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Mission2 お祖母様を救え!
65.先達に倣う
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(※2024年1月8日:修正しました)
前世の記憶は偏っているし、今世の記憶も前世を思い出したことによって、少し混乱している。
なので、コッソリ紙に書き出して、整理してみようとあたしは考えた。
異世界に転生した主人公が、思い出した情報を忘れてしまわないようにって書き出しているシーンがあったからね。
あたしも、そのマニュアルどおりに行動してみようと思ったわけだ。
先達に倣うだ。
ただでさえ、複雑なストーリーなのだ。
混乱している記憶を整理しながら、表面がざらざらな紙に書いていく。
握っている羽根ペンをまじまじと見つめる。これも魔導具だった。
前世のイメージだと、羽根ペンというものは、鳥の羽根を加工して、インクをつけながら、紙にガリガリと書いていくものだと思っていた。
紙もあまり質がよろしくないので、書きづらいかというと、万年筆のように書きやすくて驚いた。インク壺もなく、インクを補充する必要もない。
この羽根のどこにインクが詰められているのかは謎だ。
前世の万年筆ならば、カートリッジインクがなくなれば、新しいものを入れ直す。
この羽根ペンにはそれらしい部分は見当たらない。
こんな便利羽根ペンが作れるのなら、もっと上質な紙があってもいいのでは?
と思ってライース兄様に聞いてみた。
ライース兄様はちょっと驚いた顔をしてから「そのような紙はない」と教えてくれた。
ここは、乙女ゲーム仕様の、乙女が使用するための、乙女を満足させるためのなんちゃって中世ヨーロッパだ。
リアル中世ヨーロッパではないということだ。
なので、安心してほしい。
風呂や水洗式トイレはちゃんとある!
助かった!
魔導具の風呂になると、起動部分に魔力を注げは、温かい湯がじょぼじょぼとでてくるし、トイレは水がじゃーっと流れ、排出したモノは分解されてきれいな水として処理される。
実際に自分で操作したときは、ちょっぴり感動した。
いやあ、リアル中世ヨーロッパだと、おまるでやって、排泄物は窓から投げ捨て、空から降ってくるとか聞いたことがあるから、それじゃなくて助かったよ。
タライで行水とか、サウナだけとかじゃなく、入浴文化のある世界観でよかったよ。
さすが乙女ゲームの世界だ。
ゲーム内での描写はなかったが、乙女のココロをちゃんと理解している世界設定た。
だったら、車や電車のようなものがあっても……という話になるんだけど、それはなく、移動は馬車、馬がほとんど……みたいだ。
ゲームの中にも車や電車のようなものはなかったので、この世界にも存在しないということか。
道具は発展途上のものが多いみたいだ。
美術設定のこだわり……中世ヨーロッパ風のファンタジー舞台は譲れないんだろう。
とはいえ、生活していると、なぜこれが魔道具なんだ? という奇妙な道具も多い。
魔道具は高価だからね。
一般家庭にはないものも、お金持ちなアドルミデーラ家にはたくさんある。
その一個、一個に驚いていたら、カルティが怪訝そうな目であたしを見ていた。
まじゅい……驚きすぎては不審がられる。
屋敷にたくさんある魔道具の仕組みはよくわからないけど、これが乙女ゲーム世界のファンタスティックな便利設定なんだろう。そういうものだと納得した。
前世には『郷に入っては郷に従え』というコトバもある。
割り切って受け入れるしかないだろう。
前世での感覚をいつまでもひきずっていてはダメだ。
さっさと、この世界のルールに馴染んで、死亡イベ回避に全集中できるよう、環境を整えなければならない。
一見、長閑そうに見えるこの世界だが、実は、死亡イベがぎゅうぎゅう密集している血まみれデンジャラスな世界なのだ!
奇妙な魔道具にいちいち反応している場合じゃない。
攻略キャラが集結するゲームの終盤では、全員の死亡イベを時系列に並べると、事件が分刻みで起こっているとしかいえないような状況になっているのだ。
『キミツバ』のヘビーユーザーの中でもトップオブトップの豆吉さんが、タイムスケジュールを自分の運営している攻略サイトに公開したときは、
「シナリオ作ったひとすげー!」
「豆吉さんはその上をいく!」
って、ざわついたものだ。
あたしもどこにいらっしゃるかわからない豆吉さんに手を合わせながら、そのページをブクマしたくらいである。
……そこまで思い出せているのに、肝心のタイムスケジュールが思い出せない。
なんて、しょっぱい現実なんだろう。
前世の記憶は偏っているし、今世の記憶も前世を思い出したことによって、少し混乱している。
なので、コッソリ紙に書き出して、整理してみようとあたしは考えた。
異世界に転生した主人公が、思い出した情報を忘れてしまわないようにって書き出しているシーンがあったからね。
あたしも、そのマニュアルどおりに行動してみようと思ったわけだ。
先達に倣うだ。
ただでさえ、複雑なストーリーなのだ。
混乱している記憶を整理しながら、表面がざらざらな紙に書いていく。
握っている羽根ペンをまじまじと見つめる。これも魔導具だった。
前世のイメージだと、羽根ペンというものは、鳥の羽根を加工して、インクをつけながら、紙にガリガリと書いていくものだと思っていた。
紙もあまり質がよろしくないので、書きづらいかというと、万年筆のように書きやすくて驚いた。インク壺もなく、インクを補充する必要もない。
この羽根のどこにインクが詰められているのかは謎だ。
前世の万年筆ならば、カートリッジインクがなくなれば、新しいものを入れ直す。
この羽根ペンにはそれらしい部分は見当たらない。
こんな便利羽根ペンが作れるのなら、もっと上質な紙があってもいいのでは?
と思ってライース兄様に聞いてみた。
ライース兄様はちょっと驚いた顔をしてから「そのような紙はない」と教えてくれた。
ここは、乙女ゲーム仕様の、乙女が使用するための、乙女を満足させるためのなんちゃって中世ヨーロッパだ。
リアル中世ヨーロッパではないということだ。
なので、安心してほしい。
風呂や水洗式トイレはちゃんとある!
助かった!
魔導具の風呂になると、起動部分に魔力を注げは、温かい湯がじょぼじょぼとでてくるし、トイレは水がじゃーっと流れ、排出したモノは分解されてきれいな水として処理される。
実際に自分で操作したときは、ちょっぴり感動した。
いやあ、リアル中世ヨーロッパだと、おまるでやって、排泄物は窓から投げ捨て、空から降ってくるとか聞いたことがあるから、それじゃなくて助かったよ。
タライで行水とか、サウナだけとかじゃなく、入浴文化のある世界観でよかったよ。
さすが乙女ゲームの世界だ。
ゲーム内での描写はなかったが、乙女のココロをちゃんと理解している世界設定た。
だったら、車や電車のようなものがあっても……という話になるんだけど、それはなく、移動は馬車、馬がほとんど……みたいだ。
ゲームの中にも車や電車のようなものはなかったので、この世界にも存在しないということか。
道具は発展途上のものが多いみたいだ。
美術設定のこだわり……中世ヨーロッパ風のファンタジー舞台は譲れないんだろう。
とはいえ、生活していると、なぜこれが魔道具なんだ? という奇妙な道具も多い。
魔道具は高価だからね。
一般家庭にはないものも、お金持ちなアドルミデーラ家にはたくさんある。
その一個、一個に驚いていたら、カルティが怪訝そうな目であたしを見ていた。
まじゅい……驚きすぎては不審がられる。
屋敷にたくさんある魔道具の仕組みはよくわからないけど、これが乙女ゲーム世界のファンタスティックな便利設定なんだろう。そういうものだと納得した。
前世には『郷に入っては郷に従え』というコトバもある。
割り切って受け入れるしかないだろう。
前世での感覚をいつまでもひきずっていてはダメだ。
さっさと、この世界のルールに馴染んで、死亡イベ回避に全集中できるよう、環境を整えなければならない。
一見、長閑そうに見えるこの世界だが、実は、死亡イベがぎゅうぎゅう密集している血まみれデンジャラスな世界なのだ!
奇妙な魔道具にいちいち反応している場合じゃない。
攻略キャラが集結するゲームの終盤では、全員の死亡イベを時系列に並べると、事件が分刻みで起こっているとしかいえないような状況になっているのだ。
『キミツバ』のヘビーユーザーの中でもトップオブトップの豆吉さんが、タイムスケジュールを自分の運営している攻略サイトに公開したときは、
「シナリオ作ったひとすげー!」
「豆吉さんはその上をいく!」
って、ざわついたものだ。
あたしもどこにいらっしゃるかわからない豆吉さんに手を合わせながら、そのページをブクマしたくらいである。
……そこまで思い出せているのに、肝心のタイムスケジュールが思い出せない。
なんて、しょっぱい現実なんだろう。
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