2つの世界の架け橋

明人

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リラの言葉を聞いたオーリは強く拳を握りしめ、リラを睨みつける。
「貴様らのその他者を傷つける正義感で誰かを死に至らしめることもある!誰かを救う為に誰かを殺す!!そんな馬鹿な思想や誇りなどあるから犠牲が増えるのだ!!!」
オーリの怒気が込められた言葉は今までの突き放すようなものではない。自身の痛みを晒し、痛いことが苦しいのだという叫びだ。
リラは少しだけ、オーリの痛みに触れられた気がした。
「ええ。私は自己犠牲でしか自身の価値を見出せない人間です。そのせいで、シラビシとシリーに沢山心配かけてしまった。そこは反省しています。でも、それでも私の力で大切な誰かを救えるならと思ったんです」
「それが...自身の大切な者を失うことになってもか...っ!」
「それは...望まぬ結果であることは確かです。でも、オーリさんのご親族は世界だけでなく、あなたや家族も守るために命をかけられたのだと思っています。世界の誰かのためだけじゃなく、大切な貴方達のために」
リラの言葉でオーリはようやく、兄の聞けなかった言葉の先を知ることが出来た気がした。
【俺達は、お前達を守るために行くんだ】
その言葉を父が制止したのは、2人の死をオーリ達に背負わせないためだったのだと、今ようやく理解した。
理解し、涙が自然と溢れた。気づいて止めようにも涙は次々と目から零れ落ち、オーリは顔を覆って嗚咽を殺した。
そんなオーリからリラは視線を外し、語るように言葉を紡ぐ。
「オーリさんからしたら自分達を残して死んで何が英雄だって怒ってたんだと思います。でも、それと同じぐらい家族を失って悲しかったんだと思います。だから、亡くなった方を想って泣いてあげてください。その涙はご家族に対する手向けの花ですから」
オーリの頬をいくつも涙が滑り落ちる。まるで花びらが落ちるようにいくつもいくつも落ちていった。
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