、落ち着いて」

「でなきゃ、あの男は……」

「カウガ君!」

ジルさんに肩を揺さぶられ、はっとした。

「ジルさん……」

「とにかく落ち着いて。

反逆罪か何かを理由に国が拘束したって建前だろうけど、明らかにドースは人質だ。

君をおびき寄せるためのね」

「でも……じゃあ尚更いかないと!」

「だから落ち着いてって!

君が行ったら相手の思うつぼでしょ。それにのこのこ行ったところで、まず間違いなくドースは返してもらえないよ。ただ君が捕まるだけ。

むしろ人質なんだから、君が現れるまですぐに危害を加えたりはしないはずだ。

だから今は、焦らずに手立てを考えよう」

「そんな……」

僕のせいでドースさんが。それなのに何もできないのか。

「それにしても、なんでここにいることがバレたんだろう。

レジスタンスのメンバーがたまり場にしていたときだって、この店は一度もマークされなかったのに……」

「あ、あの……」とラコが言った。

「ん?」とジルさんは、彼女の方を見た。

ラコは立ち上がり、台所の中に入っていった。そしてすぐに戻って来た。手にはこの国の新聞が握られている。

「お父さんに、カウガには見せないようにって言われていたんですけど……」

ラコは新聞をめくり、その中の一ページを広げた。

ラコが指差した箇所には、表がのっている。

『指名手配者リスト』



「僕が、ゴダスの斧のメンバーを殺した……?」

新聞にのせられた『指名手配者リスト』には、そう書かれている。同胞殺しの凶悪犯。パーティーメンバー3人を殺め逃走したために、現在、指名手配中。

ジルさんは言った。

「でもこの3人って……」

「この店にザン=ダールアンが来たってことは、他の3人ってことだろうね。

戦士、魔術師、神官だったっけ? 君がうまく逃げおおせた後、ザンが殺ったんだろうね。

そして君に、その罪をなすりつけた」

あの男の笑みが目に浮かぶ。うまく利用された。しかもこんなにも早く、こっちの居場所が突き止められるなんて。

「お父さんはこの新聞を見た後に、『ちょっと出てくる』って言ったんです。
他の二人には、仕事にでも出たと伝えてくれ、と。

たぶん、どういうやり方かは分からないけれど……カウガのことについて、何か情報を得ようとしたんじゃないでしょうか」

「なるほど」

ジルさんは頷いた。

「情報収集するつもりが、どこかのタイミングで国の人間に怪しまれて、逆に情報を与えることになってしまったのかもね。

……うん。細かい経緯は分からないけれど有り得ない話ではなさそうだ」

「僕のせいだ」

声が震える。背筋が凍えるように冷たい。

「僕の安全を守ろうとして、ドースさんは……」

ジルさんが僕の肩を掴み、揺さぶった。

「君のせいじゃない。ドースは自らの意志で立ち向かおうしたんだ。国に捕まるリスクがあることなんて、百も承知でね。
僕たちが今すべきことは、自分たちを責めることじゃない。
ドースの勇敢さを称えること。
そして必ず、彼を救い出すことだ」

僕はジルさんの目を見た。

ジルさんも、僕のことを真っ直ぐに見つめ返した。

「僕はね、君と一緒にダンジョンを探索してみてちょっと思ったことがある。

カウガ君。

君は自分の武器、何だと思ってる?」

「え……」

自分の武器。

そんなの……

「スキル、ですよね」

死ぬと卑怯なほど強力なアイテムが手に入るスキル。しかも第二のスキルが覚醒したことによって、痛みを伴うこともなくなった。
しかしもう蓄積されたオーバーヒールは残ってないから、死んでアイテムを得ることはできない。

僕は歯を食いしばった。そうしないと、涙を抑えられそうになかった。

「違うよ。君の武器は、スキルなんかじゃない。

僕は一緒に行動してはっきりと分かった。

君の武器は『レアドロッパー』でも、痛みを一切感じないという奇妙な第二のスキルでもない。

『考えることができる』ことだ。

落ち着いて今までのことを思いだしてごらん。

窮地に陥るたび、君は必ず、その最も大きな強みを活用して、状況を切り抜けてきたんじゃないか。

本当の意味で君を救ってきたのは、スキルの力でも、それによって得たチートアイテムでもない。

与えられた条件の最大活用法を思いつくことのできる君の思考力、機転の良さなんじゃないか?」

僕は思い出す。

超上級パーティー、『ゴダスの斧』に挑んだ時のこと。

一人で潜った姿見のダンジョンで、ドラゴンに扮していた第一階層の主の正体を見破ったこと。

そしてジルさんと組んで、ガーゴイルの群れを仕留めたこと。

『そうか、確かに僕は頭を使った。

でもそれは、追い詰められたから必死に策を模索しただけで……』

ジルさんは、僕から目をそらさない。

彼女の瞳に、臆病な自分の顔が映った。

「君が君自身のことを信じられないというのなら、僕のことはどうだい?
君は僕の言うことも、やっぱり信じることはできないかい?」

彼女の瞳に映る影が、首を振った。

「じゃあ、断言するよ。
君の本当の武器は、スキルなんかじゃない。
最悪の状況を、最高の結果へ導くことができる、君の状況判断能力、機転の良さだ」

僕は頷いた。

ジルさんが言うのなら、安易にそれを否定することはできなかった。

「よし。じゃあ、そんな君に質問だ。

僕たちは今、最悪な状況に置かれている。
大切な仲間を一番厄介な相手に渡してしまった。
安全だった隠れ家も、突き止められてしまった。
この状況を打破するために、何ができる?
どんな行動をとることが、最高の結果につながっている?」

必死で頭を働かせた。

ジルさんがここまで言ってくれている。

だったら僕は、自分の武器とやらに頼るしかない。

『治安局にこの身を渡しても、おそらく何の意味もない。ジルさんの言う通り、ただ僕が拘束されて終わりだ。運が良ければドースさんは解放されるかもしれないが、あの男のことだ、おそらく理由をつけて殺すだろう。

かといって、ドースさんを見捨てるという選択肢は最初から存在しない。

僕はドースさんに救われた。ドースさんが匿ってくれたからこそ、僕はこうして生き延びることができた。

そしてラコにも助けられた。ドースさんが戻ってこなければ、彼女はずっと悲しみ続けることになる。そんなことは絶対にさせない。ドースさんは必ず取り戻す。

だったら何ができる。

今僕たちがとるべき選択は何だ』

僕は目を開けた。

ドースさんが奪われた。

こっちにいるのは、ジルさん、ラコ、僕の三人。

ジルさんのスキル、ラコのできること、僕が活かすべきだという強み。

答えは一つしか思いつかなかった。

「普通にやってもできることなんてない。リスクを。危険を冒さなきゃだめなんだ……」

「どういうことだい?」

僕はジルさんの方を見た。

「ガーゴイルたちが隠していた、あの姿見の中に入りましょう。

『スキル同志へ』と彫られていた姿見です。

メッセージの通りなら、スキルを持った仲間を見つけられるかもしれない。

そこに賭けるしかありません」

「分かった。君が言うなら、それに賭けよう」




ラコに、ダンジョン最深部で見つけた姿見のことを話した。

その姿見の向こう側へ行けば、スキルを持った仲間を見つけられるかもしれないこと。その仲間に事情を話せば、協力してもらえるのかもしれないこと。

希望的観測なのかもしれない。でもこの手段以外に、ザン=ダールアンの元から正攻法でドースさんを取り戻す方法など、現状ではないとしか思えなかった。

「危険すぎる」と反対されるかと思ったが、ラコは黙って頷いた。彼女も状況が差し迫っていることを感じて、気持ちを固めたようだ。

僕は彼女の信頼に感謝し、必ず期待に応えようと決意を深めた。

「じゃあ、もう一度あのダンジョンに行くのね?」とラコが尋ねた。

僕は首を振った。

「いや。実は姿見に細工してきたんだ」

ジルさんが姿見を持って帰りたいと駄々をこねていたから、説得するために施した細工だったけど。こんなにもすぐに使うことになるとは思わなかった。

頭陀袋から取り出したのは、『転移する吸血鳥の羽根ペン』。

自分の血で記銘したものを呼び寄せることができるアイテムだ。

幾つかのアイテムに名前を書いたが、僕はそのうちの一つだけを思い浮かべ、呪文を唱える。

「来い、フィンチ」

目の前に現れたのはあの姿見だ。

「これが……」

ラコは、驚いた表情を見せる。

ジルさんが姿見に触れると、ガーゴイルのねぐらで見たときと同様に文字が浮かび上がる。

『真実を知りたいと望む、スキルを持った同志へ』

そして鏡部分は、どろどろと不穏な質感に変わった。

「本当にいいんですか。僕の判断だけで決めて」

「ああ。この鼻がそう言ってるよ、『君の判断に従え』ってね」

ジルさんは優れた嗅覚スキルを持つ鼻に触れ、ふふっ笑った。

「必ず戻ってきてね、カウガ」

ラコが言う。その目を見て、本当は「行かないで」「危険なことをしないで」と思っているのだと、はっきり伝わってきた。

でも今は、その気持ちに気が付かないふりをするしかない。

「必ず帰ってくるから」

「うん」

鬼が出るか、蛇が出るか。

鏡の中に、足を踏み入れた。
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