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3、外には出れない俺
しおりを挟む言われてみれば俺は両親とも弟とも似ていなかったし、エルフの実が俺にしか見えなかったのもそれなら納得出来る。
「あれ、でもここに来る途中村なんて無かったけどなぁ。そういえば五十年位前にこの辺で大規模な土砂崩れがあったみたいだから、それで流されちゃったのかなぁ?君どれだけ引きこもってたの?逃げてどっかに移り住んでればいいけど…」
土砂崩れ…。
じゃあ村はもうとっくに…。
少年の言葉に思わずぽろっと涙を零すと、少年はぎょっとして立ち上がり袖で俺の頬を拭った。
「ちょっ、やだな!泣かないでよ!大体君が引きこもってたのが悪いんでしょ…ってあーっ嘘嘘!ごめんって!」
次から次へと涙を零していると少年は慌てたようにぎゅうっと俺の頭を抱き締め、背中を撫でてくれる。
「もう…僕より年上のくせにメソメソするなよ。それに、一人なのは君だけじゃないんだからね!僕だって魔力が高いせいで両親に魔塔に売られて、一人なんだから!あーあ、僕って凄い可哀想!ほらっ君より可哀想な僕が泣いてないんだから、君ももう泣かないの!」
「…。」
抱き締められながら少年が騒いでいたが、俺は違うことで頭がいっぱいだった。
こいつ、すんごい良い香りがする…。
今まで顔をしかめる様な臭いの相手にしか出会った事のない俺には少年の香りは動けなくなる程良い匂いで、思わずすんすんと鼻を鳴らす。
そんな俺に気付き、
「ちょっと、なにしてんの?」
と怪訝そうな声を出す少年に、俺は少しだけ顔を離し少年に抱かれたまま上目遣いで目線だけ上げた。
「こんな良い匂いの人間初めてだから、匂い嗅いでただけ。」
「はぁ!?」
少年は嫌そうな顔で俺を引き剥がそうとするも、今度は俺が少年を抱き締め離さない。
そのまま懲りずにすんすんとしているうちに少年は諦めたのか、大きな溜め息を吐いて頭を撫でてきた。
「…何、君匂いフェチなの?」
「臭いって言われるよりいいだろ?」
「そりゃそうだけど…。男にいい匂いって言われても嬉しくないよ。」
それでも少年は俺が離れるまで動かず俺は思う存分少年の香りを堪能すると、先程までの涙は何だったのかと言うほどの笑みで顔を離した。
「いやーお前本当に良い匂いだな。今まで酷い臭いの人間としか接してこなかったから感動した。」
「そりゃどうも…。良い匂いってただの石鹸の匂いだから。あと僕お前って言われるの好きじゃないから、ネイドって呼んでよ。」
「ネイド?じゃあ俺はアレムでいい。」
それからネイドに、
「匂い嗅がせてやったんだから、僕にもエルフの事色々調べさせてよ。」
と言われ、好き放題嗅がせてもらった手前断れず渋々了承する。
するとその日からネイドは度々小屋に訪ねてくる様になり、俺達は次第に仲良くなっていった。
「ねぇ、アレム。たまには僕の所にも遊びにおいでよ。面白い物もいっぱいあるし、珍しい料理が沢山あるから食べさせてあげたいんだ。」
いつもの様に遊びに来ていたネイドに誘われ、俺もたまには遠出するのも良いかもしれないと二つ返事で応じる。
エルフの実は持って行けないのでどうしようかと思ったが、ネイドに身体は石鹸で洗えばいいと教えてもらい、初めて村以外の場所へと向かう為森を出た。
ところが森を出て三日目、ようやくネイドの住む街にたどり着きいざ門をくぐった所で俺は突然その場で倒れる。
慌てたネイドに魔塔に運ばれたがますます身体が重く動けなくなり、もしかして森を離れたせいかもしれないと考えたネイドによってすぐに馬車で森へと帰る羽目になってしまった。
「うーん、どうもアレムの身体は魔素が少ない場所で生活するには負担が大きいみたいだね。それに、肌に出来たこの染み…これはエルフの実じゃないと落ちないみたいだ。」
つまり、俺は森でしか生活出来ない上に、森から出ると肌に染みが出来る病気に掛かると。
しかも、それはエルフの実で無いと治せない。
と言うことは、俺は一生森から出られないって事じゃないか…!
俺がガッカリしていると、ネイドが俺を慰めるように背中を叩く。
「ま、仕方ないよ。僕もエルフについて調べてみるから。アレムが外に出られないなら僕がこうして会いにくればいいしね!こんな可愛い僕がこれからもこうして通ってあげるんだから、そんな顔しないでよ。」
そうしてネイドはその言葉通り、変わらず森に通い続けてくれた。
ただ俺とネイドの流れる時間は同じではないようで、見た目の全く変わらない俺と違い、ネイドはどんどん成長して行く。
気が付けば俺より少しだけ身長が大きくなり、ネイドの見た目は完全に俺より年上となっていた。
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