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ルーンナイフ
しおりを挟むニューヨークの犯罪番組で生配信の時間が刻々と迫っている。
犯人逮捕の生現場が目玉の番組で、人気番組でもある。
「ジム刑事、まだ突入しないのですか・・・腕時計を見て下さい。時間が迫ってますよ」
刑事はイライラしていろ。応援の警官が来ないのだ。
「ちょっと待ってろ。緊急連絡が入った」
車の無線機から緊張した声が響いた。
「地下鉄より魔物が出現!緊急に住民避難を先導されたし。出現場所は××××」
その場の全員が凍りついた。
「すぐ近くじゃーないですか・・・」
「犯人逮捕を生配信するはずがダメになったぞ」
「そんなのん気な事を言って、早く逃げましょうよ」
「バカを言うな!おい、行くぞ」
「何処へ行くのですか」
「魔物を生配信するに決まってるだろう。それがジャーナリストの使命だ。それも分からないのか・・・」
「はい・・・全責任は私が持ちます・・・絶対に成功させるので・・・・・・OKが出たぞ」
そして、中継車の屋根からどうにかリザードマンをカメラに収めた。
シブシブにマイクを持った男性が、カメラの前に立とうとしている。
「ご覧下さい。1人の男性がリザードマンの群れに向かってます。これは無謀です」
誰もが無残に死ぬ姿を撮って、クビになるだろう考えた。
「リザードマンが無数に倒されてます。もうケーキを切るように切断してます。私は奇跡を見てるのでしょう」
切断されたリザードマンの死骸もカメラが撮っていた。
それも同時に生配信で放送されている。
「見て下さい。この切断面を・・・日本刀より切れ味がいい状態です」
アメリカ全土でも放送され、テレビの前では「やったぞ、あの憎き魔物を斬り尽くしたぞ」と奇声を上げた。
それはネットでも同じだ。
多くのアメリカ人は、喜びに酔いしれている。
それは世界中が知る事となった。
アメリカギルド本部では、ドローンを使っての空撮映像が数台で送られている。
そして、モニターに映し出せれていた。
その映像を見守る者は、唸るしかなかった。
マスター「凄まじい威力を発揮してるようね」
「こんな結果は、予想だにしてませんでした。言い換えればルーンナイフがあれば地上の魔物を容易に殲滅できます」
「マスター、大統領からの直接電話です」
ギルドマスターは受話器を取った。
マスター「はい・・・・・・ありがとうございます・・・それは分かっております・・・はい、そのようにします・・・全力で解決してみせます」
全員が次の言葉を待った。
今まで、初動の遅さで危機的被害の拡大で、経済にも大打撃を受けてきたアメリカ政府。
何度も崩壊するのではと噂もされてきた。
それが、解決する糸口が見えたのだ。
マスター「大統領命令です。今から私が日本に行ってルーンナイフ10本を買取り交渉をします。皆さんは、交渉を優位にする情報を掴んで下さい。以上です」
周りのスタッフの動きも早かった。
「ギルド本部補佐官のジェームズです。いつでも飛べるように政府専用機の用意を・・・緊急に・・・違います・・・はい」
「マスター、CIA長官が同行すると言ってます」
マスター「仕方ないわね・・・手配は出来るわね」
「はい」
ー ー ー ー ー ー ー
出来上がったばかりの鍛冶工房を2人して、見上げていた。
「ハルが書いた字は、達筆だな」
「才能があったみたいで、全国学校書初中央展で文部科学大臣賞にも選ばれましたよ」
掲げた看板には【神須鍛冶工房】と書かれていた。
「それでは私達は帰ります」
「ああ、ご苦労さん。約束通りにボーナスも追加で払うからね」
「1日で完成させるのに苦労しました。ボーナスに目がくらんで必死に頑張りましたよ」
トラックや車が8台も走り去ってゆく。
「師匠、ボーナスっていくらです・・・」
「5千万だ。建築費はすでに払ったからな」
「太っ腹ですね」
「ハルがルーンナイフを作れって急かすからだぞ」
「てへ^^」
黒い車が俺らの前で止まった。
さっそうと降りて来たのは、佐々木部長だ。
「2人で仲良くしいる所に悪いけど、ルーンナイフ10本を作ってちょうだい」
「ダメです。ハルが1番の約束をしたのでダメです」
怖い顔して睨んでも動じないハルを見て、「分かったわ。あなたの後でいいから急いで作って、その代わり値段はあなたの言い値で買うから」
「本当ですか・・・今から作ろうと思っていたので、一緒に作りますよ」
神須鍛冶工房内は、向こうから持って来た物を全て揃え終わった後だ。
指先を「パチン」と鳴らして火を起こす。
パッとついた火が勢いよく燃え出したぞ。
更に新鮮な空気が鞴で送られると炎の勢い凄いぞ。
異世界の鉄を中へ入れた。
火魔法と炭の炎は、鉄を赤くするのもめちゃくちゃ早いぞ。
これなら案外早く作れそうだ「カーン、カン、カン、コン」とハンマーで叩く。
あれ!思った通りに出来るぞ。
打ち終わったナイフ2本を、隣に放り投げた。
目をキラキラさえてるハルだ。
「なんか、いい感じのナイフですよ・・・もう感激ーー」
ハルは、自分好みに削って何度も何度も見比べては、削りなおしてる。
ようやく納得したのか、回転砥石で研ぎ出しだ。
「フフ、フン、フー」と鼻歌で楽しみながら研いでいる。
ハルが、1本を研ぎ終わってナイフをほれぼれと見ている間に、10本は打ち終わった。
「ハル、早くしろよ。もう10本はできたぞ」
「師匠、分かってますよ。私にも譲れない工程なんです」
ハルは、それでもマイペースで研ぎに集中してる。
「学園長!そんなに見ても早く研げませんよ。あっちに行って下さい」
そんな光景を、撮影スタッフはお構いナシに撮り続ける。
撮っても、肝心のルーンを打ち込む工程が理解出来るのかと言いたい。
多分・・・失敗するだろう。
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