恋人だと思っていたのは私だけだったようです~転移先で女神から後付けでスキルを貰えたので、気分を切り替え何とかやっていきます

ゆうぎり

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林の中での攻防戦

9 罪の実

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 固い渋い実が私の女神から貰ったスキルが発動し、甘い実にクラスチェンジした。

「これ、どうする?」
「私、上手く説明出来る気がしない」
「俺も……」

 とぼとぼとベンと一緒に洞へ帰る途中、私達は話しあった。
 ベンは、この実について詳しくない。

 私はベンのいる所で、しっかりと鑑定を使おうかどうか迷っていた。
 こっそり唱えてみたが、バグっているのか表記が変だったからだ。

 伏せられた文字が、所々散りばめられている。
 他にも『罪の』とか『罰』とか『悲しみの』って言葉が踊っていた。
 普通の果実の説明に、そんな物つかないよね。


「もしかして、偶然熟した実が落ちてきただけ……とか」
「カーリ、それ本気で言ってる?」
「ほら、林の慈悲で湧いたと思われる水のせいとか…………」

 ベンの冷たい視線が、痛いです。

 これ二回目だものね、無理だよね。
 一回目だって、状況が状況だったから詳しく話す事がなかっただけ。
 すぐに林自体が、不思議な現象を起こしたから。

「とりあえず、水も汲んだからクルトさんとヨハンに検証してもらおう。カーリの言う水のせいなら、ボコボコ落ちてきて危ないからな」

 言葉に全く力が入っていないベンは、そう思ってはいない言葉を口にした。

 洞に戻り、実を渡すとヨハンとクルトさんは、全く別の反応を示した。

「凄いな、そんな事があるなんて」

 素直に感心するヨハンは、林ってまだまだ不思議がありそうだよなと納得していた。

「厄介な……」

 苦々しげに呟き、顔を歪めるクルトさん。
 この林に来て数日、よくクルトさんはこの表情を浮かべる。
 
 クルトさんに水を確認してもらったが、こちらは問題なし。

 問題なのは、果実の方。
 前回も今回も、簡単に実が弾けた。
 クルトさんは慎重に、二箇所ナイフで穴を開けた。

「これは多分だが、落下の速度に弱いのかもしれないな」

 味見用にと、少しだけコップに注いで一口飲んだクルトさんは、また苦い顔をした。
 好みの味じゃ、なかったのかな?

「はぁ~~~、厄介な」

 顔に手を当て、盛大についたため息の後、一つの実の全て果汁をヨハンに飲むように指示した。
 残り一つを三人で分けたんだけど、何故この分け方なんだろう。
 疑問に思いながらも、分けられた甘い果汁を飲む。

 甘味最高~、身も心も力が湧くよね。
 私はほくほくしながら、嬉しそうに飲んでいた。
 しかし他の三人はというと、顔を引きつらせている。

「どうしたの?三人とも、甘いの苦手だったとか」

 男の人は、甘い物が苦手な人も多い。

「……いや、別に苦手ではないが、これは……なぁ」

 この味が、駄目なんだろうか。

「カーリは何とも思わないのか?」
「ん?凄く美味しいよね。生き返る~って気になるけど……どうかしたの?」

 何故皆、残念そうな顔をするんだろう。
 久々の甘味に、幸せ一杯な私は気づかなかった。

 こんな女神のスキルで、変わった成り方をした実が、普通の実である筈がなかったのだ。

 鑑定もバグではなく、私の力不足か女神の意志か。
 本当に知らなければならない事がなんなのか、私は分かっていなかった。

 ただ、クルトさんが声にならない程小さく呟いた「罪の実」という言葉だけが、ハッキリ意識に残った。
 




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