彼らの物語

ことは

文字の大きさ
1 / 2

鈴の音色のレクイエム

しおりを挟む
「さっさとしなさいよこのグズ!」

「申し訳ございません。」

「ちょっと!しゃべらないでくれる!?バイキンが飛ぶじゃない!」

「………。」

「あんたごときが私の言葉を無視しないでくれる!?」

 怒るなら意見を統一してくれないかなぁ。あと、『喋る』くらい漢字で話しなよ。そんなことを思っても、バチは当たらないと思う。

 実母は私が3歳の時に他界した。あまり記憶に残っているわけではないけれど、優しい母だった。
 母が亡くなったあと、父は浮気していた女と再婚した。母を悼む気持ちなんて欠片も持ち合わせていない。親戚の人はみんな母を素晴らしい人だったと言うけれど、父と結婚したことは母の最大の過ちだったと思う。

 再婚相手の女の第一印象は、化粧ゴテゴテのおばさん。私より一つ下の女の子を連れていた。彼女もまた腹黒で、食器を割っては私のせいにしてくる。
 私はこの女二人と父から虐待を受けている。暴力、食事抜きは日常茶飯事。食事をまともに取れるのは、学校の給食くらいだ。しかも今は冬休みだから、最後にまともな食事をしたのは何日前だったかな………。

「ちょっと!私の話聞いてたの!?」

 しまった。考え事に没頭して聞いてなかった………。

「申し訳ございません。聞いておりませんでした。」

「あなたごときが私の話を聞かないなんて!私が話をしている時は集中して聞きなさいと言ったでしょう!」

 バシン、という音と共に右頬に感じる衝撃。痛い。

「ふん、私は女神のように優しいからもう一度話してあげるわ。感謝なさい!」

 いや、あなたが女神なんて何かの間違いだと思う。あと、その話し方は何?お嬢様気取りか何かかな?

「ありがとうございます。」

「今日クリスマスでしょ。私と娘とあの人とパーティーをするから家を出ていきなさい。安心していいわよ、明日覚えていたら家に入れてあげるから。」

「え、あの、それは……」

「いつあなたが口答えを許されたの?さっさと出ていきなさい!」

 問答無用で外に出されてしまった。今は夜中の11時。天気は大雪、最低気温は-3℃。
 今までしぶとく生き残ってきたけれど、今回は死ぬかもしれない。もう眠たくなってきた。こういう時に目を閉じたら死ぬんだっけ。
 死ぬのは怖いし、嫌だ。けど、お母さんのところに行けるって考えたら別にいいかな。
 そして私はそっと目を閉じた。


 その日の夜、その町にどこからか鈴の音色が響いた。その町の住人全員が聞いたその音は、少女を弔う鎮魂歌レクイエム
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

【完結】ドレスと一緒にそちらの方も差し上げましょう♪

山葵
恋愛
今日も私の屋敷に来たと思えば、衣装室に籠もって「これは君には幼すぎるね。」「こっちは、君には地味だ。」と私のドレスを物色している婚約者。 「こんなものかな?じゃあこれらは僕が処分しておくから!それじゃあ僕は忙しいから失礼する。」 人の屋敷に来て婚約者の私とお茶を飲む事なくドレスを持ち帰る婚約者ってどうなの!?

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

愛されない女

詩織
恋愛
私から付き合ってと言って付き合いはじめた2人。それをいいことに彼は好き放題。やっぱり愛されてないんだなと…

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...