男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき

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6話 里

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「あそこが私の里です」

 城を出てから四日。
 男とバレないように女装し、馬車に乗ったり宿に泊まったり、獣道のような所を通ったりと、色々な苦労はあったけど、なんとか目的地には辿り着いたようだ。

 道中は誰に話を聞かれるか分からないから、アイリさんとの会話を控えていた。
 そして里があるという森の中に入ってからは、足場が悪いために歩くのに必死で、会話をする余裕なんて無かった。

 だから里がどんな所とかは全く聞けなかったから、物語に出てくるようなエルフの里を想像していたんだが、なんかイメージと違う。


「石造りの神殿のような建物だけが見えるけど、あの向こうに家があるんです?」

「いえ、他に建物はありません。あれが私の里です」

「巨大な建物が一つだけ? 思ってたのとはだいぶ違いますね」

「どんなイメージだったのですか?」

「ん?」

 想像と違いすぎて思わず口に出てしまったが、俺のイメージは前世の記憶からなんだよな。
 でもそれは言えないから、そこは上手くボカシて。


「巨木が茂る森の中を歩いてきたから、巨木の中をくり貫いた家とか、木の上に建てた家に住んでるのかなって思ってました」

「ふふっ、すみません。そんな不思議な家じゃなくて」

「あっ、でも、俺のイメージとは違ったけど、あの神秘的で幻想的な建物は、エルフのイメージにピッタリですね」

「神秘的で幻想的で、エルフにピッタリですか?」

「うん? そうですけど?」

「…………」

 あ、この反応。
 俺はやらかしてしまったか?
 美醜逆転世界なら、嫌味を言われたとか思われてるはず。

 まさかこの後、里へ入れるのはやめておこうかしら……とかないよな?
 ここでサヨナラされたら、遭難して軽く死ねる。


「あの、エイジさん!」

「ひゃい!? 何ですか?」

「私の姿、どう思いますか?」

 厳しい顔をして、アイリさんはずいっと身体を近付けてくる。


 ここは謝るのが正解か?

 でも、でも……綺麗なものは、綺麗なんだよ。

 
「もちろん、神秘的で幻想的で、綺麗だと思ってます」


「……それじゃあ、あの……手を繋いでみても良いですか?」


 

 ◆◆◆


 
 目茶苦茶怒られるかと思っていたが、アイリさんは神妙な顔をして手を繋いでと言ってきた。

 彼女がどうしてそんな事をしたいのか、まったく想像出来なくて少し躊躇したが、この状況で断るわけにもいかないから、意を決して手を繋ぐど、それまで真剣だったアイリさんの目が、今度はパチクリしだした。


「アイリさん?」

「……」

「あの?」

「……あっ、すみません」

「これには何の意味が?」

「少し確認したかったのです」

「確認? 何のです?」

「それは……建物の中を案内しながら話します。その方が分かりやすいと思いますから」

「俺は中に入って良いんです?」

「え? もちろんですよ。それでは行きましょう、エイジさん」

「あ、はい」

 さっきまでのやり取りが一体何だったのか分からず、少しモヤモヤするが、中に入れば説明してくれるとアイリさんは言う。

 だから彼女に手を引かれながら、石畳の上を建物の中へと歩き始めた。
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