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第二十章 帝国の覇権の行方。

第402話 次の目標(ターゲット)は・・・。

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 色々と忙しい二週間が過ぎ、いよいよ明日に帝国を取り戻す為に公爵の軍勢が出陣する。この間に我々も情報収集をしたり、公爵から頼まれて模擬試合をやったりして、我々も公爵の軍勢の中の一部隊として出陣することになった。


 まず部隊が目的地とするのはグラード軍のいた根拠地のグラード地方だ。ここは中心の地方都市のグラードを始め、幾つかの中小都市がある帝国の中南部一帯に広がる大きな地域である。今この地は混乱しているそうだ。

 反乱組織の内部で主導権の争いが起きているらしい。それまで軍を率いていたラインバッハ・フォン・グラードと言う絶対者がケルンに向かって行軍している最中に、落雷にあって急死した為だ。その後継者争いが起こったのだ。彼はそれまでは、ワンマンで軍を率いていたようだ。

 実際に現代の日本の企業でも偶にたまに聞く話だが、先代の創業者のワンマン社長が急死した為に、その業績優秀な企業の後継を誰が継ぐかでバタついてしまい、その企業自体が以前程の信用を失うという事がある。また後継の二代目が社長に就任した途端に企業の業績が落ちて企業自体傾き倒産、または身売りして終わると言った話もある。

 彼等も、今現在同じ目にあっているらしいね。そこで我々が、現地に乗り込んで反皇帝派の残党を味方に取り込み、自軍の拡大に繋げる段取りだ。全部とは行かなくても、これに成功すれば大幅に自軍の勢力を拡大出来ることとなる。
ここは公爵の力量に期待大だな。まあ、この位の事が出来無いのなら元々皇帝になど成れる器量では無いのだろう。頑張ってもらいたい所だね。



 グラード地域を制した次に向かうのは、残り二つの叛乱勢力の各本拠地だ。一つは、反乱の発祥の地とも言えるバイデン伯爵領を中心としたバイデン軍だ。
この地はたしか地元の民達が領主を打倒して、その後は領主に変わって反政府組織側の行政官が街の政治を取り仕切っているらしい。元々貧しい土地柄で、その為に民衆が立ち上がった場所だ。反乱した兵数は三つの中で一番少なく一万五千程だが、ここを味方にするには数よりも民衆に対しての政治的アナウンスが効果が大きく、また味方にするには難儀な場所だと言えるだろう。だが、ここを味方に出来れば帝国中の民衆を味方にしやすくなる。ぜひ成功して欲しい場所だ。


 もう一つは、一番帝都に近く反乱した兵士の人数も多いリーズ地方の反乱だ。その数ニ万五千だが、率いるのは領主貴族家の元騎士団の団長らしい。ここは元リーズ侯爵の治めた土地で、ここも他と変わらず侯爵が推し進める政策に庶民が反発をして、しかも侯爵配下の騎士団もその反乱に助力して結果クーデターを起こした様だ。侯爵一家は帝都に逃げ込み、ここはクーデターとはいえ、戦力としては三つの内で最大で最も練度が高い集団であり、ここも是非に味方に加えたい所だ。


 詳しい情報はまだこれからだが、今の所こんな情報だ。
後は皇帝派の立て籠もる帝都周辺と帝都から東方面に領地がある貴族領地だ。その中にはクロームガルド公爵の領地も含まれている。この辺とか、どの様に対処するのか、公爵に聞かないといけないだろう。



 「総員!隊列を整えて、まずはグラードを目指して出発!」
「出発っー!」
「出発だーっ!」

 公爵の掛け声により、味方の軍勢が東に向かって動き出した。
我々は軍勢の先頭グループの中程で、馬に乗り騎士団の総員百五十人で隊列を組んで並んでいた。
敵が仕掛てきたときに、対応出来る様にする為だ。まだ、急な対応には味方の動きが取れない可能性が高い為、我々がこの位置となったのだ。
  
 グラード地方までおよそ五日の行程だ。目的地に到着する迄に幾つかの都市を経由していくが、どの地も帝国政府の為に全て疲弊している。こうした地方都市の扱いは、公爵としてはどの様にするのか、または目的地に到着する事を優先するのか。何れにしても帝国内の事なので、思う事はあっても口は出さないでおくとしよう。

 そんな事を考えながら、馬上に揺られていた時、先行していた偵察の騎兵が報告の為に近寄ってきた。

「閣下。この先の町のグリニーエにグラード軍の残党が残っております。その数二千余りです。如何しましょうか?」
「なに?間違いなくグラード軍の残党達か?」
「はっ!どうやらこの地にて、ケルンからの我々の軍勢を待っていたらしく、実際我々が近寄ると向こうの方から接近してきて、身分とコチラに合流したい旨を伝えてきました。如何いたしましょうか?」
「その事を公爵へは報告したのかい?」
「いえ、これからですが・・・。」
「すぐに報告してこい。公爵がどの様に対応したかを改めて私へ報告してくれるか?」
「畏まりました。公爵へこの件を報告して参ります。」

早速、この情報を公爵へ報告しに公爵のいる中軍に向かって行った。
十分程すると、先程の物見が帰ってきて改めて報告した。

「閣下。公爵はグラード軍の残党と、お会いなさるとの判断でした。」
「分かった。その者達を吸収する積りの様だね。今後も敵対団以外は、その積りで対処する事にしよう。ご苦労だったね。」
「はっ!失礼します。」

 早速、グラード軍の一部が我が軍に合流したな。この後もこんな調子で行けば、苦労が無くて助かるのだがね。
グラードへ近づく程に、この手の軍勢が増えて行くだろうと予想される。如何に効率よく、この手のグループを吸収して行くのかが、公爵の腕の見せ所だろう。

 この後グラードに近づく程に、同じ様な分裂した軍勢を拾い上げて吸収していつた。

 結局我々がグラードについた頃には、グラード軍の八割方を吸収していた。やはり中には公爵を信じられないと言って断って来る者もいたが、結局軍勢は倍増して三万にまで膨れ上がった。

しかしここで大きな問題が持ち上がった。皆、参加するのは良いが、誰も食料を持って来ないので、公爵も食料について愚痴を言っていたな。
そこで一旦ケルンから食料を送っ貰い、帰りの途中で合流して貰うことにした。
軍が大きくなっても、頭の痛いことだね。



















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