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林の中での攻防戦
1 鑑定とは?
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私は林の出入り口が気になって仕方がなかった。
振り向こうとするも、クルトさんの怒声が飛ぶ。
「カーリ、振り向くな。落としちまうだろうが」
クルトさんは私を背負ったまま走っていた。
周りを警戒し、レーナとヨハン、ベンが遅れないか確認をしつつ、林の出入り口から見えない方向に走る。
林の炎も、まだまだ鎮火していない。
王族の人達は、この火を放置するつもりなのだろうか。
それとも、大挙して消しに来るのか……。
まだまだ全てが未知数で、私達の安息は程遠かった。
「……ク…ルトさん、俺……もう……」
ベンが限界が来たのか、膝から崩れた。
「仕方ないか、よく走った。カーリ、ベン掴まれ」
クルトさんは、私を背に乗せたまま、ベンを荷物を持つ様に片手で横抱きに持った。
そこからまた走り出し、レーナとヨハンがバテたところで止まった。
休憩出来る所を探し、近くの岩壁がある地点までは私も歩いた。
ヨハンはこの辺りに詳しいらしく、湧き水がある所に行くという。
場所が狭く足場も悪く、五人で行くのは難しいという事で、私とクルトさんは後から行く事になった。
「……ここまで来れば大丈夫よね」
近くに火の手は見えないが、前回の事がある。
私は不安を払拭したくて聞いたのだが、クルトさんの意見はそれに反して厳しかった。
「いや、あっちの火の勢いはまだ収まっていない。それに出口の件、さすが王族が連れてるだけあるな。あの中に鑑定持ちがいた。俺は無意識に跳ね返したが、どれだけ見られたかわからん」
「鑑定って人にも使えるんですか?」
物に使うイメージが強く、人に使われる事があるということが抜け落ちていた。
私にスキルで付いているのは、多分未知の食材や道具を日本にある物と比べながら予測したり、試したりしたからかな?
「かなりの高魔力者の魔法だ。魔法を習う者にとって取得は難しいぞ」
「魔法なんですよね。スキルじゃなくて」
「ああそうだ。スキルで鑑定など聞いたことがない。俺が知っている中では、どの本にも魔法の分類だったな」
私のステータスには、スキルの分類で入っているんだけど。
そういえば、まだ使った事がなかった。
私のも、人に使えるだろうか?
「私、鑑定使ってみたいです。クルトさんいいですか?」
「ハハ、魔法が使える者にとって、鑑定と収納は憧れの魔法だからな。だが余程じゃないと俺には無理だぞ」
そんな余裕の態度で、クルトさんは応じてくれた。
私はクルトさんに向け手を伸ばし、唱えた。
「鑑定」
女神のスキル程ではなかったが、私の中から何かが抜け出す感じがした。
「ほら、やっぱり無理だろ。俺は鑑定を使われたら分かるからな」
クルトさんには、何も感じなかったらしい。
「まぁ、試してみる事はいい事だ。少しとはいえカーリは魔法が使えるからな。操作は全く出来ていないが、これから頑張れ!」
あまりにも私が愕然としていたからだろう。
クルトさんは、見当違いにも励ましてくれた。
「クルトさーん、レーナとヨハンが呼んでるよ」
ベンがクルトさんを呼びに来て、二人レーナ達の所に向かった。
私は一人まだ呆然としていた。
え?何これ?クルトさん一体何者?
振り向こうとするも、クルトさんの怒声が飛ぶ。
「カーリ、振り向くな。落としちまうだろうが」
クルトさんは私を背負ったまま走っていた。
周りを警戒し、レーナとヨハン、ベンが遅れないか確認をしつつ、林の出入り口から見えない方向に走る。
林の炎も、まだまだ鎮火していない。
王族の人達は、この火を放置するつもりなのだろうか。
それとも、大挙して消しに来るのか……。
まだまだ全てが未知数で、私達の安息は程遠かった。
「……ク…ルトさん、俺……もう……」
ベンが限界が来たのか、膝から崩れた。
「仕方ないか、よく走った。カーリ、ベン掴まれ」
クルトさんは、私を背に乗せたまま、ベンを荷物を持つ様に片手で横抱きに持った。
そこからまた走り出し、レーナとヨハンがバテたところで止まった。
休憩出来る所を探し、近くの岩壁がある地点までは私も歩いた。
ヨハンはこの辺りに詳しいらしく、湧き水がある所に行くという。
場所が狭く足場も悪く、五人で行くのは難しいという事で、私とクルトさんは後から行く事になった。
「……ここまで来れば大丈夫よね」
近くに火の手は見えないが、前回の事がある。
私は不安を払拭したくて聞いたのだが、クルトさんの意見はそれに反して厳しかった。
「いや、あっちの火の勢いはまだ収まっていない。それに出口の件、さすが王族が連れてるだけあるな。あの中に鑑定持ちがいた。俺は無意識に跳ね返したが、どれだけ見られたかわからん」
「鑑定って人にも使えるんですか?」
物に使うイメージが強く、人に使われる事があるということが抜け落ちていた。
私にスキルで付いているのは、多分未知の食材や道具を日本にある物と比べながら予測したり、試したりしたからかな?
「かなりの高魔力者の魔法だ。魔法を習う者にとって取得は難しいぞ」
「魔法なんですよね。スキルじゃなくて」
「ああそうだ。スキルで鑑定など聞いたことがない。俺が知っている中では、どの本にも魔法の分類だったな」
私のステータスには、スキルの分類で入っているんだけど。
そういえば、まだ使った事がなかった。
私のも、人に使えるだろうか?
「私、鑑定使ってみたいです。クルトさんいいですか?」
「ハハ、魔法が使える者にとって、鑑定と収納は憧れの魔法だからな。だが余程じゃないと俺には無理だぞ」
そんな余裕の態度で、クルトさんは応じてくれた。
私はクルトさんに向け手を伸ばし、唱えた。
「鑑定」
女神のスキル程ではなかったが、私の中から何かが抜け出す感じがした。
「ほら、やっぱり無理だろ。俺は鑑定を使われたら分かるからな」
クルトさんには、何も感じなかったらしい。
「まぁ、試してみる事はいい事だ。少しとはいえカーリは魔法が使えるからな。操作は全く出来ていないが、これから頑張れ!」
あまりにも私が愕然としていたからだろう。
クルトさんは、見当違いにも励ましてくれた。
「クルトさーん、レーナとヨハンが呼んでるよ」
ベンがクルトさんを呼びに来て、二人レーナ達の所に向かった。
私は一人まだ呆然としていた。
え?何これ?クルトさん一体何者?
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