上 下
190 / 912

会いづらい

しおりを挟む
 俺は結局母さん達の部屋に逃げてしまい、そのまま風呂を貸して貰った。

 そのままそこで眠ろうとしたのだが、流石に母さんが「男の子なんだから間違いの一つくらい起こしなさい! 和希は真面目過ぎるの!」と言われてしまったので自室の前へと戻ってきてみたのだが...。

「会いづらいな...」

 そう思いこむと余計な事まで考えてしまう。

(...やばい、なんて謝ろうか。いや謝る必要あるのか? いつも見たいな普通な感じで部屋に入ればいいだろう! ...本当に大丈夫か? あの結美だぞ? もしかしたら怒ってるかもしれない)

 大きく深呼吸をした後に俺は部屋に入った。

 入った瞬間にバッと振り返る結美。

「ごめんねカズ君!!! ちょっと先走っちゃったかもしれない! 許して!!!」

 本気の声で謝ってきたのでかなり困った。

「いや...俺の方こそ悪かったな。お前の気持ちは嬉しいんだけどさ。まだ俺たち高校生だし、まあそこは考えても付き合って行こうぜ」

「...うん」

 彼女は静かにそう呟くと、俺をベッドへと誘ってきた。

「えへへ...。カズ君と一緒に眠るの久しぶりだね♡」

「おっ? そうだな。あれはいつだったかな...」

「もう! 忘れちゃったの? 小学生の低学年の時だよ」

「ああ、確か俺の家で泊まりたいって結美が言い出したんだっけか」

「そうそう、あの日のお母様のコロッケの味はいまだに覚えているよ。美味しかったな...」

 そう言いながら俺の方に手を伸ばして抱き締めてくる結美。

「あっ、おい」

「えへへ♡ さっき逃げた罰で~す♡ 今日一日だけでいいから私の抱き枕になってください♡」

 そう言いながら俺をぎゅっと抱きしめ続ける彼女。

「カズ君の匂い...。優しい匂い...」

 疲れが溜まっていたのか彼女はそのまま眠ってしまう。

「...全く。昔と同じこと言ってら」

 全く同じ言葉を聞いた俺は静かに笑いながら電気を消すのだった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

「無気力傭兵の異世界剣戟譚」

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

【完結】±Days

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:6

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:4,237

素顔の俺に推し変しろよ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:162

処理中です...