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第拾伍話-異人

異人-8

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 ミシェルは厭那から取り調べを受けている最中であった。
「凶器はどこへ隠したんだ!」
「I don’t know」ミシェルは冷徹に答えた。
「それで隠し通せるとでも思っているのか!!」厭那は机をバンッと叩く。
「あなた、長四郎から話を聞き出せなかったからって私に八つ当たりするのはどうなの?」
「ぬわにぉ~」
 顔を真っ赤にし、怒りで身体をプルプルと震わせる。
「チワワみたいね」
「それな」
 声がしたほうを向くと、長四郎と燐、絢巡査長が立っていた。
「どうしてここに?」驚いた表情の厭那は長四郎に質問した。
「依頼人のせいでえらい目にあったから、一言文句言ってやりたくてね」
「そんな事、許可できるか!」
「許可して頂かないと困ります」絢巡査長はそう言って、厭那を取調室からつまみ出した。
「お、おい!」
 厭那の声が閉まったドアの向こうから聞こえるが、そんな事はお構いなしに事件について話始めた。
「ここへ来たということは、私の無実を証明してくれるって事で良いのかしら?」
「どこまでも図々しい奴だな」
 ミシェルのその態度に長四郎はあきれ返る。
「合理的と言って欲しいわね」
「へいへい」
「あの後、一体何があったんですか?」燐が事件について切り出した。
「そこから話さなくてはいけないわね」
 ミシェルは道前の死体を発見するまでの行動を長四郎達に語った。
「犯人ですね。としか言えない行動だな」聞き終えた長四郎はそう感想を述べた。
「そんな事言わない!!」と言いつつ、燐もまた心の中では長四郎と同意見であった。
「私はそんな事聞きたい訳じゃない」
「分かってますよ。それで道前が帰宅してから道前に接触して来た人物は居なかった?」
「居なかったわ」
「会社の人とかもですか?」
「そうよ」
「大体わかった」
「いや、何も分かってないでしょ」
 そんなこんなでミシェルへの取り調べを終えた長四郎達は今、デリバリーで頼んだ弁当を食べながら捜査会議をしていた。
「取り調べの成果はどうやったと?」一川警部が聞き込みの成果を尋ねた。
「大したものは得られませんでしたよ」
 長四郎はそう答えながら、唐揚げを口に入れる。
「あんたが変なところで話を終えるからでしょ」
「しょんにゃきょとはにゃいみょん(訳:そんな事はないもん)」
 長四郎は口を含みながら、答える。
「汚い」燐はバッサリと切り捨てる。
「そんな事より、これからどうします?」
「ん~」と少しの長考の後、「現場百回という事で現場に行くか」と絢巡査長の質問に答えた。
 斯くして、4人は事件現場の道前の部屋へと場所を移した。
 部屋に入った最初の印象は、部屋の中が荒れていないということであった。
「なんか、争った感じはないね」燐が最初に口を開いた。
「そだねー」
 燐の言葉に長四郎は、適当な返事をしながら部屋を物色し始める。
 テレビの裏やキッチンの戸を開け閉めしては、事件に繋がるような証拠がないかを調べる。
「ここら辺じゃなさそうだな」
 長四郎はそう呟くと、寝室へと移動した。
 寝室は、ダブルベッドとお洒落なスタンド照明だけが置かれているだけであった。
「ここも、成果なしかもな」
 長四郎は期待もせずウォークインクローゼットの戸を開けると、そこには傭兵時代に撮られたであろう写真や迷彩柄の戦闘服そして、戦地で書き記したであろう日記が置いてあった。
 さながら、道前宗介の記念館の展示品コーナーとでもいうべき場所になっていた。
 長四郎は一番上に置いてあった日記を手に取り、内容を確認し始めた。
「ねぇ、何かあった?」燐がそう尋ねながら、寝室に入って来る。
「いや、何もない」と答える長四郎は読んでいた日記を隠すようにズボンに挟み入れ「行こう」と声を掛け部屋を出ていくのだった。
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