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初めての遭遇
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先程まで慌ただしく走り回っていた兵士達もだいぶ落ち着き、所々にテントが張られており、焚き火が焚かれている音がする。本格的な夜営に入ったようだ。
「どういうことですか? 異界人ということを隠せ、というのは」
「これはあなたのためではなく、この世界の人々のためなのだが」
隊長は真剣な目で優弥を見つめていた。
「この世界は、今のところ差し迫った脅威がないのだ」
「脅威がない?」
「つまり、世界が危機に瀕していない」
それはこの世界に来て一番の衝撃だった。
何せ、お前はこの世界に来た理由がない、と言われたようなものだ。
「だ、だけど、あの子馬は確かに、世界を救って、と……」
「そう、だから問題なのだ」
隊長の顔がますます真剣に、いや、深刻になる。
「我々の預かり知らないところで、世界が危機に瀕しているということだ」
そういう考え方できるのか。
隊長は苦々しそうに続ける。
「今、この世界は平和だ。二十年前の魔王の脅威から解放され、ようやく復興、再建し終えて、過去となりつつあるところに再び異界人が現れたとなると、人々は心穏やかにいはれないだろう。そして、決して信じないだろう。今は脅威などないのだから」
「それは、そうでしょうね……」
「そもそも、異界人がこんな短い間隔で現れるというのもおかしな話だ。今までは短くても百年間隔だったはず」
やはり二十年という間隔は短かったようだ。さっきのツッコミを心の中だけに留めておいて良かった。
「つまりユウヤ殿が、自分は異界人だ、といくら言っても誰も信じてくれないということです」
「……」
優弥の顔が暗くなっていく。
誰も信じてくれない、誰も信じられない。そんな世界に来てしまったということを突き付けられたのだ。
しかし、ここで大きな疑問が湧いてくる。
優弥は隊長に不安そうに訊ねた。
「なら、なぜ隊長殿は信じてくれたのですか?」
そう、目の前の人物は優弥のことを信じてくれたのだ。
草原に突如現れた人物のことを、何の証拠もないのに簡単に信じてくれた。
一体なぜ?
その言葉に隊長は口許を緩めた。
「あなたの魔法ですよ」
「僕の、魔法?」
自分は魔法なんて使えない。それなのに、魔法?
「異界人は総じて、特殊な魔法を使えるんです」
「あ……」
「持っていた槍と袋がユウヤ殿の腕と一緒になってなくなり、そしてユウヤ殿の腕だけが現れた。これは立派な魔法です」
確かにあれが魔法と言われたら納得できる。しかし、あれは一体どういう魔法なのか。しかも自分で意識して使ったわけではないのだ。
「あれがどういった魔法なのか、私にはわかりません。槍と袋がどこにいってしまったのかも。おそらく、これも王都の詳しい人間に聞けばわかるかもしれませんが……」
ここで隊長は小さく咳払いを入れた。
「話が逸れましたね。目の前で不思議な魔法を使ったのです。それで信じるには充分ですよ」
「しかし……」
それだけでよいのだろうか。
「それにニホンという国名が出てきたし、話に神獣が出てきた」
「でも……」
それは神話や異界人の伝説に詳しい人物なら簡単に騙れる気がするが……。
「何より、その話をしていた時のユウヤ殿は信じられると思いました」
「それは……」
ありがたいけども、結局自分は何一つ証明できていないのだ。信じてもらえるのは本当にありがたいことだが。
「なので、私達の知らないところで起きている世界の危機についてわかるまで、異界人ということを黙っていていただきたいのです」
隊長は再び真剣な眼差しで優弥を見つめていた。
しかし、その眼差しはどこか優しかった。
「なに、悪いようにはしません。ユウヤ殿は私の部隊の一員ということにして、王都に戻り、勉強熱心な一兵士として司祭様に紹介します」
神話に明るい人物とは司祭様だったのか。それはきっと詳しいはずだ。
「わかりました。よろしくお願いします」
「そして申し訳ないんですが、もう一つ条件があります」
まだあったのか。少し落胆するが、自分は何も出来ない身なのだ。もはや何でも受け入れるつもりでいる。
「私の部隊はとある任務の途中です。その任務を遂行してから出ないと、王都に戻ることは出来ません」
なるほど、それはもっともな話だ。とある任務の途中に、優弥に偶然出会っただけなのだ。
王都に帰りたいというのは優弥の個人的な理由。隊長殿は優弥に協力してくれるようだが、それでも任務を放棄して王都に戻るだなんてことはできないのだろう。
「それは勿論大丈夫です。自分はお願いしている身なので」
「ありがとうございます」
隊長殿は申し訳なさそうに頭を下げた。
そんなことをする必要はないはずなので、逆に優弥の方が申し訳ない気持ちになってくる。
「それで、とある任務というのは?」
いつまでも申し訳ない気持ちになっているわけにもいかないので聞いてみた。
「ここから西にある山に住む主が、山から降りてきて、この草原まで縄張りを広げ始めたようなのです。我々はその調査に、可能であるならば討伐をしに、この草原まで来ました」
「主?」
「はい。以前は山だけを……」
突然、鈴の音がけたたましく響く。
それを聞いて、隊長がばっと立ち上がった。
周りのテントからも次々と兵士が飛び出してくる。
次いで聞こえるのは鐘の音。
どうやら警鐘のようだ。ひっきりなしに聞こえてくる。
「西の方角から襲撃!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「総員、迎え討てえ!」
隊長が声を上げる。
それに呼応するように周りにいる兵士達は野太い声を上げ、武器を手に取り、一ヶ所に進んでいく。
そっちが西なのだろう。
「ユウヤ殿は私のそばから離れないでくださいね」
そう言って、兜を被り直して兵士達に続く。
そばから離れないでくださいね、と言うからここで守ってくれるのかと思ったが、どうやら一緒について来いと言う意味らしい。
隊長なのだから、それはそうか。
隊長について行くと、鉄と鉄がぶつかり合うような音が聞こえてくる。
もう戦闘が始まっているのだろう。
兵士達が集まっているところで隊長は止まった。
隙間から覗いてみることにする。
すると、そこにいたのは真っ黒な虎のような生物だった。
しかし、異様に大きい。普通の虎は、肩まで高さは人間より低いくらいだろう。
だが、目の前の黒い虎のような生物は肩までの高さが二メートルはあるように見える。
しかも真っ先に目を奪われるのが、その上顎から垂れ下がる立派な牙。五十センチはあるのではないだろうか。優弥に突き立てられでもしたら、簡単に貫かれてしまうだろう。
「こいつが、この化け物が……我々がこの草原にやって来た目的……A級モンスター、サーベルブラックジャガー!」
「どういうことですか? 異界人ということを隠せ、というのは」
「これはあなたのためではなく、この世界の人々のためなのだが」
隊長は真剣な目で優弥を見つめていた。
「この世界は、今のところ差し迫った脅威がないのだ」
「脅威がない?」
「つまり、世界が危機に瀕していない」
それはこの世界に来て一番の衝撃だった。
何せ、お前はこの世界に来た理由がない、と言われたようなものだ。
「だ、だけど、あの子馬は確かに、世界を救って、と……」
「そう、だから問題なのだ」
隊長の顔がますます真剣に、いや、深刻になる。
「我々の預かり知らないところで、世界が危機に瀕しているということだ」
そういう考え方できるのか。
隊長は苦々しそうに続ける。
「今、この世界は平和だ。二十年前の魔王の脅威から解放され、ようやく復興、再建し終えて、過去となりつつあるところに再び異界人が現れたとなると、人々は心穏やかにいはれないだろう。そして、決して信じないだろう。今は脅威などないのだから」
「それは、そうでしょうね……」
「そもそも、異界人がこんな短い間隔で現れるというのもおかしな話だ。今までは短くても百年間隔だったはず」
やはり二十年という間隔は短かったようだ。さっきのツッコミを心の中だけに留めておいて良かった。
「つまりユウヤ殿が、自分は異界人だ、といくら言っても誰も信じてくれないということです」
「……」
優弥の顔が暗くなっていく。
誰も信じてくれない、誰も信じられない。そんな世界に来てしまったということを突き付けられたのだ。
しかし、ここで大きな疑問が湧いてくる。
優弥は隊長に不安そうに訊ねた。
「なら、なぜ隊長殿は信じてくれたのですか?」
そう、目の前の人物は優弥のことを信じてくれたのだ。
草原に突如現れた人物のことを、何の証拠もないのに簡単に信じてくれた。
一体なぜ?
その言葉に隊長は口許を緩めた。
「あなたの魔法ですよ」
「僕の、魔法?」
自分は魔法なんて使えない。それなのに、魔法?
「異界人は総じて、特殊な魔法を使えるんです」
「あ……」
「持っていた槍と袋がユウヤ殿の腕と一緒になってなくなり、そしてユウヤ殿の腕だけが現れた。これは立派な魔法です」
確かにあれが魔法と言われたら納得できる。しかし、あれは一体どういう魔法なのか。しかも自分で意識して使ったわけではないのだ。
「あれがどういった魔法なのか、私にはわかりません。槍と袋がどこにいってしまったのかも。おそらく、これも王都の詳しい人間に聞けばわかるかもしれませんが……」
ここで隊長は小さく咳払いを入れた。
「話が逸れましたね。目の前で不思議な魔法を使ったのです。それで信じるには充分ですよ」
「しかし……」
それだけでよいのだろうか。
「それにニホンという国名が出てきたし、話に神獣が出てきた」
「でも……」
それは神話や異界人の伝説に詳しい人物なら簡単に騙れる気がするが……。
「何より、その話をしていた時のユウヤ殿は信じられると思いました」
「それは……」
ありがたいけども、結局自分は何一つ証明できていないのだ。信じてもらえるのは本当にありがたいことだが。
「なので、私達の知らないところで起きている世界の危機についてわかるまで、異界人ということを黙っていていただきたいのです」
隊長は再び真剣な眼差しで優弥を見つめていた。
しかし、その眼差しはどこか優しかった。
「なに、悪いようにはしません。ユウヤ殿は私の部隊の一員ということにして、王都に戻り、勉強熱心な一兵士として司祭様に紹介します」
神話に明るい人物とは司祭様だったのか。それはきっと詳しいはずだ。
「わかりました。よろしくお願いします」
「そして申し訳ないんですが、もう一つ条件があります」
まだあったのか。少し落胆するが、自分は何も出来ない身なのだ。もはや何でも受け入れるつもりでいる。
「私の部隊はとある任務の途中です。その任務を遂行してから出ないと、王都に戻ることは出来ません」
なるほど、それはもっともな話だ。とある任務の途中に、優弥に偶然出会っただけなのだ。
王都に帰りたいというのは優弥の個人的な理由。隊長殿は優弥に協力してくれるようだが、それでも任務を放棄して王都に戻るだなんてことはできないのだろう。
「それは勿論大丈夫です。自分はお願いしている身なので」
「ありがとうございます」
隊長殿は申し訳なさそうに頭を下げた。
そんなことをする必要はないはずなので、逆に優弥の方が申し訳ない気持ちになってくる。
「それで、とある任務というのは?」
いつまでも申し訳ない気持ちになっているわけにもいかないので聞いてみた。
「ここから西にある山に住む主が、山から降りてきて、この草原まで縄張りを広げ始めたようなのです。我々はその調査に、可能であるならば討伐をしに、この草原まで来ました」
「主?」
「はい。以前は山だけを……」
突然、鈴の音がけたたましく響く。
それを聞いて、隊長がばっと立ち上がった。
周りのテントからも次々と兵士が飛び出してくる。
次いで聞こえるのは鐘の音。
どうやら警鐘のようだ。ひっきりなしに聞こえてくる。
「西の方角から襲撃!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「総員、迎え討てえ!」
隊長が声を上げる。
それに呼応するように周りにいる兵士達は野太い声を上げ、武器を手に取り、一ヶ所に進んでいく。
そっちが西なのだろう。
「ユウヤ殿は私のそばから離れないでくださいね」
そう言って、兜を被り直して兵士達に続く。
そばから離れないでくださいね、と言うからここで守ってくれるのかと思ったが、どうやら一緒について来いと言う意味らしい。
隊長なのだから、それはそうか。
隊長について行くと、鉄と鉄がぶつかり合うような音が聞こえてくる。
もう戦闘が始まっているのだろう。
兵士達が集まっているところで隊長は止まった。
隙間から覗いてみることにする。
すると、そこにいたのは真っ黒な虎のような生物だった。
しかし、異様に大きい。普通の虎は、肩まで高さは人間より低いくらいだろう。
だが、目の前の黒い虎のような生物は肩までの高さが二メートルはあるように見える。
しかも真っ先に目を奪われるのが、その上顎から垂れ下がる立派な牙。五十センチはあるのではないだろうか。優弥に突き立てられでもしたら、簡単に貫かれてしまうだろう。
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