好き、これからも。

あちゃーた

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「………よ、よし…」


ブツブツ独り言を言いながら部屋の扉を開けた。

玄関で靴を脱ぎ、ソロソロと口を開く。


「た、ただいま~!」


なるべく明るい声で帰ったことを知らせる。

そして考える。

ど、どの流れで返事したらいいんだろ?

ああぁぁ!

なんで僕、プラン考えずに帰ってきたんだ!?

この後言うのもおかしいよね…。

か、会話の流れをどうにかして…。

こう、そういう感じに…。

一人試行錯誤していると声がかかった。


「帰ったのか?お帰り」


奥の扉が開き、マー君が顔を出していた。

よ、よし!

言えっ!

今だ!!

そう思ったのに……マー君の顔を見るとだんだんと口が閉じていく。

体が怖気付いていくのが分かる。

だって、考えたら僕がどれだけ贅沢なこと言ってるのか分かってくる。

優しくて僕のことを大切にしてくれて…。

比の打ちどころがないと言っても過言ではないエリートαの彼。

そんな彼の提案を鈍臭くてお馬鹿な僕が…断る…。

しかもその理由が叶わない恋をしているときたものだ。

自分で自分に呆れてしまう。


「どうした?」


玄関で動こうとしない僕にマー君が駆け寄ってくれる。

やっぱり優しい。

優しいし、僕のこと……好き、なんだよ…ね?

チラッと顔を上げるとマー君の心配気な顔と目が合う。

目を合わせるとさっきの何倍も体が強張る。

……僕、緊張してるんだ。

初めてだったから。

心から好きって伝えてくれた人が。

初めてだったから。

想われてるって感じたのは。

思わず目を逸らしてしまう。

これ以上見たら……マー君を利用してしまいそうだった。


「大和?」


心配気なマー君声。

僕なんかのこと…本当に想ってくれてるんだ。



なんで?



その疑問が頭を埋める。


「マー君、なんで僕のこと好きなの?」


無意識に出てしまった言葉。

聞いていいのか、いけないのか…。

ずっと悩んでいた。

マー君の周りには他にも沢山のΩが寄ってきてるだろうし、僕なんかよりも可愛くて良い子なんていくらでもいたはずだ。

なんで、僕?

息を吐き、意を決してマー君の瞳と目を合わせる。


マー君、僕、良いところないよ。

悪いところばっかり。

こんな僕のどこがいいの?

その問いの答えを求めて目を向けた…のに。



「ははっ、突然過ぎだろ」


マー君は笑っていた。

何に笑ったのか分からなくてポカンとする僕にマー君は続ける。


「あのな、俺、大和のこと、初めて会った時からめちゃくちゃ守ってやりたいって思ってたんだ、まぁ、一目惚れってやつ?」


予想していたよりもあっけらかんとした返事に驚く。

歯を見せて無邪気に笑うマー君はそんな僕の頭を撫でながら言う。


「俺な、お前が何となく好きな人がいること知ってた」


ドクン…。


冷や汗が流れた。

今…マー君、何で言ったの?


頭がフリーズする。


心臓が大きく波打つ。

僕が好きな人がいること…知ってた?


マー君が??


いつ、どこで知ったの??


マー君…知ってて僕に想いを伝えてくれたの?


頭を埋め尽くす疑問に応えるようにマー君が口を開いた。


「好きだから…ずっと見てたから…分かるよ、お前さ、二人で出掛けた時も、エッチなことしてる時も…俺と誰かを重ねてるって」



「っ!」



……図星だった…のかもしれない。

マー君の瞳をまともに見られなくなった。

いや、正確には…見てはいけない気がしてならなかった。


「ま、マー君、ぼ、僕…、その」


必死に何か言おうと口を開く。

そんな僕を諭すようにマー君は笑って言った。


「無理して言わなくても良い…俺が黙ってればよかったんだけど、お前のこと諦められなかったんだ、ただ、それだけ」


「マー君…」


「返事はしなくていい…分かってるから、お前、優しいから言い辛いだろ?」



…………なんで最後まで笑っていうの?

マー君、僕が傷つかないようにしてくれてるの??

僕のこと…知ってて想いを伝えてくれたの??


マー君の陽だまりのような優しさが胸に伝わる。


僕のこと、全部お見通しの彼はそっと抱き締めてくれた。


なぜか…彼は分かっていたから。


僕が泣いてしまうってことに。



「……うっ、ヒック…、うぅ…、マー君、まーくん」


「分かったから、泣くなよ…泣き虫め」


マー君、何でそんなに優しいの?


僕、そんな優しさを貰えるほど、価値ないんだよ。


そんな想いを胸に抱きかかえながらマー君に暫く抱きしめられていた。


ズビズビとなく僕の背中を撫でる手に安心する。


僕の涙が大分収まるとゆっくりとマー君が話し出す。


「なぁ、最後にお願い一つ聞いてもらってもいいか?」


「…うん、何でも聞くよ、マー君、まーくん…」


ギュウギュウと抱きしめられる。

僕もソッと抱き返す。






「最後に…いい?」


彼の言った言葉の意味が…すぐに分かった。


「いいよ…」


そう呟き、顔を上げてマー君を見る。


瞳と瞳が見つめ合う。


今度こそ……目を逸さなかった。


僕はゆっくりと彼の顔に手をあて、じっくりとその美貌を眺めた。


いつ見てもかっこいいその顔に…ソッと自分の唇を重ねる。


驚いた顔をした彼はその仕返しだというかのようにキスを深く深くしていく。




「んっ、ふっぅ…んちゅ…んんっ、あっ」




いつもより激しいその行為に僕も……きっと彼も溺れていった。
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