21 / 43
20.アレス、のろける
しおりを挟む
オルフェときちんと話をしてから数週間、充実した日々を過ごしている。
と言っても、昼間は仕事があるから、いつも一緒にいるというわけにはいかないが、夜は必ず側にいた。
オルフェの体のことを考えれば、毎日セックスするのは良くないだろう。そう思って、今日こそは、と毎日止めようとするが、オルフェが誘ってくるからなし崩しになってしまう。
「そのにやけた顔、どうにかしてくれないかな。全く」
花嫁たちが来て約一か月半。健康状態が気になるから、とやってきたミレイアが大きなため息をつく。
「ここ最近、ずっとこんな調子だよ」
隣にいたディアンも同じくため息をついた。
この三人は、幼馴染である。同じ時期に生まれ、育った。
「花嫁たちが来て、変わったね。みなと食事をとるのも続けているんだろう?一人での食事は味気ないからね。とても良いと思うよ」
それだ。アレスはまさに今、それについて考えていた。
毎日二人、昼食と夕食。一緒に花嫁たちと食事をすることになっている。一か月以上経ち、花嫁たちを一周したが、ディアンの提案でまだそれが続いている。
「ディアン。そろそろ食事を候補たちとするのはやめないか」
え?とディアンが目を丸くする。
「なぜ?上手くいっているじゃない。この分でいけば、今回こそ君に花嫁が来るんじゃないかって思ったのに。嫌だったの?」
そうではない。
これを言うのは恥ずかしいが、仕方ない。
「オルフェが、一人で食事をするのは味気ないと。私と一緒に食事をしたいと、言ってきた」
「おー、彼も言うねぇ」
ヒュウとミレイアが口笛を吹く。
「だから他の候補との食事はやめて、オルフェとだけにするって言うの?」
しかしディアンの表情はすぐれない。
「だめだよ。不公平だ。それでなくてもオルフェはアレスの隣室にいるんだ。これ以上の特別扱いは許せない」
「なぜダメなんだい?どうせアレスは、候補の中から一人選ばなくてはいけない。まぁこの国の神なんだし、何人選んでもいいけどさ。さすがに私もそれは誠実ではないと思うしね。であれば、遅かれ早かれ、誰かを特別扱いする必要があるだろう?」
「オルフェは、ダメだ」
いつもであれば、適当に笑ってにごすディアンが、珍しく無表情でそう答える。
なぜ、とアレスが聞く前に、ミレイアが噛みつく。
「君がそこまで拒否する理由が、私には理解できないよ」
「理由はいくつかある。まず、彼は男だ。最初にアレスも言っていただろう?神殿側は、君が男好きかもしれないという可能性に賭けたのではないかってこと。君が男好きだなんて不名誉なこと、言われたくない。それに、オルフェは義務でここにいるだけだ。そうだろう?彼だって別に、男が好きなわけじゃない。君が他の相手とセックスして他の人を傷つけないために、君と関係を続けている。そうだろう、ミレイア。君も彼がそう言ったのは、聞いていたはずだ」
どういう意味だ。
オルフェは義務感から、セックスしている?
思わずミレイアを見ると、彼女は目を反らした。
「そりゃあ、最初はそうだったのかもしれないけれどさ!今の君たちの関係は違うだろう?義務感だけなら、一緒に食事をとりたいなんて言わないはずさ」
「本当にそうかな。オルフェは、君が他の女性に目を向けないように、わざとそうしているのかもしれない」
「オルフェに、そんな腹芸ができるとは思わない」
思わずアレスがそう言うと、ディアンが眉をしかめた。
「じゃあなぜオルフェは君とセックスして、一緒にいるの。言わせてもらうよ。殴られてケガして、失神までして。そんな相手にどうして好意を持てるの?恐怖や、他の人をかばっているからと考えた方が自然だ」
その言葉に、ミレイアも黙る。
そうではない。アレスもそう言いたいが、ディアンの言っていることが最もすぎて、何も返すことができない。
「君も君だよ、アレス。私には君が、初めてのセックスに熱を上げているようにしか思えない。きちんと女性とも経験すればいい。オルフェにこだわる理由は何もないんだから」
オルフェにこだわる理由。
それはなんなのか。
オルフェは他の相手とは違う。
他の人間とは違って、いつだってアレスと対等でいようとする。それだけでない。アレスにとってオルフェは、神同士とも違って、虚勢を張る必要はない相手。
近くにいると安心する。
もっと一緒にいたくなる。
泣けば不安になるし、笑顔を見ると安心する。
ずっと触れていたい。
けれど上手く気持ちを伝えられず、いつだってもどかしい思いをしてしまう。アレスもオルフェも気が長い方ではないから、すぐに喧嘩になってしまうことも多いのだが。
それが何なのか、鈍いアレスとて知らないわけではない。
アレスはオルフェに、恋をしている。
だからこそ、オルフェがなぜ自分が側にいることを許し、セックスをするのか、アレスは知りたかった。
出会いは最悪だ。オルフェに同じ気持ちを返してほしいとは言えない。
けれど。
「確かめてみる」
オルフェに、なぜ花嫁候補としてここに来たのか、聞かなくてはいけないと感じた。
と言っても、昼間は仕事があるから、いつも一緒にいるというわけにはいかないが、夜は必ず側にいた。
オルフェの体のことを考えれば、毎日セックスするのは良くないだろう。そう思って、今日こそは、と毎日止めようとするが、オルフェが誘ってくるからなし崩しになってしまう。
「そのにやけた顔、どうにかしてくれないかな。全く」
花嫁たちが来て約一か月半。健康状態が気になるから、とやってきたミレイアが大きなため息をつく。
「ここ最近、ずっとこんな調子だよ」
隣にいたディアンも同じくため息をついた。
この三人は、幼馴染である。同じ時期に生まれ、育った。
「花嫁たちが来て、変わったね。みなと食事をとるのも続けているんだろう?一人での食事は味気ないからね。とても良いと思うよ」
それだ。アレスはまさに今、それについて考えていた。
毎日二人、昼食と夕食。一緒に花嫁たちと食事をすることになっている。一か月以上経ち、花嫁たちを一周したが、ディアンの提案でまだそれが続いている。
「ディアン。そろそろ食事を候補たちとするのはやめないか」
え?とディアンが目を丸くする。
「なぜ?上手くいっているじゃない。この分でいけば、今回こそ君に花嫁が来るんじゃないかって思ったのに。嫌だったの?」
そうではない。
これを言うのは恥ずかしいが、仕方ない。
「オルフェが、一人で食事をするのは味気ないと。私と一緒に食事をしたいと、言ってきた」
「おー、彼も言うねぇ」
ヒュウとミレイアが口笛を吹く。
「だから他の候補との食事はやめて、オルフェとだけにするって言うの?」
しかしディアンの表情はすぐれない。
「だめだよ。不公平だ。それでなくてもオルフェはアレスの隣室にいるんだ。これ以上の特別扱いは許せない」
「なぜダメなんだい?どうせアレスは、候補の中から一人選ばなくてはいけない。まぁこの国の神なんだし、何人選んでもいいけどさ。さすがに私もそれは誠実ではないと思うしね。であれば、遅かれ早かれ、誰かを特別扱いする必要があるだろう?」
「オルフェは、ダメだ」
いつもであれば、適当に笑ってにごすディアンが、珍しく無表情でそう答える。
なぜ、とアレスが聞く前に、ミレイアが噛みつく。
「君がそこまで拒否する理由が、私には理解できないよ」
「理由はいくつかある。まず、彼は男だ。最初にアレスも言っていただろう?神殿側は、君が男好きかもしれないという可能性に賭けたのではないかってこと。君が男好きだなんて不名誉なこと、言われたくない。それに、オルフェは義務でここにいるだけだ。そうだろう?彼だって別に、男が好きなわけじゃない。君が他の相手とセックスして他の人を傷つけないために、君と関係を続けている。そうだろう、ミレイア。君も彼がそう言ったのは、聞いていたはずだ」
どういう意味だ。
オルフェは義務感から、セックスしている?
思わずミレイアを見ると、彼女は目を反らした。
「そりゃあ、最初はそうだったのかもしれないけれどさ!今の君たちの関係は違うだろう?義務感だけなら、一緒に食事をとりたいなんて言わないはずさ」
「本当にそうかな。オルフェは、君が他の女性に目を向けないように、わざとそうしているのかもしれない」
「オルフェに、そんな腹芸ができるとは思わない」
思わずアレスがそう言うと、ディアンが眉をしかめた。
「じゃあなぜオルフェは君とセックスして、一緒にいるの。言わせてもらうよ。殴られてケガして、失神までして。そんな相手にどうして好意を持てるの?恐怖や、他の人をかばっているからと考えた方が自然だ」
その言葉に、ミレイアも黙る。
そうではない。アレスもそう言いたいが、ディアンの言っていることが最もすぎて、何も返すことができない。
「君も君だよ、アレス。私には君が、初めてのセックスに熱を上げているようにしか思えない。きちんと女性とも経験すればいい。オルフェにこだわる理由は何もないんだから」
オルフェにこだわる理由。
それはなんなのか。
オルフェは他の相手とは違う。
他の人間とは違って、いつだってアレスと対等でいようとする。それだけでない。アレスにとってオルフェは、神同士とも違って、虚勢を張る必要はない相手。
近くにいると安心する。
もっと一緒にいたくなる。
泣けば不安になるし、笑顔を見ると安心する。
ずっと触れていたい。
けれど上手く気持ちを伝えられず、いつだってもどかしい思いをしてしまう。アレスもオルフェも気が長い方ではないから、すぐに喧嘩になってしまうことも多いのだが。
それが何なのか、鈍いアレスとて知らないわけではない。
アレスはオルフェに、恋をしている。
だからこそ、オルフェがなぜ自分が側にいることを許し、セックスをするのか、アレスは知りたかった。
出会いは最悪だ。オルフェに同じ気持ちを返してほしいとは言えない。
けれど。
「確かめてみる」
オルフェに、なぜ花嫁候補としてここに来たのか、聞かなくてはいけないと感じた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
57
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる