恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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林の中での攻防戦

8 再度発動したスキルは?

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 私達が岩壁に並んで一息ついていると、ベンが帰ってきた。

「うわっ!一体何があったんだ」

 そりゃあ、驚くよね。

 岩壁の前に広がっていた木々は、なぎ倒され切り刻まれている。
 地面も、ボコボコに波打っていた。

 知らない騎士達が何人も、ぐるぐると縄で縛り上げられている。
 ベンが水を汲みに行っている間に、周りは変わりすぎていた。

「やっと帰ってきたか。せっかく汲んできて貰ったところ悪いが、場所を変えるぞ」

 クルトさんは、伸びをしてそう言い放った。

「へっ?場所変えるのはいいけど、ヨハンは歩けるの?」
「歩ける、歩けないじゃない。悪いがヨハン、いいよな」

 かなり強引に、クルトさんは決めてしまった。

「ヨハン、ゆっくりでいいからあっちの方角に向け、二人を連れて先に歩いて行け」

 クルトさんは、私達が来た方向と逆の方を指差し指示をする。

「クルトさんは、行かないの?」
「あぁ、俺はまだする事があるからな。後で合流する」

 そう言って、ちらりと捕まっている騎士達を見た。

「分かった、二人とも行くぞ」

 ヨハンは簡潔に答え、私とベンを連れて指示された方に歩き出した。
 そして、クルトさんや騎士達が見えなくなると、方向転換をした。

「ヨハン、方向違わないか?」
「これでいいんだよ。騎士達が、逃げて探索魔法を使ったら別だが、目視では誤魔化せるからなら。クルトさんと、予め決めておいた」

 いつの間に……私は全く気づいていなかった。

 ヨハンが連れて来てくれた場所は、見晴らしの悪い奥まった洞だった。
 周りは鬱陶とした木々に囲まれ、一見すると見落とす様な隠れた場所になっていた。

「ここは、相手にも見つかりにくいけど、こちらも相手を見つけにくいからな」

 元々は、大きな獣の住処だったという。
 この洞に着いた私達は、まず洞の中を軽く掃除した。
 少し落ち着いた所で、クルトさんが合流してきた。

「色々と吐かせてきた」

 そう簡潔に言い、ヨハンと何やら話し込み始めた。

「カーリ、ベン済まないが、食料になりそうな物と水の確保を頼む。ただ、あまりここから離れるなよ」

 私達にはそう言って、洞から追い出した。
 私達には、聞かせなくない話だろう。
 レーナの事なら私も聞きたかったが、まず夫であるヨハンの判断と思ったのかもしれない。

「カーリ、木の鉢は置いていったよな。また作る?」
「クルトさんがどれ位あそこに残るか、分からなかったからね。使いやすい木があったらかな」

 そんな話をしながら洞から少し行くと、林の慈悲で湧いた水だろうか。
 木々の隙間から、水が緩く噴き出していた。

 近くにはいつも料理で使う、固い渋い実が成っていた。

「……この木の実さぁ、食べるのってここだけなんだよな。俺も林の側で育ったけど、忌み嫌われていたんだ」

 そんな話、始めて聞いた。
 レーナは出会った時から、当たり前の様に調理していた。
 だから、この世界では普通の食材だと思っていた。

「理由とかはあるの?」
「さぁ、俺は知らない。昔からだって」

 固いからかな?
 でも、煮れば普通に食べられた。
 最初から、もっと美味しかったらいいのに。
 そう思って、木に触れたのがいけなかったのか。

「カーリ、危ない、上!」

 ベンの声に驚いて、私は上を見た。
 ポトポトポトと、実が勝手に落ちてきた。

 咄嗟にキャッチ出来たのは、一つきり。
 ベンも手を出して、受け止められたのは一つ。
 最後一つは、無残に地面に落ちて弾けた。

「これ、この香りって……」

 二人、顔を見合わせた。
 知っている香りだったのだ。

 【スキル、完熟豊穣が発動しました】

 目の端に見えたスキルで、私はやらかしたのだと知った。

 そして、実がなっていた木の枝の部分だけ、跡形もなく消えていた。




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