2つの世界の架け橋

明人

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尊き犠牲の間

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リラは余ったクッキーを袋に詰め、人を探していた。
『美味かった。また作れ』
あの言葉が頭に残っていた。
甘い物嫌いじゃないかな…
そういえば名前も知らないことに気付いた。出会えたらいいなぐらいで探そうと考える。
出会えたらいいなで随分色んなところを歩き回り、結局見つからなかった。
「というか…ここ何処だろう…」
城の奥の方まで来てしまった。ふと部屋の中から水音が聞こえた。
中?
変だと思い水音を頼りに入っていけばその部屋は水路があり、花が咲き乱れている部屋だった。
その壁に肖像画がかけられており、気になるのは
「全員水属性だ…」
髪も瞳も青系統の者達だけがそこに居た。鳥人族の者が2人。顔がよく似ている親類だろうか。鳥人族以外の種の肖像画もあった。何の部屋なのだろうかと首を傾げていた時
「そこで何をしている」
低い声に思わず体を跳ねさせる。
「す、すみません!迷って…あの…」
何かいい訳をしようと振り返り、驚いた。そこに居たのは探していた銀髪の青年だったからだ。
「ここは立ち入り禁止だ」
「す、すみません!すぐに出ます!」
部屋から飛び出せば、青年がすぐに扉を閉めた。
「あ、あの…この部屋って?」
「…尊き犠牲の間だ」
小さく呟かれた言葉は確かに聞こえた。もしや戦争で亡くなった人達の慰霊の部屋だったのだろうか。そうだとすれば不躾に入ってはいけない場所だ。申し訳ないことをしたと反省する。
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