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5、もう寂しくない俺
しおりを挟む処刑…?
ネイドが…どうして…。
無意識に震える手で投げつけられた紙の束を拾うと、そこに書いてある内容を読んで愕然とその場にへたり込む。
“エルフの心臓は生きたまま抉り取れば死者をも蘇らせると言われる万病の薬と言われており、その血を飲むだけでも若返りの効果があると言う。”
“今やエルフの存在自体伝説と化していたが、それをある魔導師が発見し、密かに匿い自分だけ血を啜って若さを保っていた。
それを知った王妃はすぐにエルフを差し出せと命じたが、強欲な魔導師はいくら命令されても首を縦に振らなかった。”
“怒った王妃は魔導師を拷問に掛けたが魔導師は手足を切り落とされても口を割らず、最後には王妃の命令に背いたとして街の広場で首を落とされ処刑された。”
「師匠はお前を大事に想ってたけど、王妃は若さに固執していたから、きっとお前を差し出したとしても殺しはしなかった筈だ。でも、師匠は王妃の命令に頷かなかった。こうして、お前を見つけても、師匠はもう戻って来ない。お前の…お前のせいで…」
少年が俺に向かって叫んでいるが、俺はそれよりも紙の束にあった一番最初の一文しか頭になかった。
エルフの心臓は生きたまま抉り取れば、死者をも蘇らせる。
それなら、俺が迷う事など無い。
「お前、ネイドの弟子なんだろ?それならこれをネイドに使ってやってくれよ。俺はもうネイドに何もしてあげられないから。」
そう言って近くにあったナイフで胸を裂くと、無理矢理手を突っ込み自分の心臓を抉り出す。
それを少年に差し出すと、少年はそれを受け取る事無く呆然としたまま俺が倒れるのを見つめていた。
ごめんな、ネイド。
ネイドが俺をそんなに想ってくれていたなんて、全然分かってなかった。
痛い思いさせてごめん。
恐い思いさせてごめん。
でも、俺の心臓をあげるから、ネイドはきっと助かるよ。
俺もネイドが大事だって、ネイドに伝わって。
「ネ、イド……」
『ばか!』
一瞬泣きそうな声のネイドに抱き締められた気がしたけど、俺はそのまま暗闇に落ちていくように意識を失った。
それから少年は俺の心臓を持って帰ったけど、それがネイドに使われる事は無かった。
ネイドの処刑はもう五年も前の出来事で、遺体はとっくに朽ちてしまっていたから。
それでも少年は俺の心臓を身体と一緒にネイドの墓に入れてくれた。
そもそもネイドの遺体は罪人として処分されてしまって墓には入ってなかったけど、俺はネイドと少しでも近くに居られて嬉しかった。
あぁ、エルフって本当に厄介だ。
死んでもこうして意識だけが残っちゃうなんて。
でもおかけでこうしてネイドの墓に入れて貰う所も見れたからいいか。
今度は俺が会いに行こう。
ネイドだったらきっと生まれ変わってもすぐに分かるよ。
そしたら今度こそ、側にいるから。
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