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Mission3 お祖母様を救え!
120.無邪気な子どもの素朴な疑問
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ライース兄様とデイラル先生の不思議そうな反応からして、イベントエンディング音はあたしにしか聞こえなかったのだろう。
音楽はすぐに消えた。
だけど、はっきりと聞こえた。聞き間違うはずがない。
あたしにだけしか聞こえない音。
どういう仕組みで、誰の仕業かはわからないが、イベントエンディング音が聞こえたということは『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』が、めでたくエンディングを迎えたことになる。
一ヶ月ほど遅れのエンディングで、もう真夏というか秋だが。
イベントは終了したが、あたしも、お祖母様も生きている。
これでお祖母様とあたしの死亡イベントは回避できた。と思ってもいいよね?
そして、カルティ・アザはお父様に追放されなかったので、連動していた『カルティ・アザ 晩夏の別離編』は……はて? どうなるのかな?
いわゆる、イベント発生条件が揃わなかったことによる、イベント未発生ということでいいのだろうか?
イベントが終了した安心感と同時に、やっぱりここはゲームの世界なのかという、不気味な不安も湧き上がってくる。
いやいや。
効果音を流すなら、失敗したらやり直せる『巻き戻しの砂時計』をくれ!
「レーシア、もしかして、風邪をぶり返して幻聴が聞こえるのか?」
「いえ! ちがいます! 音楽は聞きまちがいだったようです」
どうしてくれよう。ライース兄様がめちゃくちゃ過保護すぎる!
あたしの返事に、ライース兄様はひとまず納得してくれたようだ。
「しかし、本当に青いバーニラーヌの花があったとは……子どもの読む絵本もあなどれないな」
「言い伝えが物語として語り継がれ、絵本という形になって残ったのでしょう。伝承は人々の知恵の結晶です」
ゲームと同じセリフだ!
ただし、これから数年先に起こるはずのイベントのセリフだけどね。
「デイラル先生!」
ここから先は、イベントにはないセリフになる。
だって、あたしは存在しないキャラだから。
「フレーシアお嬢様、なんでしょうか?」
デイラル先生はゆっくりと膝を曲げ、あたしの目線になってくれた。
あたしは『穏やかな転生ライフを満喫するための三箇条改め五箇条』を脳裏に思い浮かべながら、必死に言葉を探す。
ひとつ、行動は慎重に。
ひとつ、ゲームとこの世界の差分に注意する。
ひとつ、死亡イベントを回避できたとしても、油断しない。
出血厳禁。
気絶回避。
マル秘ノートを見なくても間違わずに思い出せる。
「デイラル先生、ヒョウケッショウビョウは、とてもめずらしいビョウキだそうですけど、さいはつしないのでしょうか? ほかの人もハッショウするカノウセイはあるのでしょうか?」
あたしの質問に、デイラル先生は目をぱちくりさせた。
「青いバーニラーヌは、ヒョウケッショウビョウだけにきくおくちゅりなのですか? 他のビョウキにはきかないのですか? 根や葉はおくちゅりにならないのですか?」
「レーシア! なにを言っているんだ」
慌てるライース兄様を、デイラル先生は片手をあげて制する。
「白いバーニラーヌは、お屋敷でそだてることができるのですよね? でも、青いバーニラーヌはそだたないのですか?」
無邪気な子どもの素朴な疑問だ。
デイラル先生は白い髭をしごきながら「ふぉっ、ふぉっ」と笑う。
「そうでございますね。そうでございました」
皺だらけの手があたしの手を握る。
「フレーシアお嬢様、ご安心ください。わたくしの弟子に、薬草を研究している者がおります。戻りましたら、その者に青いバーニラーヌの研究をさせましょう。一般的なバーニラーヌの研究もしましょう」
デイラル先生は優しい。
そして、子どもの戯言にも真面目に耳を傾けてくれる。
ゲームのバッドエンドでは、結死病という疫病が流行するパターンがある。
本編ではないので、それは一瞬で語られて終わるが、それが実際に起ってしまったら大変なことになるだろう。
そのルートを辿るバッドエンドがあるかはわからないけど、用心しておいた方がいい。
それこそ、青いバーニラーヌの栽培に成功し、薬が手に入りやすい状態だったら、疫病の流行もゲームほどひどくはならないかもしれない。
デイラル先生とそのお弟子さんたちには、死んだほうがマシと思えるくらいにがんばってもらおう。
こうして、シークレットエピソード『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』は、あたしの記憶とは違うエンディングを迎えたのであった。
音楽はすぐに消えた。
だけど、はっきりと聞こえた。聞き間違うはずがない。
あたしにだけしか聞こえない音。
どういう仕組みで、誰の仕業かはわからないが、イベントエンディング音が聞こえたということは『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』が、めでたくエンディングを迎えたことになる。
一ヶ月ほど遅れのエンディングで、もう真夏というか秋だが。
イベントは終了したが、あたしも、お祖母様も生きている。
これでお祖母様とあたしの死亡イベントは回避できた。と思ってもいいよね?
そして、カルティ・アザはお父様に追放されなかったので、連動していた『カルティ・アザ 晩夏の別離編』は……はて? どうなるのかな?
いわゆる、イベント発生条件が揃わなかったことによる、イベント未発生ということでいいのだろうか?
イベントが終了した安心感と同時に、やっぱりここはゲームの世界なのかという、不気味な不安も湧き上がってくる。
いやいや。
効果音を流すなら、失敗したらやり直せる『巻き戻しの砂時計』をくれ!
「レーシア、もしかして、風邪をぶり返して幻聴が聞こえるのか?」
「いえ! ちがいます! 音楽は聞きまちがいだったようです」
どうしてくれよう。ライース兄様がめちゃくちゃ過保護すぎる!
あたしの返事に、ライース兄様はひとまず納得してくれたようだ。
「しかし、本当に青いバーニラーヌの花があったとは……子どもの読む絵本もあなどれないな」
「言い伝えが物語として語り継がれ、絵本という形になって残ったのでしょう。伝承は人々の知恵の結晶です」
ゲームと同じセリフだ!
ただし、これから数年先に起こるはずのイベントのセリフだけどね。
「デイラル先生!」
ここから先は、イベントにはないセリフになる。
だって、あたしは存在しないキャラだから。
「フレーシアお嬢様、なんでしょうか?」
デイラル先生はゆっくりと膝を曲げ、あたしの目線になってくれた。
あたしは『穏やかな転生ライフを満喫するための三箇条改め五箇条』を脳裏に思い浮かべながら、必死に言葉を探す。
ひとつ、行動は慎重に。
ひとつ、ゲームとこの世界の差分に注意する。
ひとつ、死亡イベントを回避できたとしても、油断しない。
出血厳禁。
気絶回避。
マル秘ノートを見なくても間違わずに思い出せる。
「デイラル先生、ヒョウケッショウビョウは、とてもめずらしいビョウキだそうですけど、さいはつしないのでしょうか? ほかの人もハッショウするカノウセイはあるのでしょうか?」
あたしの質問に、デイラル先生は目をぱちくりさせた。
「青いバーニラーヌは、ヒョウケッショウビョウだけにきくおくちゅりなのですか? 他のビョウキにはきかないのですか? 根や葉はおくちゅりにならないのですか?」
「レーシア! なにを言っているんだ」
慌てるライース兄様を、デイラル先生は片手をあげて制する。
「白いバーニラーヌは、お屋敷でそだてることができるのですよね? でも、青いバーニラーヌはそだたないのですか?」
無邪気な子どもの素朴な疑問だ。
デイラル先生は白い髭をしごきながら「ふぉっ、ふぉっ」と笑う。
「そうでございますね。そうでございました」
皺だらけの手があたしの手を握る。
「フレーシアお嬢様、ご安心ください。わたくしの弟子に、薬草を研究している者がおります。戻りましたら、その者に青いバーニラーヌの研究をさせましょう。一般的なバーニラーヌの研究もしましょう」
デイラル先生は優しい。
そして、子どもの戯言にも真面目に耳を傾けてくれる。
ゲームのバッドエンドでは、結死病という疫病が流行するパターンがある。
本編ではないので、それは一瞬で語られて終わるが、それが実際に起ってしまったら大変なことになるだろう。
そのルートを辿るバッドエンドがあるかはわからないけど、用心しておいた方がいい。
それこそ、青いバーニラーヌの栽培に成功し、薬が手に入りやすい状態だったら、疫病の流行もゲームほどひどくはならないかもしれない。
デイラル先生とそのお弟子さんたちには、死んだほうがマシと思えるくらいにがんばってもらおう。
こうして、シークレットエピソード『ライース・アドルミデーラ 真夏の静養地編』は、あたしの記憶とは違うエンディングを迎えたのであった。
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