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第五章 ずっとお守りします
これは恋なのでしょうか2
しおりを挟む「っ、やっぱり確認ではないじゃないですか」
「んー、さっきは本当にそうだったんだけど……」
耳元に近づいて……。
「リゼが可愛い顔をするのが悪い」
意地悪にそう微笑むから今度は心臓の音がうるさい。その音がルノ様にまで伝わって起きてしまうのじゃないかと心配になるほどに。
(そんな意地悪も嫌ではないのは、まんまとクレイセント様の思惑に嵌っているのだろうな)
――――簡単な女。なんて脳内で自分を罵ってみるが、抗えない。美しい微笑みが私のすべてを捉えて離さないのだ。
月白色の髪が揺れて、綺麗な黒の模様が月に照らされている。先ほどは暗く感じていた空が、その光景を引き立てるように星を輝かせている。
「愛してる」
ゆっくりと柔らかな唇が触れて、その熱に酔う。
(耳までおかしくなったみたいだ)
すべてが嬉しくて胸を締め付ける。もうこれが忠誠心によるものではないのは分かっていた。
すべてが終われば、この気持ちは許されるのだろうか。
そう利己的な欲望が自分の中の戒律を崩していく。温かな手に触れてその模様を愛しくなぞった。
◇◇◇
「それは恋ですわ!! ……っんぐ!!」
パチーンと口を塞いで黙らせる。もごもごと暴れているが仕方ない。可愛らしいロザリー様は暴れていても可愛らしいままなのが羨ましくもなる。
「あの、そういうことははっきりと仰らないでください」
「なぜですか? こんなにも素敵なことなのに!」
「そ、そうですか。いままでそういうことに関心がなかったので、なんだか落ち着かなくて気持ちが悪いです」
「まぁ! そんなことはありませんよ、気持ちに素直になって受け入れましょう!」
ぎゅっと手を握られてさらに落ち着かない。それに住み慣れていた屋敷の庭園で自分がこんな女子トークを繰り広げているのも落ち着かない。
ここはラルディーニ侯爵家の庭園。ロザリー様からルノ様と一緒にご招待いただいたのだ。クレイセント様もぜひとのことだったが、今日は帝都から少し離れたところで陛下と視察の予定が入っていた。
『どうしてリゼはいかないの?』
そう抱きつこうとするクレイセント様を避けながら、なんとか断ったのだ。本当ならば、護衛騎士たるもの主君のそばにいるべきなのだけれど……。
(女性に軽く相談したくて招待の方を優先したのは、失敗だった)
爛々と瞳を輝かせるロザリー様に苦笑してしまう。ルノ様とアランは護衛騎士たちとともに例の森の花畑に向かった。そわそわとする私にロザリー様の直感が働いたようで、すぐに二人に花畑に行くよう勧めたのだ。女子の直感も怖い。
「それで、どのようなところがお好きなんですの?」
「ふ、ふぁ!? す、すすす好きっ……」
初めての感情に戸惑いすぎて、最近はクレイセント様の顔を直視できないという現象に陥っている。
こんなことがずっと続けば、騎士の片隅にも置けない。
(なんとか早急に解決しなければ。我慢するしかない)
「やはり……これは……こ、ここ恋なのですか……」
声がどもる。なんと小っ恥ずかしいものなのだ。真っ赤になって小さくなる私とは反対にロザリー様が大きく鼻息を漏らして詰め寄ってくる。
「もちろんですとも! 私もアルフェント様に初めてお会いしたときは雷に打たれたようでしたもの!!」
「か、雷……」
(あのゴリラにか? 拳で殴られたとか?)
「私が男性に囲まれて困っていたときに颯爽と間に入ってくださったのです。無言で追い払ってくださった彼の大きな背中がいまでも忘れられませんわ」
「へぇ」
ロザリー様が頬を染めてべらべらと馴れ初めを語る。聞いていられない。なんでゴリラとの馴れ初めをいちから聞かねばならないのだ。肉親だからかなおのことゾワゾワとする。
「リゼ様もそういった忘れられないことがたくさんおありなのでは?」
「忘れられないことですか」
幼い頃からクレイセント様を見ているから、そのようなものはたくさんあることはある。
最初の頃の作られた笑顔や、警戒心がほどけた柔らかな笑顔、それに大人になってから意地悪に成長してしまった笑顔。どれもが輝かしくて自然と私もつられるように微笑んでしまう。
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