恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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林の中での攻防戦

4 別れ

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 クルトさんとレーナとヨハンは、今意見が対立している。

「まだ動くべきじゃない。数日、せめて二日は様子を見るべきだ」
「しかしなクルトさん。ここに居て何が出来る?一旦洞に戻るべきだ。あそこなら、大きな荷物が残っている」
「そうよクルトさん、ここは何もないわ。残して来た荷物は回収したいわね」

 多分、どちらの意見も正しいのだろう。

 レーナとヨハンは、ここは小さな獣が多く出ると言っていたし安全という訳ではない。
 それに火が出るまでいた洞の状態を確認して、使える物は持ち出したい。
 今後の生活の為に、必要だから。

 クルトさんは全く予測できない先が見えない状況に、無闇に動く事自体を警戒している。
 林の状態だけでなく、林の出入り口の騎士達の事も気にしているのだ。
 捜索されていないのならいいが、洞の中で見つかっては逃げられないから。
 四方に逃げられるこの場所の方が、生存率が高いと判断している。


 三人の話は平行線で、私は口を挟めずにいた。

「お前達は、騎士の意味不明な理論や執念深さを知らなすぎる。一旦火が付いたら、さっきの林の火よりも厄介だ。せっかくここまで逃げて来たんだ。見つかるリスクは避けるべきなんだよ!」

「クルトさんは心配し過ぎなのさ。俺達は、一旦洞を見てくる。な~に十分注意するさ。俺達の方がクルトさんより、この林との付き合いが長いんだ。伊達に狩人をしていない、大丈夫さ」

「そうよ、クルトさんは心配し過ぎなのよ。私達のような取るに足らない者に、騎士様が無駄な時間をかけないわよ」

「だがここはかなり林の奥だが、洞は林の出入り口との距離は短い。気まぐれに、捜索される可能性だってあるんだ。止めておけ!」

 睨み合い激しく言い合い、話し合いではなく喧嘩の様相を呈していた。

「俺もレーナとヨハンについて行く。荷物持ちは多い方がいいだろ?」

 そんな中、ベンは自分の意見を言った。
 これには三人同意見だった様で、一斉に反対意見が飛んだ。

「ここまで来るのにバテたベンは無理だ。大人しくしてろ」
「ベンには厳しいぞ。ここで待ってなさい」
「ベンの気持ちは嬉しいわ。でも体力不足だから今回は諦めてね」

 三人の勢いに、ベンは盛大に拗ねた。

「ちぇっ、役にたとうと思ったのに……」
「その気持ちだけても嬉しいわ」

 レーナはそう言ってベンを慰めている。
 ベンは図らずも、三人の上がっていた熱を一時冷ましていた。

 
「カーリだってそう思うだろう?」

 ベンは私に話を振ってきたが、私の意見は違っていた。

「私は足でまといだから……」

 足の遅い私では、道中迷惑をかけるだけだ。
 ここまでもクルトさんに、ずっと背負って貰っていたのだから。
 力にはなりたいが、逆に足でまといな私はこの件で言える事なんて何もない。
 私は俯きながら、小声でそう言うしかなかった。
 そんな声でも、一旦激しい声が止んだ場所では響く。

「自分の立場を分かってるじゃないか。カーリは弱い、俺から離れるな」

 クルトさんはそう言って、とても苦い顔をした。
 その時、彼が何を思っていたのかは分からない。
 私はただ、出来るだけ邪魔をしないようにしたいと思った。


 結局三人の話は平行線で、喧嘩別れの様になった。













 ―――そしてこれが、レーナを見た最後となった。



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