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20:ブロンベルト侯の来訪

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王宮が賑やかになり、そして使用人たちは慌ただしくしていた。

プロンベルト侯とその息女が来訪したからだ。

「これが高名なエルパンシェーヌ宮殿の庭園ですね」

「お気に召しましたか、クリスティーナ嬢」

クラウディアはプロンベルト侯の息女であるクリスティーナに宮殿を案内していた。

「とても。細部にまで趣向を感じられる美しい場ですね」

クリスティーナは淑やかな令嬢であり、祖国が同じでもあるからか終始穏やかな時間であった。

「そう言ってもらえると嬉しいわ。ここのガゼボは祖国の様式を模して、陛下が造ってくださったの」

今いる場所は王妃の庭園の中でもクラウディアのお気に入りのガゼボだ。この特別な場所に案内するほどにはクリスティーナのことを気に入っていた。

「ルミランダですか?」

「ええ。ご存知なのね」

「父が妃陛下のお話をなさるので」

「おかしな話じゃなければいいのだけれど。昔はお転婆だったのよ」

女同士の内緒話をするように、どこか童心に帰ったようにお喋りに花をさかせた。

そんな女の花園に無遠慮に男たちがやってきた。

「お転婆なんて可愛いものではない。あれはじゃじゃ馬というんだ」

「変なことは言わないで頂戴、フリッツ」

現れたのはプロンベルト侯と国王だった。

楽しげに並んでいることから、会談はうまく纏まったのだろう。

「事実じゃないか。君に脅されて一緒に木登りをして叔母上に叱られたことは一生忘れないさ」

「陛下の前でやめてちょうだい」

「ディアと侯は従兄妹であったな」

「はい。陛下もお気をつけください、鋼鉄製の靴を履かねば歩けなくなりますぞ」

プロンベルト侯は母方の従兄であり、幼少期から交流が深く、時代が時代であれば結婚する仲であったろう。

「忠告いたみいる。だがディアと一緒になって長くなる。心得ているとも」

アルフレッドの言葉に時間の経過を感じた。

15歳で嫁ぎ、祖国で過ごした時間よりも長い時間をこの国で過ごしている。もうすでに自分はこの国の人間なのだと改めて実感した。

「ハハハ。これは一本。妃陛下が気に入るわけです。私も陛下のことが大変好きになってしまいました」

プロンベルト侯は意味のわからないことを言って笑った。

「そう言えば、ジルベール殿下が犬を欲しがっていると聞きました。新大陸でも珍しいものが手に入りましたのでお贈りいたしましょう」

「それはありがたい。息子たちも交えてぜひ食事でも」

「それは嬉しい誘いです。フレシミアの天使と名高い王女殿下にもお会いしてみたかったのです」

「ははは。それこそ、ディアに似てお転婆な子かもしれぬぞ」

「お転婆姫さまのお相手はなれておりますゆえ」

プロンベルト侯は自分の娘をみてそう言った。

クリスティーナは恥ずかしそうに「お父さまったら!」と言った。



プロンベルト侯らを歓待している裏では、ジョレアン公爵を追い詰めるように外堀が着実に手を回していた。

そうしてチェックメイトとなった時に、プロンベルト侯らのために開かれた宮廷パーティーで、クロードが予想外の行動を取ったのだった。

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