潔癖症な村人A

べす

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2、森での俺

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暮らし始めてみると俺は自分でも驚く程すぐに森での生活に馴染み、村で暮らしていた時よりも何故か身体が軽く調子がいい。

その調子の良さで更なる住みやすさを目指し色々挑戦してみると、何故かやること成すこと次から次へと上手く行った。

狩猟小屋の周りに小さな畑を作ればあっという間に野菜が実り、狩猟小屋に放置されていた弓で狩りをすれば今まで槍で苦労して狩っていたのが何だったのかと思うほど簡単に獲物が仕留められる。

そうしてすっかり森の民と化した俺だったが、久々に村へと帰ると弟からとんでもない事を告げられた。

「にいちゃん、十年も帰って来ないとか、どれだけ森に引きこもってるのさ!?俺の結婚式に招待したくても何故か森に入ると霧が掛かって全然狩猟小屋までたどり着けないし…結局にいちゃん無しで式を挙げたんだからね!?」

弟に言われて始めて気付いた事実に愕然とする。
確かに俺が森に住み始めてから誰とも森ですれ違わなかった。
それに森で暮らして十年も経った感覚は俺には無い。
せいぜい半年程度の気がする。

しかしよく見れば弟はしっかりと十年分の歳を取っていて、それに比べて俺は昔のまま、全く何も変わっていなかった。

その事実に背筋に冷たいものが伝い、俺は頭が真っ白になる。

どうやら俺は人間では無くなってしまったらしい。
よく考えれば、おかしい事だらけじゃないか。
三日で収穫出来る畑なんて普通じゃないし、狩りだって俺は獲物が止まって見えている。
いくら身体が軽いからって木から木へ飛び移れる身体能力なんて、人間から見れば異常でしかないだろう。

俺はこの日を境に、村人どころか家族との交流も絶ってしまった。

だって、怖かったんだ。
自分だけが老いない事実に。
一人取り残され、親しい家族を見送らなければならないかもしれない孤独に。

そして、森に閉じこもってどれ位経ったのか分からなくなってしまった頃。
今まで誰一人訪ねて来る事の無かった小屋に、一人の少年がやってきた。

「あっはは!こんなすっごい魔素濃いとこに小屋があるー!しかも畑?まさか、誰か暮らしてるとか?なんて、あるわけ無いよね~。」

「…誰?」

でかい声で独り言を放つフードを被ったローブ姿の少年に、小屋の扉を開けて声を掛ける。
少年はまさか本当に誰か居るとは思っていなかったのか俺の姿を見て口を開け呆然とするも、すぐにフードを外して近付いて来た。

「うっっわ!エルフじゃん!本当に実在したんだ!?綺麗な顔してるなぁ…、ねぇ、君女の子?てゆーか女の子でしょ?むしろ女の子じゃなきゃ困る!」

そう言ってキラキラと目を輝かせる少年こそ綺麗な容姿をしていて、肩で切り揃えられた銀髪を揺して質問してくる。

「残念ながら男だよ。用が無いなら帰ってくれる?俺、人と話したくないんだ。」

俺が扉を締めようとすると少年は慌てて足を扉に挟み、小屋の中に身を乗り出した。

「ちょ、ちょっと待ってよ!ごめんって!女の子じゃなくても問題ないから!ねぇ、僕エルフと会うの初めてなんだよ!話してみたいんだ、中に入れてくれない?」

入れてくれない?ってもう半分入ってるじゃん…と思いながら自分より少し低い位置にある少年の顔をじっと見下ろし、引く気が無いのを感じて仕方無く小屋の中に招く。

少年は嬉しそうに小屋に入ると、こちらが何も言わずとも勝手に椅子に座り
「お茶で良いよ!ジュースは嫌いなんだ!」
と図々しく飲み物まで要求してきた。

「…お前さ、図々しいって言われない?」

「言われるね!でも他人から何言われても気にしないからどうでも良いかな!」

そう言って庭で摘んだハーブを使ったハーブティーを出すと、
「うげぇ、変な味!」
と少年は顔をしかめる。

それを無表情で見つめていると、少年は好奇心いっぱいの顔でキョロキョロと家の中を観察し始めた。

「ねぇ、他に仲間は居るの?」

「居ないよ、俺だけ。」

「両親や兄弟は?」

「両親と弟は居たけど、ずっと会って無いし、もう亡くなってるかもね。俺だけ人間じゃないから。」

「んん?どういう事?」

そこで少年に今までの事を話して聞かせると、しばらく考え込んでから口を開く。

「ふーん。君、たぶん拾い子だね。じゃなきゃおかしい。人間からエルフが産まれるなんて有り得ないし。それに、その木の実ってたぶんエルフの実の事だよ。伝承でしか知らないから詳しくは分からないけど、エルフってすんごい綺麗好きなんだって。で、そのエルフの実っていうのはエルフが好んで使ってた石鹸の代わりみたいな物らしいよ。あ、石鹸って身体や髪を綺麗にするものね。たぶん、森から離れたせいで危険を回避する為に身体が人間として擬態していたのが、エルフの実を使う事で段々本来の姿に戻ったんじゃないかなぁ?エルフの実は森から持ち出せないし、村人に見えなかったのはたぶん村人に魔力が無かったからだと思う。」

今まで何も分からなかった事が少年によって語られ、俺は思わずポカンと間抜けな顔をしてしまった。
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