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Mission2 お祖母様を救え!
50.アドルミデーラ家の長子として
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色々……ライース兄様の「あ――ん」攻撃とか……ありすぎて、気づくのが遅くなってしまった。
ゲーム内の時間軸だと、ライース兄様は今頃、絶賛行方不明中になっており、護衛が慌てふためいている頃だ。
お目付け役の監視から逃れたライース兄様は、領地の外、さらには国外へと放浪エリアを広げていく。
ゲームでは、これからあと二年、ライース兄様は放浪の旅を続け、成人してから――十八歳になってから――イヤイヤ王宮づとめをはじめるのだ。
本編はそこからはじまっており、ヒロインとの出会いも、王宮づとめ初日となっている。
これって、もしかして、というか、もしかしなくても、あたしが池で溺れても死ななかったから?
ライース兄様が姿を消す理由がなくなった……?
これって、不味いんじゃない?
ライース・アドルミデーラはその二年間、ただ物見遊山を楽しんでいたわけではなく、各地を放浪することによって、見識と人脈を広め、味方となるサブキャラクターたちと出会っていくのだ。
それによるライース兄様の『経験値と人脈、協力者の存在』によるステータスかさ増しは、チートといってもさしつかえないくらい、他の攻略キャラと圧倒的な差があり、本編クリアには必要不可欠な能力だ。
それがなくなる?
ちょ……落ち着けあたし!
これは、間違いなく、社内に持ち帰って再検討する重要案件だ。
予想外のアクシデントに対しても、慌てず落ち着いて、冷静に、スマートに、冷静に……華麗に対応できてこそ、一人前の社会人だ。
冷静という言葉を二度使うくらいには、あたしは焦っていた。
でも、どう対処したらよいのかわからない。
このままライース兄様が行方をくらまさなかったら、今後、どうなるのか……全くわからない。
と、とりあえず、目の前の手頃な問題から片付けよう……。
親子はまだ言い争っている。
といっても、声のトーンは通常の会話とかわらず、内容だけが、身を削るような刺々しさに満ちあふれている。
嫌味の応酬というか、ライース兄様の毒舌……怖い。
その毒舌に屈することなく平然としているお父様ってば、すごすぎて怖い。
ただ、会話の内容が、気がついたらあたしのことからライース兄様自身の放浪癖に変わっていたのは……まあ、ご愛嬌だ。
あたしはモブだからね。
ライース兄様の貴族子息らしからぬ行動に、お父様もそれなりに頭を悩ませていたようである。
お父様の主張を要約すると……今までは正妻からのいじめを避けるためにも、ライース兄様の放浪を黙認していたが、そろそろ戻ってこいということだ。
アドルミデーラ家の家督を継がせるために、政務補佐の勉強、引き継ぎを見据えた手伝いを当主代理としてライース兄様にさせたい……とアドルミデーラ侯爵は考えていた。というか、その機会を虎視眈々と狙っていたっぽい。
ライース兄様はというと「正妻の息子に家督を譲ればいいでしょう。その方が、波風もたたず、あのヒトも心穏やかに過ごされますよ」とお父様の攻撃をのらりくらりとかわしている。
「アドルミデーラ家の長子としての義務を放棄することはゆるされない。いいかげんあきらめなさい」
とか
「父上こそあきらめが悪いですね。聞き飽きました」
といった会話がされているので、あたしがまだ意識を回復していない間、あるいは、昨日の夜など、ことあるごとに言い争っていたのかもしれない……。
ゲーム内の時間軸だと、ライース兄様は今頃、絶賛行方不明中になっており、護衛が慌てふためいている頃だ。
お目付け役の監視から逃れたライース兄様は、領地の外、さらには国外へと放浪エリアを広げていく。
ゲームでは、これからあと二年、ライース兄様は放浪の旅を続け、成人してから――十八歳になってから――イヤイヤ王宮づとめをはじめるのだ。
本編はそこからはじまっており、ヒロインとの出会いも、王宮づとめ初日となっている。
これって、もしかして、というか、もしかしなくても、あたしが池で溺れても死ななかったから?
ライース兄様が姿を消す理由がなくなった……?
これって、不味いんじゃない?
ライース・アドルミデーラはその二年間、ただ物見遊山を楽しんでいたわけではなく、各地を放浪することによって、見識と人脈を広め、味方となるサブキャラクターたちと出会っていくのだ。
それによるライース兄様の『経験値と人脈、協力者の存在』によるステータスかさ増しは、チートといってもさしつかえないくらい、他の攻略キャラと圧倒的な差があり、本編クリアには必要不可欠な能力だ。
それがなくなる?
ちょ……落ち着けあたし!
これは、間違いなく、社内に持ち帰って再検討する重要案件だ。
予想外のアクシデントに対しても、慌てず落ち着いて、冷静に、スマートに、冷静に……華麗に対応できてこそ、一人前の社会人だ。
冷静という言葉を二度使うくらいには、あたしは焦っていた。
でも、どう対処したらよいのかわからない。
このままライース兄様が行方をくらまさなかったら、今後、どうなるのか……全くわからない。
と、とりあえず、目の前の手頃な問題から片付けよう……。
親子はまだ言い争っている。
といっても、声のトーンは通常の会話とかわらず、内容だけが、身を削るような刺々しさに満ちあふれている。
嫌味の応酬というか、ライース兄様の毒舌……怖い。
その毒舌に屈することなく平然としているお父様ってば、すごすぎて怖い。
ただ、会話の内容が、気がついたらあたしのことからライース兄様自身の放浪癖に変わっていたのは……まあ、ご愛嬌だ。
あたしはモブだからね。
ライース兄様の貴族子息らしからぬ行動に、お父様もそれなりに頭を悩ませていたようである。
お父様の主張を要約すると……今までは正妻からのいじめを避けるためにも、ライース兄様の放浪を黙認していたが、そろそろ戻ってこいということだ。
アドルミデーラ家の家督を継がせるために、政務補佐の勉強、引き継ぎを見据えた手伝いを当主代理としてライース兄様にさせたい……とアドルミデーラ侯爵は考えていた。というか、その機会を虎視眈々と狙っていたっぽい。
ライース兄様はというと「正妻の息子に家督を譲ればいいでしょう。その方が、波風もたたず、あのヒトも心穏やかに過ごされますよ」とお父様の攻撃をのらりくらりとかわしている。
「アドルミデーラ家の長子としての義務を放棄することはゆるされない。いいかげんあきらめなさい」
とか
「父上こそあきらめが悪いですね。聞き飽きました」
といった会話がされているので、あたしがまだ意識を回復していない間、あるいは、昨日の夜など、ことあるごとに言い争っていたのかもしれない……。
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