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6:壊れた何か

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アヒムは顔を真っ青にした。

振り向くと地面に落ちて割れた磁器がある。

これらの値段は想像もできないほどであり、そして王のコレクションでもある。そんなものを割ってしまったのだ。

「ああ、これは余の気に入りだったのだが」

王の顔がみれなかった。

足がすくんで、恐怖で体が震えた。今にでも泣き出しそうだ。

「アヒムよ」

「どうかお許しください!」

アヒムはその場に跪く。いや座り込むといった方が正しいだろう。

じんわりと股間のあたりが湿った。失禁してしまったのだ。

「余は先ほど言ったな。一つ割るかわりに余の相手をしろと」

許してほしければ、アヒムは王の夜の相手をしなければならないというのだ。

アヒムは驚きと恐怖でパニックにおちいっており、どうするべきか頭が回らなかった。

「しかし、そなたが割ったのは余のお気に入りだ。一度の相手で釣り合うことではない」

割れたのは藍色で絵付けをされた大きめの壺であった。

その価値は今日はじめて磁器をみたアヒムよりも王の方が正しいだろうと思った。

「な、なんでも致します!」

脳がパニックになって正常な判断ができず、ただ助かりたいという思いで一杯だった。

だから、なぜ王が磁器の側でアヒムが抵抗するであろう行動をとったのか、なぜアヒムの腰に回っていた腕をはずしたのか、そんな疑問はうかばなかった。

「ああ、アヒムよ。なんと哀れで愛おしいのだ。粗相をしてしまったのか」

王は笑い声をあげて、まるで劇の役者のように立ち回る。

そしてアヒムの染みたズボンと濡れた床を見下ろして足をおろす。

「あ゛ぁーッ!!」

王の足はアヒムの股間を踏みつけた。

決して強すぎはしないが、刺激とかすかな痛みを感じる力加減だ。

ぐにぐにと踏みつけられるその痛さに、そして小水と濡れたズボンが生み出す羞恥の音に堪えた涙がこぼれた。

「服を着替えなければな。夕食は共にとることにしよう。その後、そなたの部屋へまいろう」

王が愉しげに今後の予定を決めていく。

すでに思考は停止して、声も出ずに涙が溢れるだけのアヒムは王にされるがままだ。

王は手を叩いて侍従らを呼び寄せた。

「磁器の破片は全て集めて工房に置いておけ。床の掃除も忘れるな」

呼ばれた彼らは、割れた磁器と床に広がった尿、そして王に手をとられて隣に立つ涙した失禁男という惨状に関して何もきかずに命令にしたがった。

「余の靴も汚れてしまったな」

王は言葉とは裏腹に笑みをうかべていた。

この瞬間、アヒムはこの男によって壊される予感がした。


王につれられたまま、見知らぬ部屋につれられた。おそらく王の居室だろう。一際豪華な調度品に囲まれている。

「脱げ」

その横暴な命令にしたがうしかなかった。いまだにアヒムの脳は単純な思考しか受け付けず、羞恥心と命令に従うことしか考えられなかった。

震える手でコートやベストを脱ぎ、ボタンやバックルを外してズボンを脱ぐ。太ももまである長いブラウスと白いストッキング姿になるが王は満足しない。

「全てだ」

ストッキングをぎこちなく不器用に脱いで、ブラウスも下着までも全てを脱ぎ捨てる。一糸まとわぬ姿となった。

恥じらいがあるので、手で陰部を隠すが王にどけろと一蹴される。

「そなたの肌は全て白く美しいのだな」

まるで彫刻や壺などを鑑賞するかのうように王はアヒムの回りを歩き隅々まで見る。

「体毛は薄いのだな。だがそこの毛は残念だ」

王が指したのはアヒムの秘部を隠す茂みであった。

「剃ってしまおう。そうすれば、そこも決め細やかな美しい白肌がみれるだろう」

そう言ってアヒムをソファに座らせると、人を呼んだ。

中年の男は王に命じられるまま、アヒムの陰毛に剃刀を当てて剃りはじめた。男はどこかなれた手つきであり、きっと王は何人かの女をこのように扱ったのだろう。

「決して傷をつけるな」

「はい」

中年の男の声はかすかに震えていた。

アヒムはなくなっていく毛をみながら、惨めさに歯を食い縛った。

足を広げさせられて、知らない男に陰部をさらけ出して毛を剃られている。そして恥辱にたえるアヒムを王は観劇でもするかのようにみていた。

それほど時間もかからずにアヒムの茂みは全て剃られ、王の予想通り白い肌と性器が露になる。

「そのような顔をするな。すべては不出来な弟子をもち、そして不注意で余の気に入りの磁器を割ったそなたの責だ。ほら見てみよ。こんなに美しい」

王はアヒムを鏡の前に立たせた。

そこに映ったのは、全てをさらけ出した裸の男だった。これの何が美しいのかアヒムにはわからなかった。それよりも恥ずかしく屈辱的だった。

「そなたの美しい肌はいつまでも見ていたいが、誰にも見せたくない独占欲もある。さあ、服を着よう」

王は新しい服を持って来させて、着せかえ人形のように服を着せさせる。そして王もアヒムの装いにあわせて着替えを行った。

そして仕上げとばかりに、アヒムの唇にまるで絵付をするように紅を指した。

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