ドラゴンさんの現代転生

家具屋ふふみに

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152話

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 再集合場所である清水寺の本殿にて記念撮影をした後、飲食可能なスペースへと移動し昼食を取る。
 今回の場合は事前に捨てられる容器を使ってお弁当を用意する事になっており、当然ながら奏の分は瑠華が用意した。

「ほれ奏」

「ありがとー」

 鞄から取り出したお弁当を奏へと手渡せば、満面の笑みを浮かべて感謝を伝えながら受け取る。その淀みない手馴れた一連の流れを眺めていた雫は、見慣れた光景に密かに苦笑を零した。

「てっきり今回はかなっちが作るかと思ってた」

「んー…それもいいなとは思ったんだけど」

「何やら嫌な予感がしたのでな…」

 別に奏は料理が出来ないという訳では無い。だが普段の料理とお弁当の料理は少し勝手が異なる。流石にそう悲惨な事にはならないとは思うが、それでも瑠華の脳裏に嫌な予感が過ぎったので今回も瑠華が作る事になった。

「瑠華っちの予感当たりそー」

「まぁ瑠華ちゃんのそういう勘が外れた事無いねぇ」

「……本来は外れて欲しいのじゃが」

 全てを理解し演算出来てしまう瑠華にとって、予想とは結果だ。外す事の方が難しい。だがそれでは面白みが無いのだ。新鮮さが無いと言ってもいい。

(贅沢な悩みではあると理解しておるのだがな…)

 本来瑠華の、レギノルカの役割を考えれば、予想外が発生する事は絶対に避けるべきだ。それを理解しつつも、やはり未知という存在ほど心躍らせる物が無いのもまた事実で。

「ちなみに瑠華っちの予想ってどんなの?」

「厳密な予想はしておらん。ただ嫌な予感だったというだけじゃよ」

「ふぅん…ま、勘ってそんなもんだよね」

 気を取り直して、漸く昼食に手を付け始める。

「ん? 瑠華ちゃんこの唐揚げ味変えた?」

「よく気付いたのぅ? 漬け込む時間と調味料の量を変えたのじゃよ。どうじゃ?」

「美味しいよ!」

 嘘偽りない真っ直ぐな賛辞は、作り手としてはこれ以上無い程喜ばしいものだ。思わずふわりと優しく微笑む瑠華だったが、パクパクと夢中でお弁当を食べる奏は残念ながら気付かなかった。まぁ気付いたら気付いたで悲惨だったであろうが。

「…瑠華っちは言わずもがなだけど、案外かなっちもどっこいどっこいだよね」

「それが瑠華ちゃんを惹き付けてる要因でもあると思うけどね…」

「惹き付けってよりかは…もはや親目線な気がする。心配で目が離せない的な」

「あー…」

 散々な言われ様である。だがしっかりと聞こえている瑠華としては強ち間違いでも無く、否定する事は出来なかった。

 ◆ ◆ ◆

 昼食を終えれば、一行はバスに乗り込んで今回宿泊する予定となっている旅館へと向かう。一日目はそこまでハードな日程にはならないよう観光は午前だけとなっており、午後は旅館にて過ごす事になっている。

「前に泊まった【白亜の庵】みたいな感じかな?」

「雰囲気は似ておるじゃろうな。じゃが今回の部屋は四人部屋故に、勝手は異なるじゃろうて」

「あそっか。下の子達のお世話も無いし、前より瑠華ちゃんゆっくり出来そ? ていうかして」

「そだぞー。瑠華っちは今回お仕事なんて殆ど無いんだから」

「う、うむ…」

 今回の修学旅行における瑠華の仕事は実行委員としてのものだけであり、普段の様な小さい子達の世話は無い。それでも何か余計な事を抱え込もうとするならば、縛り付けてでも止めてやると奏は一人決意を固めるのだった。

 バスに揺られ暫く。無事にバスは今回宿泊する予定の旅館に到着した。
 バスから降りた後は一旦邪魔にならない所に集合して点呼を取り、諸注意を受ける。

「夕食は十八時。入浴は十九時から二十一時の間に済ませて下さい。消灯時間は二十二時です。他の宿泊者の方に迷惑をかけないように行動して下さい」

 話が終われば事前に決められていた室長がそれぞれの部屋の鍵を受け取り、いよいよ旅館の中へと足を踏み入れる。

「ようこそお越し下さいました。担当の者が順番にお部屋へとご案内致しますので、少しこちらでお待ち下さい」

 着物を身に纏った旅館の中居さんが、それぞれのグループを順番に案内していく。そして瑠華達の順番になった時。

「私が今回ご案内させて頂く久遠くおんと申しま…」

 久遠と名乗る中居さんの言葉が止まる。その視線の先には、瑠華の姿が。

「あっ、奏です! こっちは瑠華ちゃん!」

 それに対して瑠華の容姿に驚いたのだと思った奏が、明るい声で自己紹介をする。しかし瑠華は、久遠が言葉を詰まらせた理由に薄々気付いていた。

(…僅かながら神気を纏っておる。考えるに巫女の血筋か)

 まだ瑠華の正体に気付いた様子は無い。だが普通の人とは違うという事だけは理解してしまっているようだ。

「……はっ、あ、す、すいません…こ、こちらです…」

 漸く再起した中居さんが、何処と無くぎこちなさを感じさせながらも案内を再開する。そしてその脳内はと言えば。

(なん、な、えっ!? 何ですかあの子!? 絶対人間じゃないでしょ!?)

(混乱しておるのぅ…)

 混乱し過ぎてぐちゃぐちゃになりつつある思考を正確に読み取った瑠華は、その余りの取り乱し様に内心苦笑した。

 内心ガッツリ動揺しつつもしっかりと仕事は全うし、無事に瑠華達は今回の自分達の部屋へと案内された。
 そこで部屋の設備の簡単な紹介と館内設備の説明を行い、一礼して中居さんが部屋を後にする。

「なんかすっごい動揺してたね」

「瑠華っちの容姿が珍しいからじゃないの? 今日あの狡いスキルは使ってないんでしょ?」

「狡……まぁそう思われるのも無理は無いな。今日は使っておらんよ。先生方が見失っては一大事になりかねんからのぅ」

「それもそっか。でも嫌な事とか、目線が気になるとかがあったら言ってね? そんなに力にはなれないかもだけど…」

「私も瑠華っちに嫌な思いはして欲しくないし、それは同意見だね」

「私もだよ。二人と比べるとあんまり親しい訳じゃないけど…」

「感謝する。しかし案ずるな。その程度ならば慣れている」

 それは瑠華の紛れもない本心だ。けれどそうして自分を心配してくれているという事実は、これ以上無く嬉しいものだった。




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