2つの世界の架け橋

明人

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花を舞わせる

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シラビシはリヴェアの様子を見に行き、シリーは仕事だからということでリラは厨房の掃除をすることになった。
厨房はほとんど使われている様子はなく綺麗なものだが、使われてなさすぎて端の方には少しホコリが見えたため気になっての掃除だ。
ついでに痛んでいるような食材も処分するため、木箱に詰めていく。本当に色んな食材はあるが、食事という習慣がないせいであまり使われないようだ。干からびた野菜がいくつか見つかった。
食べる必要がないのに生きられるなんて不思議…
何故生きられるのかも今度誰かに聞いてみようとリラは思いつつ掃除をしていると、厨房に入る扉が開く。シラビシかと思い顔を上げるといつぞや廊下でぶつかった銀髪の青年が立っていた。
相変わらず綺麗な人で(魔族だが)また見とれてしまった。
だが、黙って見ているのも失礼だと言葉を探す。
「あ…えっと、この間はノーウィルとブルーノの居場所を教えていただきありがとうございました。名前も名乗らずすみません。先日からここでお世話になっているカーリラと申します。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて見せるが、青年はああと短い返事のみをし厨房へと入ってくる。そして、卵を手にとり眺めていた。
「何か…作られるんですか?」
伺うように問いかければいやと答えられる。
「そんな知識はない…が。先ほど人間の料理で騒いでいたのが気になった」
なるほどとカーリラは手を叩く。
「私が作ったんです。良かったらまた作るので食べますか?」
「俺が食べていいのか?」
「?良いと思いますよ。逆に早く食べてしまわないと食材が痛んでしまいますし」
「そうか…」
ちょっと待っててくださいとリラは青年に椅子に座って待ってもらい、自身はオムライスを作り始める。最後の卵は失敗して硬くなりすぎてしまった。
「すみません…。さっき成功したから今回はちょっと失敗して…卵が硬くなっちゃいましたけど美味しいとは思うので」
コトッと皿を青年の前に差し出し、スプーンを用意する。リラが洗い物をしている間に青年はオムライスをすくって口に運んだ。それと同時に驚き、周りに花を舞わせるような感覚に陥った。
「お口に合いますか?」
リラが振り返るのと同時に花は消し、青年は頷く。
「ああ。美味い」
「良かったです!」
ニコリと笑うリラを見て、青年はまた少し衝撃を受けた。そして、自分の前にあるオムライスに視線を向け、皿を持って立ち上がるとリラの傍に向かった。
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