29 / 35
林の中での攻防戦
5 スキルを使って
しおりを挟む
クルトさんと私、ベンは岩壁のところにもたれていた。
クルトさんは、周囲の警戒の為。
何かあって岩壁に追い詰められた時、どう動けるかの地形を見ているとさっき言っていた。
私とベンは邪魔をしない為に、ただもたれていた。
その無言の時間で私は、レーナとヨハンが無事に洞までたどり着けるようにと願った。
二人を心配する時間が、少しだけ過ぎていった。
「さて、こうしていても仕方ないな。俺は獣を狩ってくる。お前らは水汲みとまき拾いと、休憩するそこらを平坦にしておけ。あまり遠くに行くなよ。声が聞こえる所に俺もいるからな。何かあったら大声で知らせろ」
そう言い置いて、クルトさんは狩りに向かった。
「途中で、レーナとヨハンが引き返してくるかもしれないよな。多めに用意しようぜ。カーリ、水が入る物何か持ってる?」
私は斜め掛けしていたカバンから、コップ二つと小さな小鍋を出した。
「小さっ、もう少し大きかったら良かったのにな」
「一人用だからね。贅沢言わない。そういうベンは何か持っているの?」
無言で見せた物は、大きなコップ一つだけだった。
「ベン、人の事言えないじゃない」
「……仕方ないから、何往復もするしかないよな」
私達はまず分担を決め、ベンが水汲みをする。
私がこの辺りの石を除け平坦にし、時間が余ったら手頃なまきを拾い集める事にした。
私は手早く、場所を平坦にしていく。
そして教会の物置から収納した中から、何か水を溜められる物はないかと漁った。
殆どが物の前に『壊れた』と付いている。
でも、壊れた状態は詳しく書いてなかった。
さすがに収納された状態から、鑑定はできないみたい。
分からないからと、一旦取り出して見る事にする。
こけしもどきの女神は、収納した物を覚えているから出し入れは自由に出来ると言っていた。
出て来たのは壊れた寸胴鍋。
多分、炊き出しに使っていたのだろう。
給食の配膳で用意された鍋の何倍も大きな物だった。
だが、完全に底が抜けていた。
鑑定でも、『現在:利用不可』『未来:修理不可・再利用可能』と出る。
水をためるだけでも、全く使えそうになかった。
他にも、色々と探して取り出したが、全部無理だった。
ちょっと泣きそう。
何故、こんなものを物置に入れておくのよ。
さっさと処分すれば良いのに……。
日本での生活だけだったら、そう思った壊れたたくさんの物。
でも、ここの人達は未来表示にある様に、修理に出したり、素材として新しくしたりする。
いずれ使えると、たまって行ったんだろう。
ちなみに、一度鑑定した物は収納してからも、詳しい状態が分かる様になっていた。
この機能が分かっただけ、良しとする事にする。
こけしもどきな女神に出会って二日。
まだ全然、能力の検証が出来ていないからね。
私の持っているスキルで、今使えそうなのは大工かな。
金物関係はないから、修理は難しいだろう。
まぁ、簡単に修理出来る物は直して使うよね。
桶とか樽とかは残念ながらなかった。
じゃあ、作るとなると……無理だよね。
なんせ、道具も出てきたのが錆びたノミ一本だけだった。
何かないかと収納の表示を見ていると、木材があった。
昨夜こけしもどきとの話中に、試しに収納した物。
難しいかもしれないけど、木に穴を掘ったら水が溜められるよね。
私は、手頃な木材を取り出した。
誰かが切り出していたのか、平坦な方を底と決める。
木槌はないので、これも固い木材で代用。
数日、水が溜められたらそれでいい。
かなり乱暴なやり方だけど、無いものは仕方ない。
私だって、役に立ちたいもの。
その思いで錆びたノミを木に打ち付けた。
【スキル、大工が発動しました】
目の端に、そう表示が浮かんだ。
錆びたノミはそうとは思えないような働きをし、固い木材も立派な木槌代わりになった。
いや、それ以上だった。
最初目安で打ち込んだ数箇所を、いざ強く打ち込んだ。
すると、まるで掘られる場所が分かっているみたいに、中身がくり抜かれた。
底が突き抜ける事もないなんて、なんて便利なんだろう。
スキルって凄いよね。
私の魔法は、残念性能だけど。
その後、くり抜いた中身部分を収納しようとした。
「…………え?入らないよ?」
何度も繰り返し、気合を入れてみたが入らない。
昨日昼間でも、手のひらに乗せた木の実は一つだけ入れられたのに。
試しにこれから使う、外側部分を入れようとしたがだめだった。
「もしかして、分かれたら無理って事?」
これ、壊れた物を修理したら入らないとかありえるよね。
「これでどうだ。入れ!」
ちょっと意地になってしまった。
くり抜いた部分を戻して、両方一緒に入れると少しの抵抗を感じたが入った。
「やった!入った」
木屑はいいのか、と思ったが多少の変化ならいいのかもしれない。
「なぁカーリ、何やってんだ?」
ベンの声で、検証は一旦ストップする事にした。
ベンに収納から出す所を見られないようにしながら、力作を取り出す。
「どう?これなら水溜められないかな、と思って作ってみたの」
「カーリ、すげーな。俺汲んだ後どうするんだと思って、めちゃくちゃ慎重に水持ってきたんだぞ」
それで随分、時間がかかったんだ。
「今度は多少零しても平気だよな。行ってくる」
手持ちの水を全て入れ、ベンは颯爽と再度水を汲みに行った。
その後何気なく、くり抜いた中身部分を再度収納すると、今度はするりと入った。
「一体、条件は何?」
ほんと、便利なんだか不便なんだか分からないよ……。
でも制約があるなら、それも込みで使いこなすしかないよね、と思いなおした。
クルトさんは、周囲の警戒の為。
何かあって岩壁に追い詰められた時、どう動けるかの地形を見ているとさっき言っていた。
私とベンは邪魔をしない為に、ただもたれていた。
その無言の時間で私は、レーナとヨハンが無事に洞までたどり着けるようにと願った。
二人を心配する時間が、少しだけ過ぎていった。
「さて、こうしていても仕方ないな。俺は獣を狩ってくる。お前らは水汲みとまき拾いと、休憩するそこらを平坦にしておけ。あまり遠くに行くなよ。声が聞こえる所に俺もいるからな。何かあったら大声で知らせろ」
そう言い置いて、クルトさんは狩りに向かった。
「途中で、レーナとヨハンが引き返してくるかもしれないよな。多めに用意しようぜ。カーリ、水が入る物何か持ってる?」
私は斜め掛けしていたカバンから、コップ二つと小さな小鍋を出した。
「小さっ、もう少し大きかったら良かったのにな」
「一人用だからね。贅沢言わない。そういうベンは何か持っているの?」
無言で見せた物は、大きなコップ一つだけだった。
「ベン、人の事言えないじゃない」
「……仕方ないから、何往復もするしかないよな」
私達はまず分担を決め、ベンが水汲みをする。
私がこの辺りの石を除け平坦にし、時間が余ったら手頃なまきを拾い集める事にした。
私は手早く、場所を平坦にしていく。
そして教会の物置から収納した中から、何か水を溜められる物はないかと漁った。
殆どが物の前に『壊れた』と付いている。
でも、壊れた状態は詳しく書いてなかった。
さすがに収納された状態から、鑑定はできないみたい。
分からないからと、一旦取り出して見る事にする。
こけしもどきの女神は、収納した物を覚えているから出し入れは自由に出来ると言っていた。
出て来たのは壊れた寸胴鍋。
多分、炊き出しに使っていたのだろう。
給食の配膳で用意された鍋の何倍も大きな物だった。
だが、完全に底が抜けていた。
鑑定でも、『現在:利用不可』『未来:修理不可・再利用可能』と出る。
水をためるだけでも、全く使えそうになかった。
他にも、色々と探して取り出したが、全部無理だった。
ちょっと泣きそう。
何故、こんなものを物置に入れておくのよ。
さっさと処分すれば良いのに……。
日本での生活だけだったら、そう思った壊れたたくさんの物。
でも、ここの人達は未来表示にある様に、修理に出したり、素材として新しくしたりする。
いずれ使えると、たまって行ったんだろう。
ちなみに、一度鑑定した物は収納してからも、詳しい状態が分かる様になっていた。
この機能が分かっただけ、良しとする事にする。
こけしもどきな女神に出会って二日。
まだ全然、能力の検証が出来ていないからね。
私の持っているスキルで、今使えそうなのは大工かな。
金物関係はないから、修理は難しいだろう。
まぁ、簡単に修理出来る物は直して使うよね。
桶とか樽とかは残念ながらなかった。
じゃあ、作るとなると……無理だよね。
なんせ、道具も出てきたのが錆びたノミ一本だけだった。
何かないかと収納の表示を見ていると、木材があった。
昨夜こけしもどきとの話中に、試しに収納した物。
難しいかもしれないけど、木に穴を掘ったら水が溜められるよね。
私は、手頃な木材を取り出した。
誰かが切り出していたのか、平坦な方を底と決める。
木槌はないので、これも固い木材で代用。
数日、水が溜められたらそれでいい。
かなり乱暴なやり方だけど、無いものは仕方ない。
私だって、役に立ちたいもの。
その思いで錆びたノミを木に打ち付けた。
【スキル、大工が発動しました】
目の端に、そう表示が浮かんだ。
錆びたノミはそうとは思えないような働きをし、固い木材も立派な木槌代わりになった。
いや、それ以上だった。
最初目安で打ち込んだ数箇所を、いざ強く打ち込んだ。
すると、まるで掘られる場所が分かっているみたいに、中身がくり抜かれた。
底が突き抜ける事もないなんて、なんて便利なんだろう。
スキルって凄いよね。
私の魔法は、残念性能だけど。
その後、くり抜いた中身部分を収納しようとした。
「…………え?入らないよ?」
何度も繰り返し、気合を入れてみたが入らない。
昨日昼間でも、手のひらに乗せた木の実は一つだけ入れられたのに。
試しにこれから使う、外側部分を入れようとしたがだめだった。
「もしかして、分かれたら無理って事?」
これ、壊れた物を修理したら入らないとかありえるよね。
「これでどうだ。入れ!」
ちょっと意地になってしまった。
くり抜いた部分を戻して、両方一緒に入れると少しの抵抗を感じたが入った。
「やった!入った」
木屑はいいのか、と思ったが多少の変化ならいいのかもしれない。
「なぁカーリ、何やってんだ?」
ベンの声で、検証は一旦ストップする事にした。
ベンに収納から出す所を見られないようにしながら、力作を取り出す。
「どう?これなら水溜められないかな、と思って作ってみたの」
「カーリ、すげーな。俺汲んだ後どうするんだと思って、めちゃくちゃ慎重に水持ってきたんだぞ」
それで随分、時間がかかったんだ。
「今度は多少零しても平気だよな。行ってくる」
手持ちの水を全て入れ、ベンは颯爽と再度水を汲みに行った。
その後何気なく、くり抜いた中身部分を再度収納すると、今度はするりと入った。
「一体、条件は何?」
ほんと、便利なんだか不便なんだか分からないよ……。
でも制約があるなら、それも込みで使いこなすしかないよね、と思いなおした。
0
あなたにおすすめの小説
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる