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ゾンビ③
しおりを挟むゾンビ防衛作戦本部で、撮影された動画確認が見終わった。
「本部長、やはりグールなる魔物は確認出来ませんでした」
「ならば今夜が危ないな・・・」
「本当にそんな魔物が居るのでしょうか」
「ゾンビが壁を壊せると思ってるのか」
「そんな・・・否定しているわけではありません」
「壊された壁の傷跡を見せてやれ・・・この爪跡が証拠だ。ゾンビに、このような爪があったか!」
俺は苛立っていた。当初のグールより強くなってるはずだ。
進化タイプだから人をゾンビにしてパワーアップしてもおかしくないなのだ。
「それで土になったゾンビの数はどれくらいだ」
「確認されたのが41035人です」
「思っていたより少ないな」
「更にライトの増設をしてるので、次回から充分な被害を与えると予想してます」
「ここ以外はどうなってる」
その時だ。
「ダンジョンを発見しました」
ここに居た者は立ち上がり、モニター前に集まった。
あ!本当にあった。
穴の周辺は、赤いままだ。
「暗い穴に何か光ったぞ」
それは気味悪い2つの眼だ。
「ブチュン」と画面が消えた。
なにをした。俺の勘は、あれが今回のボスだと睨んだ。
中国側からもちらほらゾンビ目撃が聞かれだした。
橋の爆破や壁の建設も急ピッチに進んでと報告も聞いた。
一部の外国記者がスクープとして流した。
夜に逃げて来た住民を、威嚇して入国を禁止している動画だ。
しかたなく住民は、隠れて1夜を明かすしかなかった。
助かるケースもあれば、その後の消息が分からない場合もあった。
しかし今回は、各国の政府も文句を言う事もなかった。
明日は我が身だからだ。
更なる増設工事で、ライトがずらりと並んでいた。
「隊長、このAIによる自動照射って信用できると思いますか?」
「その為のテストだ。失敗した場合は、自動照射を切ってお前が手動操作するだけだ」
「分かってますよ」
「これが成功すれば、全てが切り替わる予定だ」
もう夕焼けが広がる安全地帯を赤く染めようとしていた。
壁の上に立つ軍人たちに緊張が走った。
「太陽が沈むのか・・・」
「気合を入れろーー」と指揮官の声が響いた。
ドローンで偵察しているチームから「ゾンビだ!ゾンビが来たぞ!」とスピーカから発せられた。
ライトを急いで照らす兵士の顔がこわばった。
用意していたペットボトルの水をごくごくと飲みだした。
「ゾンビが見えたぞ」
「効果がでる距離まで待て」と指示がでた。
もうライトを握る手は、汗がにじみ出ていた。
「今だクロス作戦だーー」
3人1組で作戦が実施された。
指示者が照射するポイントを指示して、2人はそのポイントを照らす作戦だ。
ライトがダブル照射されたゾンビは、もだえて後に倒れて崩れだした。
「ポイントB1だ」
ダブル照射されたポイントには、ゾンビがひしめいていた。
ダブル照射の効果はすぐに現れた。中にゾンビを盾にするがその盾も崩れてもらえだした。
AI照射も上手くいってるようだ。
俺はゾンビを鑑定し続けた。
あ!命令を発したグールが近くに居るぞ。
それも大勢だ。
今日を決戦と考えたのか・・・
俺は決断した。
自分自身に隠蔽魔法を発動。
そのまま大きくジャンプしながら、暗黒吸刀を振りながらゾンビ集団へ飛び込んだ。
何度も何度も斬った。
斬られたゾンビは、一瞬で土くれになった。
ゾンビの能力が奪われたからだ。
【再生能力習得】と表示された。
思っていた通りだ。
行く場所はグールだ。
能力を習得したから容赦なく「光よ、照らせ」と唱えた。
パッと明るくなった。
10メートル内のゾンビは浄化されて消えた。
それ以上はもだえ苦しんでいる。
そんなゾンビをほったらかして、ひたすら走り続けて。
俺が行く前は、ゾンビが割れる形で道が開いた。
「とうとう見つけたぞ!」
え!なんだと・・・人間のなりをしてるが体がでかいな・・・それに男女の性別もはっきりと見分けられた。
あの口か見える尖った歯は、異様過ぎるぞ。
成る程な・・・あれな一噛みで人間を殺せるはずだ。
それに奴らは、ボンネットや板などで急ごしらえの盾を持っていやがった。
全身を隠せる程の大きさだ。
前夜の出来事で対策を考える知能が備わってる証拠だ。
グールが大きくジャンプしてきた。その数は20体だ。
雷魔法で纏った暗黒吸刀をグールに向かって振った。
1振りで12体を土くれにしてやった。
返す1振りで残りも始末だ。
力と素早さがアップした感覚が伝わってきたぞ。
なんだと!地面にも潜んでるのか・・・そんなのはお構いナシだ。
地面に向かって振った。雷刀が地面の中を一掃した。
もう斬って斬りまくった。残りは200体ぐらいだ。
なんだと逃げるのか・・・あれ!急に立ち止まったぞ。
その前には、黒い女が立ってた。髪もロングで黒髪だ。
目だけが赤く、ボッキュボンの女だ。
「逃げる事は許さない」
振返ってグールは襲ってきた。
俺の暗黒吸刀が無数に切裂いた。
伸びた雷刀が生きてるようにグールを斬っていた。
最後のグールを斬った。
そして、あの女を鑑定した。
【ヴァンパイア】
不死にてアンデット最強の存在
「あたしの名前はマリア、あなたの名前は・・・」
え!話す魔物なんて聞いてないよ。
ニタっと笑う口から牙が見えていた。
「名乗ったのに教えてくれないの」
「イサム、神須勇だ」
「そうなんだ・・・可愛い・・・」
口が動いた。
とっさに縮地を使っていた。
え!それでも俺の髪にかすっていた。
血の弾丸がかすったように見えた。
負けないぐらいに癒しの光を全包囲に放った。
「ギャー」と声がした。
女の両足が地面に落ちてた。
すらっとした足が、朽果ててゆく。
見上げた夜空に、マリアが飛んで浮かんでいる。
「今日は、負けを認めるわ。次回は負けないわ」
そして姿を消した。
マリアは、侵食する足を自ら切ったようだ。
そしてここには、2度と戻らないだろう。
ダンジョンから出たボス魔物でも、稀に1年後に討伐された事件はあった。
ダンジョンから離れ過ぎると、ダンジョンは急速に通常に戻る傾向があった。
今回もそれに当たるかも知れない。
ただし本人が自ら選んだ選択肢だ。あのマリアは、地上が気に入ったみたいだ。
この事は確りと報告する義務がありそうだ。
今回の事件で表立った行動は、危険だと感じたはずだ。
密かに着々と人間社会に入り込む気だ。
なぜって、鑑定した結果だ。逃げるまでにそんな事をマリアは考えてた。
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