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『俺には三根純という前世がある』
そう言ってから2人が口を開くまで結構な時間があった。
どのくらいかというと、肩で息をしていた俺の息が整い、緊張が治まって冷静になって、固まったままの2人の目の前でおーい、もしもーしと手を振れるくらいの時間だ。
「…ハーピス?…須藤くーん?」
ふりふりと左手と右手でそれぞれハーピスと須藤君の眼前でそれを振れば、
がっしぃ!!
「ひっ!?」
突然右手を凄い力で握られた。
「……本当ですか?」
そう言って爛々と輝く瞳で俺を見たのは須藤君で、音がしそうなほどの力で俺の右手を握って、いや最早握り潰している。
「本当に、三根さん、なんですか?」
普段の彼からは想像もつかない力に俺は驚きつつ、なんとか一度手を放してもらおうと左手で彼の手を掴もうとした。
がしっ
けれど一瞬判断が遅かったようで、その左手はハーピスに掴まれてしまう。
「ねえ、あんた今俺って言ったよね?なに、中身男なの?」
ハーピスがそう言う間にギリギリと次第に掴んでいる手に力が入っていき、彼の爪が俺の手に食い込んでくる。
ギリギリギリ…って、ちょ、痛い痛い痛い!
「あの、2人とも手を放して…」
「三根さん、ああ、三根さーん!!!」
「ねぇ、どうなの?男なの?」
ぎゅぎゅぎゅーっ
ギリギリギリ…
俺の手を掴んで大声で泣き出す須藤君と、瞳孔開いてませんか?という目で問い詰めてくるハーピス。
やべぇこれ、どっちも振りほどけない…。
両手の痛みに耐えながら、俺は途方に暮れた。
1分後。
「っいい加減にしやがれー!!」
ダダンッ
「だっ!?」
「いっつ!?」
ついに堪え切れなくなった俺は2人の足を踏んだ。
足の甲を思いっきり踏まれた2人は痛みで掴んでいた手をようやく放した。
解放された手を見ると、右手は血が止まっていたせいで紫色に変色しており、左手にはいくつもの爪痕が赤く浮き出ていた。
「…一旦落ち着きましょうか」
「…そうですね」
「…うん、一回冷静になろ」
それぞれがそれぞれの痛みをやり過ごしまともに話ができるようになったところで、俺たちは元通りベッドと椅子と壁際に戻った。
そして口を開いたのは須藤君。
「改めて、貴女は本当に三根さんなんですか?」
信じられません…、と彼は項垂れ頭を振る。
それは自分以外の転生者がいることが信じられないというのと、ネージュが三根であることが信じられないのと、2つの意味での言葉だろう。
俺だってルイスが須藤君だって知った時そう思ったからよくわかる。
「本当だよ。第一この世界で三根純の名前を知っている人なんていないでしょ?」
俺が苦笑と共に告げれば「まあ、そうですよね」と頷く。
「まさか生みの親とは…。そりゃあ色々と知りすぎるほど知っているわけだ」
須藤君はそう言うと自分の中で折り合いがついたのか顔を上げるとじっと俺を見た。
「…三根さん」
「なに?」
顔を上げてこちらを凝視する須藤君が妙に真剣な顔をするので、俺はなんとなく背筋を正した。
その姿を改めて上から下まで見て、再度視線を俺の顔に戻すと、
「めっちゃ美少女になりましたね」
瞳を涙に濡らし鼻を啜りながらもグッと親指を立てて俺に見せた。
「そこかよ!?」
ついツッコんでしまった俺は悪くない。
そう言ってから2人が口を開くまで結構な時間があった。
どのくらいかというと、肩で息をしていた俺の息が整い、緊張が治まって冷静になって、固まったままの2人の目の前でおーい、もしもーしと手を振れるくらいの時間だ。
「…ハーピス?…須藤くーん?」
ふりふりと左手と右手でそれぞれハーピスと須藤君の眼前でそれを振れば、
がっしぃ!!
「ひっ!?」
突然右手を凄い力で握られた。
「……本当ですか?」
そう言って爛々と輝く瞳で俺を見たのは須藤君で、音がしそうなほどの力で俺の右手を握って、いや最早握り潰している。
「本当に、三根さん、なんですか?」
普段の彼からは想像もつかない力に俺は驚きつつ、なんとか一度手を放してもらおうと左手で彼の手を掴もうとした。
がしっ
けれど一瞬判断が遅かったようで、その左手はハーピスに掴まれてしまう。
「ねえ、あんた今俺って言ったよね?なに、中身男なの?」
ハーピスがそう言う間にギリギリと次第に掴んでいる手に力が入っていき、彼の爪が俺の手に食い込んでくる。
ギリギリギリ…って、ちょ、痛い痛い痛い!
「あの、2人とも手を放して…」
「三根さん、ああ、三根さーん!!!」
「ねぇ、どうなの?男なの?」
ぎゅぎゅぎゅーっ
ギリギリギリ…
俺の手を掴んで大声で泣き出す須藤君と、瞳孔開いてませんか?という目で問い詰めてくるハーピス。
やべぇこれ、どっちも振りほどけない…。
両手の痛みに耐えながら、俺は途方に暮れた。
1分後。
「っいい加減にしやがれー!!」
ダダンッ
「だっ!?」
「いっつ!?」
ついに堪え切れなくなった俺は2人の足を踏んだ。
足の甲を思いっきり踏まれた2人は痛みで掴んでいた手をようやく放した。
解放された手を見ると、右手は血が止まっていたせいで紫色に変色しており、左手にはいくつもの爪痕が赤く浮き出ていた。
「…一旦落ち着きましょうか」
「…そうですね」
「…うん、一回冷静になろ」
それぞれがそれぞれの痛みをやり過ごしまともに話ができるようになったところで、俺たちは元通りベッドと椅子と壁際に戻った。
そして口を開いたのは須藤君。
「改めて、貴女は本当に三根さんなんですか?」
信じられません…、と彼は項垂れ頭を振る。
それは自分以外の転生者がいることが信じられないというのと、ネージュが三根であることが信じられないのと、2つの意味での言葉だろう。
俺だってルイスが須藤君だって知った時そう思ったからよくわかる。
「本当だよ。第一この世界で三根純の名前を知っている人なんていないでしょ?」
俺が苦笑と共に告げれば「まあ、そうですよね」と頷く。
「まさか生みの親とは…。そりゃあ色々と知りすぎるほど知っているわけだ」
須藤君はそう言うと自分の中で折り合いがついたのか顔を上げるとじっと俺を見た。
「…三根さん」
「なに?」
顔を上げてこちらを凝視する須藤君が妙に真剣な顔をするので、俺はなんとなく背筋を正した。
その姿を改めて上から下まで見て、再度視線を俺の顔に戻すと、
「めっちゃ美少女になりましたね」
瞳を涙に濡らし鼻を啜りながらもグッと親指を立てて俺に見せた。
「そこかよ!?」
ついツッコんでしまった俺は悪くない。
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