転生お転婆令嬢は破滅フラグを破壊してバグの嵐を巻き起こす

のりのりの

文字の大きさ
3 / 132
Mission1 前世を思い出せ!

3.黒髪の青年

しおりを挟む
 あたしが動くたびに、しなやかな枝が怖いくらいにギシギシと揺れる。
 それでも、あたしは、子猫を助けたくて、そろり、そろり、と子猫の方に近づいていく。

「いいこだから……。いいこだから……。暴れずに、そのまま、じっとしているのよ……」

 手が届くギリギリのところまで近づくと、あたしはゆっくりと片手……ではなく、両手を伸ばした。
 身体のバランスが崩れる?
 そんなことに迷っている場合ではない。あたしは、子猫を素早く抱き上げた。

 抱かれることになれていない子猫は、少しだけ抵抗したが、あたしの胸の中におさまると、静かになった。

「やった!」
「おっ、お嬢様――っ!」

 あたしの叫び声と、侍従の悲鳴が重なる。
 メリメリと音がして、視界がゆっくりと下がっていく。

(ああ……やばい!)

 やばいけど、子どものあたしにはどうすることもできない。

 そして、いきなりの落下開始。

 そのまま景色がくるりと反転し、青い夏っぽい空が見えた。
 自分がどういう体勢になっているのか、全く想像できなかったが、自分の身にこれから起こることはわかった。

「あ……これから、あたし、木から落ちちゃうんだ……」

 いや、正確には、すでに木から落ちているのだが、そんなこと、子どもにはわかるわけない。

 あたしは反射的に目を閉じ、子猫をギュッと抱きしめる。

 なんだが、時間がゆっくりと動いているような錯覚にとらわれる。

「おじょうさま――っ!」
「レーシア!」

 侍従の他に、別の声が聞こえた。
 名前を呼ばれて、閉じていた目を開く。

 よく、そんな時間があるもんだ、とあたしは驚く。


 世界が止まって見えた。


 いや、世界はちゃんと動いている。


 だけど……。

 まるで、あたしをとりまく周囲の時間だけが切り離され、ゆっくりと、緩慢に流れているような錯覚に陥る。

 これって、話にきく、死の直前に感じる時間の流れというものだろうか。

 猫を抱いたあたしがゆっくりと、池に向って落下していくなか……全速力でこちらに駆け寄ってくる黒髪の青年の姿が見えた。

 黒髪の青年は、低木を飛び越え、ものすごいスピードで走りながら、池の方へと一直線に向かってくる。

 その途中で、肩から下げていたカバンを勢いよく投げ捨てる。

 さらには、旅人が身につけている日よけの外套を脱ぎ捨て、腰の剣をベルトから外す。ポーチがついているベルトも外して、まとめて地面に投げ捨てる。

 首元を飾っているスカーフもしゅるりと外し、上着を脱ぎ、鍛えられた上半身が見えそうになったとき……。

 バシャン。
 ドボン。

 あたしは、折れた枝と一緒に、子猫もろとも水中に落ちていた。

 池に落ちると同時に、無数の泡に包まれる。
 視界が泡だらけになる。
 あたしは、木からの落下の勢いのまま、水底にまで一気に落ちた。そして「ごちん」と頭に鈍い衝撃が走る。

 池の中にある岩にでも頭をぶつけたのだろう。

 衝撃で目から火花が飛び散る。
 世界がチカチカする。

 驚いた拍子に、鼻と口から空気が一気に抜けだした。そして、鼻から、開いた口から、水がガボガボと勢いよく入ってくる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

モブとか知らないし婚約破棄も知らない

monaca
恋愛
病弱だったわたしは生まれかわりました。 モブ? わかりませんが、この婚約はお受けいたします。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...