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触れる
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リラがゼルに案内され、入った部屋は王の自室だった。
大きな天蓋つきのベットと書類仕事をするためなのかテーブルと椅子があるだけの簡素な部屋だ。王はベットに腰掛け、自分の隣をポンと叩く。
「こちらに来い」
「は、はい」
リラは内心怯え、表面では緊張でぎこちなく少し距離を空けてゼルの隣に座る。そんなリラにゼルは少し考えたあと、少し距離を詰めるがリラはそれに習って離れる。
「...そんなに俺が怖いか」
いつもと変わらぬ調子のような気もしたが、少しだけ違和感を覚えリラはそっと様子を伺う。
その時の王は傷ついたような辛そうな顔をしていた。この表情を、こんな痛みを与えたのは自分だとリラはようやく自覚した。
「ご、ごめんなさい!!」
「いや、謝ることではない。人間のお前が魔王である俺に恐怖を抱くことは当然のことだからな」
「で、でも!私は陛下に守っていただき、命を救っていただいたことだってあります!そんな方に失礼な振る舞いでした。それに...陛下はとても優しい方です。魔王として威厳ある王を勤めつつも、我々人間に最大限の慈悲を下さっている。その事実にまず感謝を申し上げるべきでした。ありがとうございます」
深々と頭を下げ、リラは顔を上げて真っ直ぐゼルを見つめる。相変わらず感じる威圧感は凄まじいがそれでも逸らしてはならないと自分に言い聞かせ、言葉を続ける。
「その細やかなお礼として陛下が望まれることを私も最大限返したいです。何かありますでしょうか?」
「あぁ、ある」
「成せることならば何でも」
「俺がお前に触れることに対して慣れろ」
「触れ...る...?」
ゼルの鋭い爪のついた毛深い手がリラの頬に伸びる。思わずビクリと身を震わせるリラに一瞬ゼルの手は止まったが、やがてそっとリラの頬を撫でる。
大きな天蓋つきのベットと書類仕事をするためなのかテーブルと椅子があるだけの簡素な部屋だ。王はベットに腰掛け、自分の隣をポンと叩く。
「こちらに来い」
「は、はい」
リラは内心怯え、表面では緊張でぎこちなく少し距離を空けてゼルの隣に座る。そんなリラにゼルは少し考えたあと、少し距離を詰めるがリラはそれに習って離れる。
「...そんなに俺が怖いか」
いつもと変わらぬ調子のような気もしたが、少しだけ違和感を覚えリラはそっと様子を伺う。
その時の王は傷ついたような辛そうな顔をしていた。この表情を、こんな痛みを与えたのは自分だとリラはようやく自覚した。
「ご、ごめんなさい!!」
「いや、謝ることではない。人間のお前が魔王である俺に恐怖を抱くことは当然のことだからな」
「で、でも!私は陛下に守っていただき、命を救っていただいたことだってあります!そんな方に失礼な振る舞いでした。それに...陛下はとても優しい方です。魔王として威厳ある王を勤めつつも、我々人間に最大限の慈悲を下さっている。その事実にまず感謝を申し上げるべきでした。ありがとうございます」
深々と頭を下げ、リラは顔を上げて真っ直ぐゼルを見つめる。相変わらず感じる威圧感は凄まじいがそれでも逸らしてはならないと自分に言い聞かせ、言葉を続ける。
「その細やかなお礼として陛下が望まれることを私も最大限返したいです。何かありますでしょうか?」
「あぁ、ある」
「成せることならば何でも」
「俺がお前に触れることに対して慣れろ」
「触れ...る...?」
ゼルの鋭い爪のついた毛深い手がリラの頬に伸びる。思わずビクリと身を震わせるリラに一瞬ゼルの手は止まったが、やがてそっとリラの頬を撫でる。
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