94 / 132
Mission3 お祖母様を救え!
94.お祖母様の病気
しおりを挟む
「ヒョウケッショウビョウ?」
「ひょうけっしょうびょう!」
あたしとライース兄様は同時に叫ぶ。
聞き慣れない病名に、ライース兄様は不思議そうに首を傾げるが、『キミツバ』ユーザーだったあたしには『氷結晶病』は馴染みのある病名だ。
ヒョウケッショウビョウ……という響きがあたしの記憶の奥底を揺さぶり、ゆっくりと、鮮やかに情報が浮上してくる。
「……ヒョウケッショウビョウとは、どういう病なのだ?」
ライース兄様の質問に、デイラル先生はずれかけたモノクルをかけなおす。
「氷結晶病は、体内の熱を失い、肌の色を失い、冷たく結晶のように固まっていく病でございます。手先、足先から硬化がはじまり、徐々に心の臓に向かって、その症状は進行していきます」
「固まる?」
あたしは黙ってふたりの会話を聞く。
いや、驚きすぎて言葉がでない。
「はい。まず、手先、指先の感覚がなくなり、動かなくなります。動かなくなると、まるで、石のように……硬く固まってしまうのです。そして、腕があがらなくなり、足も動かすことができなくなります。そのうち瞼も開かなくなり、口も開くことができなくなります」
「なんだと!」
そうなのだ。
口が開かなくなるということは、食事ができなくなる……。
そして……最後には……。
「結晶化は五臓六腑、体内にまで及びます」
そう。氷結晶病は心臓までもが固まって、動が止まってしまう怖い病気なのだ。
あたしは、この会話を知っている。
時間とメンバーは違うが、この会話は本編のイベントにあった。ライース兄様攻略イベントでなされた会話だ。
そうそう。
避暑イベントだ。
ゲームの中盤頃、キャラとの親密度を一気にあげる選択制ボーナスイベントが発生する。
親密度を上げたいと思うキャラをひとり選び、そのキャラと一緒に王都を離れ、避暑を兼ねた視察で、地方のどこかに出向くというイベントがあるのだ。
キャラだけ違って同じイベントが発生するのではなく、キャラごとに違うイベントが用意されていた。
全攻略キャラのイベントをプレイしたい場合は、色々とやり方はあったが、結局は課金なしではプレイできないイベントだ。
ライース兄様のイベントを選択した場合、ライース兄様とその兄弟たちと一緒に、気分転換もかねてアドルミデーラ領にでかけましょう……ということになる。
別荘の避暑地――つまりこの屋敷――で、ライース兄様とラブラブなイベントが発生するのだ。
で、その最後に、一緒にいたライース兄様の異母妹(あたしじゃないよ。あたしの異母姉だよ)が、この氷結晶病にかかってしまうのだ。
……そういえば、手作りノートにもそのイベントはざっくりとメモしていた。
数年先のイベントなので油断していたよ。
なんということでしょう。
今はまだ本編が始まる前だというのに、本編そのままのセリフが、ヒロイン不在のままどんどん再生されていく。
しかも、ライース兄様の声が若い。
会話の相手となったモブ医者は、デイラル先生だったのか。
デイラル先生の説明が終わり、全員が言葉を失う。
そう、ゲームのときもそうだった。
ライース兄様の顔色が悪い。真っ青だ。
ゲームのイベントのときにはいなかったカルティは、今にも泣きだしそうなくらい顔が歪んでいる。
爺やは目を真っ赤にさせて、正面を睨んでいる。
「その……。どれくらいの期間で、心の臓が結晶化するのだ?」
「発症してから数日のうちに……文献によりますと早くて3日。長かった者でも一週間ほどだとか……5日以内が多いそうです」
「長くても……一週間」
ライース兄様はソファに身を沈めると、呆然とした顔で天井を見上げた。
「治療は? 薬はないのか?」
「ございません」
「ひょうけっしょうびょう!」
あたしとライース兄様は同時に叫ぶ。
聞き慣れない病名に、ライース兄様は不思議そうに首を傾げるが、『キミツバ』ユーザーだったあたしには『氷結晶病』は馴染みのある病名だ。
ヒョウケッショウビョウ……という響きがあたしの記憶の奥底を揺さぶり、ゆっくりと、鮮やかに情報が浮上してくる。
「……ヒョウケッショウビョウとは、どういう病なのだ?」
ライース兄様の質問に、デイラル先生はずれかけたモノクルをかけなおす。
「氷結晶病は、体内の熱を失い、肌の色を失い、冷たく結晶のように固まっていく病でございます。手先、足先から硬化がはじまり、徐々に心の臓に向かって、その症状は進行していきます」
「固まる?」
あたしは黙ってふたりの会話を聞く。
いや、驚きすぎて言葉がでない。
「はい。まず、手先、指先の感覚がなくなり、動かなくなります。動かなくなると、まるで、石のように……硬く固まってしまうのです。そして、腕があがらなくなり、足も動かすことができなくなります。そのうち瞼も開かなくなり、口も開くことができなくなります」
「なんだと!」
そうなのだ。
口が開かなくなるということは、食事ができなくなる……。
そして……最後には……。
「結晶化は五臓六腑、体内にまで及びます」
そう。氷結晶病は心臓までもが固まって、動が止まってしまう怖い病気なのだ。
あたしは、この会話を知っている。
時間とメンバーは違うが、この会話は本編のイベントにあった。ライース兄様攻略イベントでなされた会話だ。
そうそう。
避暑イベントだ。
ゲームの中盤頃、キャラとの親密度を一気にあげる選択制ボーナスイベントが発生する。
親密度を上げたいと思うキャラをひとり選び、そのキャラと一緒に王都を離れ、避暑を兼ねた視察で、地方のどこかに出向くというイベントがあるのだ。
キャラだけ違って同じイベントが発生するのではなく、キャラごとに違うイベントが用意されていた。
全攻略キャラのイベントをプレイしたい場合は、色々とやり方はあったが、結局は課金なしではプレイできないイベントだ。
ライース兄様のイベントを選択した場合、ライース兄様とその兄弟たちと一緒に、気分転換もかねてアドルミデーラ領にでかけましょう……ということになる。
別荘の避暑地――つまりこの屋敷――で、ライース兄様とラブラブなイベントが発生するのだ。
で、その最後に、一緒にいたライース兄様の異母妹(あたしじゃないよ。あたしの異母姉だよ)が、この氷結晶病にかかってしまうのだ。
……そういえば、手作りノートにもそのイベントはざっくりとメモしていた。
数年先のイベントなので油断していたよ。
なんということでしょう。
今はまだ本編が始まる前だというのに、本編そのままのセリフが、ヒロイン不在のままどんどん再生されていく。
しかも、ライース兄様の声が若い。
会話の相手となったモブ医者は、デイラル先生だったのか。
デイラル先生の説明が終わり、全員が言葉を失う。
そう、ゲームのときもそうだった。
ライース兄様の顔色が悪い。真っ青だ。
ゲームのイベントのときにはいなかったカルティは、今にも泣きだしそうなくらい顔が歪んでいる。
爺やは目を真っ赤にさせて、正面を睨んでいる。
「その……。どれくらいの期間で、心の臓が結晶化するのだ?」
「発症してから数日のうちに……文献によりますと早くて3日。長かった者でも一週間ほどだとか……5日以内が多いそうです」
「長くても……一週間」
ライース兄様はソファに身を沈めると、呆然とした顔で天井を見上げた。
「治療は? 薬はないのか?」
「ございません」
2
あなたにおすすめの小説
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。
ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。
小説家になろう様でも投稿しています。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる