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第五章
2.万年筆と不思議な出来事
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「わりとその万年筆の作家シリーズは最近のだし、中古品のネットオークションでも物自体は結構出てるらしいよ。価格もそれほどしないので集めている人も多いみたい。でも、そのフィスの万年筆は滅多に出ないらしい」
「ねえ、でもなんで息子の名前と間違えたの?普通だったら考えられないけど」
ちょっと気になったのでそこの所を聞いてみた。
「ああそれ、僕も気になって聞いたんだけど、アレクサンドル・デュマの父親側であるペールは三銃士を書いた人で、息子は息子で椿姫を書いた作家らしい」
「・・・う~ん、どっちも有名だっていうのは分かるけど、それにしたってすごいミスだよね。ちゃんと確認しろって感じ」
「確かにね。間違えて販売した後、ペールの万年筆もだいぶ遅れて再販売したらしい」
「そっか。でもまあ収集する側からすれば美味しい話だったよね」
「フィスの万年筆に気づいたお祖父さんはすごく嬉しかったらしいんだけど・・・」
「査定して買い取りしたんでしょ?」
「そうなんだ。でも、持ってきた男の人は万年筆に興味のない人だったらしくて、何でもいいから言い値でいいって。それでさっさとお金と引き換えに万年筆を渡して帰ったらしいんだよ」
「不思議な話だな。自分の物じゃなくて親族の物を整理したって感じか・・・?」
百家くんが言った。
「一応、犯罪だとか関係していたら困るし、身分証の確認と連絡先も貰ってるらしいけど、お祖父さんもその万年筆をどうやって手に入れたのか経緯を知りたくて聞いたらしい。そしたらその人の亡くなった弟が集めていた物で、詳しくは知らないって事だった」
「まあ、遺品をどうするかは家族の勝手だろうけど、それならなおさらお金にはこだわらないのにどうして手元にも置かないっていうのかが不思議だよな。まあ、あとは手元に置きたくない理由があるんだろう・・・それが今回の相談の理由か?」
「う~ん、そうとも言えるかなぁ?」
尾根山君は複雑そうな表情で首を傾げて言った。
「じゃ、詳しい内容を話してくれよ」
「わかった。え~と最初は、学校で坂上がなんか元気がなくて、気になったからどうしたのか聞いてみたらさ、祖父ちゃんが病気で入院しているっていうんだ、それで詳しく話を聞く事になったんだけど・・・」
もともと坂上くんはお祖父ちゃん子で、学校帰りもお祖父さんがお店を開けていればお店へ立ち寄り、家の方に居れば家の方へ行くという生活をしていたそうだ。学校近くの古い商店街の並びにひっそりとある小さいお店で、仕事を辞めてから知り合いの不動産屋さんに店舗を紹介してもらい建物を購入したという事だ。
坂上くんのお父さんは内科のお医者さんで、隣町に大きい病院があるらしい。お祖父さんはその病院の先代で、息子にさっさと病院を譲ると、趣味だった骨董にのめり込んだのだそうだ。
病院の次男に生まれた坂上くんは、医者になる気はまったくなくむしろお祖父さんの趣味の骨董が気になった。そんな事でお祖父さんとは友達のように仲が良いらしい。
お祖父さんの家はその近くの住宅地にあり、徒歩で通える距離に老夫婦で住んでいた。
そして、坂上くんのお祖父さんが万年筆を引き取った日の夜に話は戻り、家でじっくりと万年筆を見ようと思い書斎の机の上にそれらを置いていたのだそうだ。
書斎にはゆっくりできるようにソファーのセットも置いてあり、そこでお祖父さんはうたた寝をしてしまった。目が覚めたのは人の気配がしたからだった。ふと、書斎の机に目をやると男が机に向かって書き物をしながら頭をガシガシと掻きむしり、そしてため息をつくのが目に入ったそうだ。驚いたが丁度その時、奥さんがご主人が寝ているのではないかと気にして部屋へ入って来たらしい。
たまに、朝までソファーで寝ていたという事があったようで、時々奥さんは寝る前に気になって部屋を覗きに来るらしいのだ。
すると、男の姿はもう無く、夢だったのかと思ったのだった。けれどもその後、夢なのか現なのか、夜に同じ男が机で書き物をしながら唸っている姿を何度も見る事になったお祖父さんは、もしかするとあの万年筆のせいなのではないかと思ったようだ。
何故なのかというと、古物を取り扱う仲間の間では取り扱った古物に関して、不思議な話をよく聞く事があったからだ。どうしても気になったので万年筆を持ってきた男性に改めて電話で事情を話して何か心当たりはないかと聞いた所、もしかするとそれは弟の幽霊なのかもしれないという事だった。
男性の弟は就職はしたものの三年足らずで仕事を辞めてしまった。どうやら仕事場でいやな思いをしたらしいという事しか分からなかった。どこをどうしてそうなったのか、外に出て仕事はしたくないので小説家になると言い始め、部屋に引きこもり小説を書いていたそうだ。当然、どうこうなる物でもなく時折自宅の部屋で癇癪を起し物を壁に投げつけるような音がしていたそうだ。
趣味は万年筆の蒐集で、作家になりたいと思った事と関係するのかもしれない。
三年間働いたお金で万年筆を買い集めたようだ。
そして、ある日、部屋から出てこない事を心配し、鍵の110番を呼んで鍵を開けてもらったら、中で死んでいる弟を見つけたのだった。
食事もあまり摂らず、精神を病み、最後は自死ではなかったものの、緩やかな自死の様なものだったかもしれないという話だった。
兄にとっても家族にとっても、その様な品は残して置きたくはなく、処分したのだという話だったという。
もしも迷惑をかけるのならば、引き取りお寺にでも持って行くと言われ、どうしようか考えていた矢先、坂上くんのお祖父さんは突然倒れて入院したという。
坂上くんはお見舞いに行った時に、お祖父さんにその話をされたそうだ。
そこで、彼は尾根山くんに相談しようかどうか迷っていたそうなのだ。何故かって、尾根山くんは川石の不思議な出来事を彼に話ていたからだった。
「ねえ、でもなんで息子の名前と間違えたの?普通だったら考えられないけど」
ちょっと気になったのでそこの所を聞いてみた。
「ああそれ、僕も気になって聞いたんだけど、アレクサンドル・デュマの父親側であるペールは三銃士を書いた人で、息子は息子で椿姫を書いた作家らしい」
「・・・う~ん、どっちも有名だっていうのは分かるけど、それにしたってすごいミスだよね。ちゃんと確認しろって感じ」
「確かにね。間違えて販売した後、ペールの万年筆もだいぶ遅れて再販売したらしい」
「そっか。でもまあ収集する側からすれば美味しい話だったよね」
「フィスの万年筆に気づいたお祖父さんはすごく嬉しかったらしいんだけど・・・」
「査定して買い取りしたんでしょ?」
「そうなんだ。でも、持ってきた男の人は万年筆に興味のない人だったらしくて、何でもいいから言い値でいいって。それでさっさとお金と引き換えに万年筆を渡して帰ったらしいんだよ」
「不思議な話だな。自分の物じゃなくて親族の物を整理したって感じか・・・?」
百家くんが言った。
「一応、犯罪だとか関係していたら困るし、身分証の確認と連絡先も貰ってるらしいけど、お祖父さんもその万年筆をどうやって手に入れたのか経緯を知りたくて聞いたらしい。そしたらその人の亡くなった弟が集めていた物で、詳しくは知らないって事だった」
「まあ、遺品をどうするかは家族の勝手だろうけど、それならなおさらお金にはこだわらないのにどうして手元にも置かないっていうのかが不思議だよな。まあ、あとは手元に置きたくない理由があるんだろう・・・それが今回の相談の理由か?」
「う~ん、そうとも言えるかなぁ?」
尾根山君は複雑そうな表情で首を傾げて言った。
「じゃ、詳しい内容を話してくれよ」
「わかった。え~と最初は、学校で坂上がなんか元気がなくて、気になったからどうしたのか聞いてみたらさ、祖父ちゃんが病気で入院しているっていうんだ、それで詳しく話を聞く事になったんだけど・・・」
もともと坂上くんはお祖父ちゃん子で、学校帰りもお祖父さんがお店を開けていればお店へ立ち寄り、家の方に居れば家の方へ行くという生活をしていたそうだ。学校近くの古い商店街の並びにひっそりとある小さいお店で、仕事を辞めてから知り合いの不動産屋さんに店舗を紹介してもらい建物を購入したという事だ。
坂上くんのお父さんは内科のお医者さんで、隣町に大きい病院があるらしい。お祖父さんはその病院の先代で、息子にさっさと病院を譲ると、趣味だった骨董にのめり込んだのだそうだ。
病院の次男に生まれた坂上くんは、医者になる気はまったくなくむしろお祖父さんの趣味の骨董が気になった。そんな事でお祖父さんとは友達のように仲が良いらしい。
お祖父さんの家はその近くの住宅地にあり、徒歩で通える距離に老夫婦で住んでいた。
そして、坂上くんのお祖父さんが万年筆を引き取った日の夜に話は戻り、家でじっくりと万年筆を見ようと思い書斎の机の上にそれらを置いていたのだそうだ。
書斎にはゆっくりできるようにソファーのセットも置いてあり、そこでお祖父さんはうたた寝をしてしまった。目が覚めたのは人の気配がしたからだった。ふと、書斎の机に目をやると男が机に向かって書き物をしながら頭をガシガシと掻きむしり、そしてため息をつくのが目に入ったそうだ。驚いたが丁度その時、奥さんがご主人が寝ているのではないかと気にして部屋へ入って来たらしい。
たまに、朝までソファーで寝ていたという事があったようで、時々奥さんは寝る前に気になって部屋を覗きに来るらしいのだ。
すると、男の姿はもう無く、夢だったのかと思ったのだった。けれどもその後、夢なのか現なのか、夜に同じ男が机で書き物をしながら唸っている姿を何度も見る事になったお祖父さんは、もしかするとあの万年筆のせいなのではないかと思ったようだ。
何故なのかというと、古物を取り扱う仲間の間では取り扱った古物に関して、不思議な話をよく聞く事があったからだ。どうしても気になったので万年筆を持ってきた男性に改めて電話で事情を話して何か心当たりはないかと聞いた所、もしかするとそれは弟の幽霊なのかもしれないという事だった。
男性の弟は就職はしたものの三年足らずで仕事を辞めてしまった。どうやら仕事場でいやな思いをしたらしいという事しか分からなかった。どこをどうしてそうなったのか、外に出て仕事はしたくないので小説家になると言い始め、部屋に引きこもり小説を書いていたそうだ。当然、どうこうなる物でもなく時折自宅の部屋で癇癪を起し物を壁に投げつけるような音がしていたそうだ。
趣味は万年筆の蒐集で、作家になりたいと思った事と関係するのかもしれない。
三年間働いたお金で万年筆を買い集めたようだ。
そして、ある日、部屋から出てこない事を心配し、鍵の110番を呼んで鍵を開けてもらったら、中で死んでいる弟を見つけたのだった。
食事もあまり摂らず、精神を病み、最後は自死ではなかったものの、緩やかな自死の様なものだったかもしれないという話だった。
兄にとっても家族にとっても、その様な品は残して置きたくはなく、処分したのだという話だったという。
もしも迷惑をかけるのならば、引き取りお寺にでも持って行くと言われ、どうしようか考えていた矢先、坂上くんのお祖父さんは突然倒れて入院したという。
坂上くんはお見舞いに行った時に、お祖父さんにその話をされたそうだ。
そこで、彼は尾根山くんに相談しようかどうか迷っていたそうなのだ。何故かって、尾根山くんは川石の不思議な出来事を彼に話ていたからだった。
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