2つの世界の架け橋

明人

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良い旦那

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「嫁の貰い手なかったら貰ってやるから!」
真っ赤な顔で言われリラは思わず目を見開き、誰よりシリアンが一番驚き目を飛び出していた。
「カーリラ殿…うちの可愛い息子を婿にもらうなら相応の覚悟をされてくださいね…」
表情は平然としていたが、腰の剣を握っている腕を押さえる手が震えていた。
「シリアンさん!感情が出すぎて剣が凄いカチャカチャ言ってます!!」
シリアンが怖いのと子供ながらに勇気ある告白をしてくれたブルーノにふざけた返事は出来ないと少し考える。あまり深く考えていないとしてもブルーノはリラを嫁にしてもいいと思うほど好いてくれたのだから。
「そうね。私がもうお嫁にいけないかなってブルーノが思った時、まだ私のことが好きだったらお願い。そうねあと10年は色んな人と仲良くして沢山色んなことを知ってね。ブルーノ、ノーウィル」
リラの言葉にブルーノは強く頷き、ノーウィルもうん!と元気よく返事をした。リラは笑って手を振り再び歩き出した。
リラを見送った後、ブルーノはシリアンを見上げて問いかける。
「師匠!良い旦那ってどんな感じ?」
真剣な目で問いかけてくる息子に下手な答えは出来ないと、視線を合わせて答えた。
「まず、大切な人を守れるぐらい強くなること。相手の気持ちを大切にし、相手の気持ちを察して優しくしてあげれる心をもつこと。そして…ちゃんと相手のことを支えてあげられる存在であることが大事だよ。きっとまだ難しいこともあると思うから、さっき彼女が言ったように沢山学ぶことが大事なんだ」
「分かった!」
「ウィルも頑張る!」
元気のいい返事にシリアンは少しだけ眉を下げ、二人を抱きしめる。
「師匠?」
どうしたの?という調子のブルーノにシリアンは小さな声で応えた。
「いつか来るであろうことなのに想像するだけで寂しくなるものだ…」
大人になれば二人は自分の手を離し、一人で生きていけるようになる。それは喜ばしいことであるのだが、寂しくも思う。
「大丈夫だよ!ウィルもルーもいるよ!師匠!」
心配そうに見上げてくる二人にシリアンは優しく笑う。
「そうだね。今は二人がいるから寂しくないよ」
その答えを聞いてホッとしたように笑う二人を尚更愛しく感じたシリアンだった。
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