恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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林の中での攻防戦

3 林の変化

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 この湧き水?ぬるま湯?は飲めるようで、私は喉を潤した。
 クルトさんが、先程呼ばれた時にヨハンと二人で確認したそうだ。

「水ならいつでもクルトさんが、出せそうなのに……」

 そんな疑問を私が言うと、クルトさんは苦笑混じりに答えてくれた。

「何があるか分からんからな。傭兵は外での飲み水確保の為、可否が舌で出来るように訓練するもんだ。非常事態では、出来るだけ魔力は温存しておきたいからな」

 そんな会話をして、息抜きが出来たところで戻ることにしたのだが私には大変だった。
 クルトさんが行きの際に言ったように、足場が悪いのだ。
 滑りそうになりながらも、慎重に歩いた。

「おい、転けるなよ。危なっかしいなぁ、次よろめいたら担ぐからな」

 などと言われながらも、最後まで歩いて皆のいる所まで戻ってきた。

「カーリ、転ばなかったか?」

 ニヤニヤしながら聞いてくるベンの足を、ふらついた振りして踏んでやった。ふんっ!



「クルトさん、これからどうする?」

 ヨハンが尋ねると、クルトさんが唸りながら意見を言っていた。

「何かいつもより地面が水っぽいんだよな……この辺りは延焼を免れているとはいえ、何らかの変化が起きてるみたいだ」

「クルトさんもそう思うんだな。変に蒸し暑くなっているし、火が出ただけの変化なのか、どうなのか……」

「それに、この辺りの小さな獣は、慌てていない感じがするのよ。火がまだ回っていないからなのか、何かがあるのかしら」

 クルトさんとヨハン、レーナが岩壁の陰で意見を出し合っている。
 私とベンは、それを大人しく聞いていた。

 私は林の中に入った事は、あまりなかった。
 ベンもここに来て間がないので、二人とも変化があると言われても分からないのだ。

 そんな中、ふと呼ばれている気がした。
 振り返ってみると、林の風景が一変していたのだ。

「え?何これ……ベン、林が変な事になってる」

 私は隣にいるベンに呼びかけ、ベンも振り返った。

「!?すげーな、これ」

 熱心に話し合っている三人は、気付いていない様だった。

「クルトさん、レーナ、ヨハン見て~!」
 
 先程見た間欠泉なんて目じゃない程の吹き出す水は、さながら消防車のホースの水の様。
 あちらもこちらも、林の木よりも高い水が溢れだしている。

 あの吹き出す水の中には、消火剤でも入っているのだろうか?
 あれだけ勢いのあった炎が、自然と消えていった。

 火が消えると、水の勢いも収まった様で見えなくなる。
 焼け跡は酷く未だ煙はあるが、本来の林の姿を取り戻しはじめていた。

 私達はただただ、自然の力に圧倒されていた。

「……林の慈悲だな」

 ポツリとクルトさんが呟いた。
 林の慈悲とは、言い得て妙な感じだ。
 でも、もっと早く力を発揮してくれたら……なんて思うのはとても贅沢な事なんだろうなぁ。


「慈悲の神様って、凄いんだね」

 私の何気ない言葉は、不思議な沈黙をうんだ。

 クルトさんは、凄い苦い顔をしている。
 レーナとヨハンは、ため息をついていた。
 ベンは「何言ってんだコイツ」と思っているのが、如実に顔に出ている。

 私は、何か変な事を言っただろうか?と首を捻った。

「カーリって、本当に神様関係ってだめなのね。この世界に慈悲の神様なんていないわ。勝手に神様増やしたら教会に怒られるわよ」

 本当に困った子ね、とレーナが苦笑混じりに笑った。





 …………こけしもどきな女神が、愛と慈悲と豊穣を司っていたから、てっきり慈悲の神様もいると思っただけなのよ~。



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