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第 八章 領主就任と町の掃除。

第123話 公開裁判と綱紀粛正。

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    昼近くになるにつれて、町の中央広場に集まって来くる領民達で広場は溢れ始める。

    中には皆がなんで広場に集まっているのか分からずに来ている者も居たみたいだが。

    昼の一時少し前に、完全武装の騎士団員と衛兵五十名に囲まれて逮捕された四十一人が広場に引き連れられて入ってくる。衛兵が広場の真ん中に彼らを座らせると勝手に近づく者がいない様に群衆を警備させる。私は彼らの目の前で後ろに騎士団を控えさせる形で貴族服を着て立っていた。

    精霊魔法の〈ラウドスピーチ〉を使う。声を領民全てに聞こえるようにするため、屋敷を出る前に〈検索〉しておいた魔法だ。精霊魔法も後々の為に少し勉強しておかないとな。


    「さて、時間になったので始めるぞ。・・・ツールの町の皆さん、私の声が聞こえていると思う。魔法を使って、全員に声が届く様にしたので驚かないで聞いて欲しい。」

    私がスキル〈王威〉と『気』を声に込めて話始めると、急にざわめきが聞こえて騒いでいた者も次第に大人しくなった。

    「皆さん、まずは落ち着いて私の話を聞いて欲しい。私はこの度、国王ギルバート・カンザキ・フォン・ウェザリア陛下より伯爵位をたまわり、ここツールの町の領主に任じられた、ショウイチ・オオガミです。」

一旦言葉を切り、見回す。そして、再び話始める。

    「今回皆に集まってもらったのは、昨日逮捕した者達の公開裁判を行う為であす。本来であれば、私ではなく代官が裁判を行い適切に処理する所なのだが、その代官自身が立場を利用して国からの予算を横領着服し、王宮には嘘の報告をしていた。さらにこの町の幾つもの商会から賄賂を得て、彼らの犯罪を見逃す事をしていた。
あまつさえ闇ギルドと手を組み違法人身売買や殺人の依頼を行うなどの犯罪を行った事実によって逮捕され、すでに王宮に連行された。まあ、当然だが死刑になるでしょう。」

    「そこでまず、領民の皆には今まであのような罪人にこの町の統治を任せてきていた事を陛下、宰相閣下に代わって謝罪をさせて貰う。目の届かぬ事となり誠に申し訳なかった。」

    一旦言葉を切り。深く頭をさげた。その姿を見て、集まった群衆はザワついたが、私が頭を上げると再び静まった。

    「私が領主となったからには、あのような犯罪者を再び出さない事を誓う。
    そしてこの目の前にいる者達だが、その代官に賄賂を送り、海賊達と手を組み密貿易をし、王国で禁じられた品を密売し、当然だが払うべき税金を脱税して払わず私腹を肥やしていた者共だ。中には闇ギルドと繋がり違法人身売買や殺人の依頼までしてた者もいた。    
    この事は、代官や闇ギルドまた昨日、各商会から押収した証拠や盗賊のアジトにあった証拠などから、それぞれ明白な事実であることが確認されている。よってここにそれぞれの罪状を読み上げていく。

    まず、アイザック商会会長アイザック、その使用人のヘルツ、ハイゼンの以上三名は代官への贈賄、密貿易、密売、脱税、闇ギルドへの殺人依頼、以上の罪により三名とも死罪、店は取り潰し財産没収。家族は当座の生活費を渡して町からの追放とする。次、ハロルド商会の会頭ハロルドとその使用人のマイラー、ゲイツ・・・・以上四十一人をそれぞれの刑に処す。
また、追放となる者は五日以内にその身に持てるだけの金銭以外の荷物を持って町から出ていくように。町から出る際に一家族当たり金貨十枚を渡す。馬車や荷車の類いは使用を認めない。六日目になっても町に残っていた場合は、刑罰にしたがわなかったとして逮捕し犯罪奴隷に落とすこととなる。これは、言葉だけではないからな注意する事だ。
    あと、ついでにこの町の闇ギルドは潰した。闇ギルドの支部長は後程この者達と一緒に死刑にするよていだ。」

    「皆さん、この者達のようにはならないで下さい。この町は、真っ当に仕事をして、真っ当に生活している、真っ当な人が住む町なんです。罪人は身分の区別なく処罰します。勿論、衛兵や役人も区別なく取り締まりますので緊張感と使命感を持って職務を遂行すること。宜しいですね。
    では、以上で公開裁判を閉じます。集まったくれた皆さん。それぞれの生活に戻ってください。では、解散!!ぬ」

    「閣下。お疲れさまでした。」
「有難う、レナード。屋敷の裏にある練兵場に闇ギルドの支部長と、ここにいる者を集めて下さい。早速刑を執行します。」
「はっ、承知しました。」

(はあ、やらないわけにはいけないが、裁判なんて気持ちの良いものではないですねぇ。この辺も今後の改善点ですか。)

    裁判制度についても考えながら代官屋敷に向かった。
屋敷には、代官の元で行政を執り行っていた役人が集まっていた。私が仕事部屋に入ると全員起立して頭を下げていた。

    「みんな、各々おのおのの席についてくれ。」

全員が着席したのを確認してから話し出した。

「改めて、自己紹介をする。私は陛下よりツールの領主に任じられたショウイチ・オオガミ伯爵だ。宜しく頼む。裁判を見ていた者なら知っていると思うが、君達の上司だったアシリーアクダイクンは業務上背任、横領、収賄、殺人教唆、密貿易、密売、違法人身売買と好き放題していた訳だ。配下だった君達は気がつかなかったのかな?」

    一同の中で最も年長の男が進み出ていう。

「誠に申し訳ない事ですが、代官のアシリーは帳簿類を独占しておりました為、我々は実務の遂行のみに従事しておりました。正直、この状態になるまで気が付きませんでした。申し訳ありません。
確かに、一時噂がたった事はありましたが、その時も実際に証拠があった訳でもなく噂も立ち消えてしまい現在の有り様となりました。改めて一同を代表して申し訳有りませんでした。」
「君、名前と役職は?」
「はっ、行政部部長のアルトリンゲン・バイザーと申します。」
「では、代官の次に偉い人かな?」
「偉いと言う訳ではないのですが、職務上の第二責任者となります。」
「そうか、わかった。君だけでなく、皆にも言っておく。昨日までの事は一切問わない。だが、今後は代官のように法を犯した者は、地位職責に関わらず法のもと処断する。言っておくが、これはブラフではないよ。私がこの年齢としで伯爵になれたのは、この前のクロイセン帝国との戦いで敵をホンの二万人程殺してきたからだ。今更罪人を百や二百殺したととして、大した違いではない。この意味は分かってくれるよね?
以後は職務により一層の精励と誠実さをもって当たる事。皆さん、いいですね?!」
「「「承知しました。」」」

部屋にいる職員三十人程が一斉に青い顔をして、返事をした。

    「アルトリンゲン君は、王宮が代わりの執政官を決めるまで、私の権限で執政官代理として、日常業務を指揮して領民の生活が滞る事の無いようにして下さい。新しい執政官が来たら新しく始める事業について話します。最後に一つ質問ですが、皆さんの給金は王宮からですか?それとも代官個人からでしたか?アルトリンゲン君?」
「はっ、我々は代官によって現地採用された者なので、代官個人から給金は出ていたと思います。」
「成程、分かりました。では今後は、私が皆さんの給金を払います。アルトリンゲン君悪いが、皆の給金の額を纏めてからそれぞれがいくら貰っているのか報告書にして明日提出してください。宜しいか?」
「はっ、承知しました伯爵様。」

    職員の罪は問わず、生活の保証をすることで安心させる。
最低限の連絡をして、屋敷裏に急いだ。
 
 
 
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