2つの世界の架け橋

明人

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歪み

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「だが、それに対して人間は天界樹の力を借りねばその魔力を世界に還すことが出来ない」
その言葉を聞いた瞬間人間の三人は目を見開いた。
「待ってください。人間は十年ほど前から土地の問題などで遺体を火葬しそれぞれの土地に埋葬しています。天界樹の下へ埋葬しているのは極一部のみです」
「国は火葬でも魔力の循環は問題ないと国民に発表していますが…」
「それが嘘なのだ」
アインの言葉を否定したゼルにガルディアが怒鳴る。
「そんなもの貴様らの方便に決まっているだろうが!!第一今起こっている自然の異変も全て貴様らが仕組んでいることだろう!!」
そんなガルディアをシリーが鋭く睨みつけて答える。
「な訳ないでしょうが。私達の魔力がいくら強かろうが自然を操るなんてほぼ出来ないと言っていいわ。出来たとしてもわざわざ人間にちょっかいかけない。やるなら本気で、全人類を滅亡させる気でいくわよ」
「で、では今起きている異変はどういうことなんですか…?」
リラの問いに王が答える。
「人間達が火葬を始めたことにより世界の魔力は少しずつ火の魔力に偏り始めていた。人間は数が多い。偏りが例え少しでもその数が重なれば大きな歪みとなる。魔力のバランスが火の魔力に偏ったことにより水属性が弱まり雨が降りづらくなったのだ」
「この間の火山も火の魔力の昂ぶりによるものよ」
リラは以前のことを思い出し気がついた。
「もしかして…魔族は火山の噴火などが予測できるんですか?」
「鋭い子はね。魔力の歪みが分かるんだって」
「火葬によって火の魔力に傾くというなら火山の噴火によってもし人が大勢死んでいたら今の歪みを更に加速させてたってことですよね…?もしかして以前の戦いはそれを防ぐために…?」
震える声で問いかけてくるリラにシリーは眉を下げて小さく微笑んだ。その声のない肯定にリラは絶句した。
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