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戦闘開始
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サーベルタイガーというのは聞いたことがある。遥か昔、太古の時代に絶滅した生物だ。漫画やアニメなどにもよく出てきて、絶滅した生物としては知名度は高い。
優弥はごくりと唾を飲み込んだ。
漫画やアニメに出てくるサーベルタイガーはデフォルメされているのもあるだろうが、格好良く表現されている。
しかし、目の前にいる獣は違った。そいつはまさしく獣だった。
その顔は優弥の知っているジャガーより数倍は狂暴そうで、ネコ科特有の丸くてギロリとした眼で見下ろしている。
その足元では何人かの兵士が剣や槍で牽制しているようだが、全く気にしていない。
たまに刃がその足に襲いかかるが、ガキンッと鉄を斬りつけているような音が聞こえ、サーベルブラックジャガーは無傷のようである。
「やつの体毛は鋼のように硬く、それでいてしなやかなのだ」
優弥が驚いていると隊長が説明してくれた。
「つまりそれって、倒せないんじゃ……」
不安そうな声を漏らす。だが、隊長は大きく声を上げた。
「そんなことはない! 弓部隊用意!」
隊長の前に弓を持った七人の兵士が並び、弓に矢をつがえる。
「放てっ!」
兵士達が一斉に放った矢は、放物線を描きながらサーベルブラックジャガーに襲いかかる。
しかし、先程の刃と同様に弾かれてしまう。
だが、それに構わず弓の兵士は矢をつがえては放ちつがえては放ちを繰り返す。
矢は全て弾かれてしまっているが、サーベルブラックジャガーは鬱陶しそうに顔を歪めている。
それを見た隊長が次の指示を出す。
「魔法部隊!」
今度は隊長と優弥の後ろに五人の兵士が並ぶ。
「詠唱開始!」
「はっ!」
そう応じて、五人の兵士がぶつぶつと言い始める。どうやら魔法の詠唱のようだ。五人とも別々の魔法のようで、声が重なり聞き取れない。
いつの間にか盾の兵士がサーベルブラックジャガーを取り囲んで逃げ場を奪っている。効かないとはわかっていても、なおも襲いかかってく矢を鬱陶しそうに受け、サーベルブラックジャガーはどんどんストレスが溜まっていっているようだ。
優弥は自分の後ろにものすごいエネルギーが集まっているのを感じた。
五人の魔法を唱えている兵士の頭上の空間が歪んで見えるようだ。
その歪みがどんどんと大きくなり、そして炎の塊になった。
「すごい……」
思わず漏らす。
炎の塊は一つだけ。しかし、その一つでもサーベルブラックジャガーを飲み込むには充分な大きさだった。
これなら剣や矢が効かなくても倒せるに違いない。
「キシャアアアアア!」
自分よりも大きな炎の塊を見て焦ったのか、サーベルブラックジャガーは威嚇するように吠えた。
しかし、依然として逃げ場はないし、矢は降り注いでいる。
これなら確実にあの炎の塊を当てられる。
だが……。
「あの、このままだと周りの兵士も巻き添えになりませんか……?」
サーベルブラックジャガーよりも大きな炎の塊。どのような魔法かはわからないが、あのままサーベルブラックジャガーに襲いかかるとしても、周りで牽制している剣や槍の兵士だけでなく、取り囲んでる盾の兵士も巻き添えになってしまうのではないか。
まさかこのまま魔法を放ってしまうのか。少ない兵士を犠牲にしてでも、確実にサーベルブラックジャガーを倒そうとするのだろうか。
いや、優弥に優しさを見せてくれたこの隊長が、そんなことをするはずがない。
「そう、だから機を待っている」
優弥の不安を払拭するかのような、力強い言葉だった。
「攻める手数を増やせ! 多少強引になってもいい、作戦通りに!」
隊長の声が飛ぶ。
盾で取り囲んでいた兵士の数名が剣を抜いて攻撃に加わる。抜けた穴を埋めるため、盾の囲いが狭くなる。
弓の兵士達も、まるでラストスパートかのように矢を射る速度をあげた。
サーベルブラックジャガーはストレスを払拭するかのように前足の爪で剣や槍の兵士を切り裂こうとするが、牽制のみで引き気味に戦っている兵士達はひらりと避けている。その爪が盾を襲うこともあったが、木とは思えないほど頑丈で爪を弾いた。
その間も絶えず矢は飛んでくる。刺さりはしないものの、速度が上がってせいか、当たった時の衝撃は無視できないものになったらしい。顔がますます険しく歪んでいく。
しばらく膠着状態が続いた。
魔法は完成したらしく、炎の塊はこれ以上大きくならなかった。
何を待っているのか優弥にはわからなかったが、急に視界からサーベルブラックジャガーが消えた。
「え……」
しかし相変わらず剣戟音は聞こえている。
よくよく見たら、サーベルブラックジャガーは体勢を低くしていただけのようだ。
そして、大きく上へと跳躍する。
「今だっ!」
「はっ!」
それは待っていたかのように隊長が合図をすると、魔法の兵士が応じた。
五人が更に魔法を唱えると、炎の塊がサーベルブラックジャガーに向かって飛んでいく。
それはものすごい速さだった。
空中では避けようがない。これは必ず当たる。
優弥だけでなく、隊長も、おそらく全ての兵士がそう思っただろう。
だがサーベルブラックジャガーの表情に焦りの色は見られなかった。
そして、サーベルブラックジャガーの足元に青色の魔方陣が浮かび上がった。
優弥はごくりと唾を飲み込んだ。
漫画やアニメに出てくるサーベルタイガーはデフォルメされているのもあるだろうが、格好良く表現されている。
しかし、目の前にいる獣は違った。そいつはまさしく獣だった。
その顔は優弥の知っているジャガーより数倍は狂暴そうで、ネコ科特有の丸くてギロリとした眼で見下ろしている。
その足元では何人かの兵士が剣や槍で牽制しているようだが、全く気にしていない。
たまに刃がその足に襲いかかるが、ガキンッと鉄を斬りつけているような音が聞こえ、サーベルブラックジャガーは無傷のようである。
「やつの体毛は鋼のように硬く、それでいてしなやかなのだ」
優弥が驚いていると隊長が説明してくれた。
「つまりそれって、倒せないんじゃ……」
不安そうな声を漏らす。だが、隊長は大きく声を上げた。
「そんなことはない! 弓部隊用意!」
隊長の前に弓を持った七人の兵士が並び、弓に矢をつがえる。
「放てっ!」
兵士達が一斉に放った矢は、放物線を描きながらサーベルブラックジャガーに襲いかかる。
しかし、先程の刃と同様に弾かれてしまう。
だが、それに構わず弓の兵士は矢をつがえては放ちつがえては放ちを繰り返す。
矢は全て弾かれてしまっているが、サーベルブラックジャガーは鬱陶しそうに顔を歪めている。
それを見た隊長が次の指示を出す。
「魔法部隊!」
今度は隊長と優弥の後ろに五人の兵士が並ぶ。
「詠唱開始!」
「はっ!」
そう応じて、五人の兵士がぶつぶつと言い始める。どうやら魔法の詠唱のようだ。五人とも別々の魔法のようで、声が重なり聞き取れない。
いつの間にか盾の兵士がサーベルブラックジャガーを取り囲んで逃げ場を奪っている。効かないとはわかっていても、なおも襲いかかってく矢を鬱陶しそうに受け、サーベルブラックジャガーはどんどんストレスが溜まっていっているようだ。
優弥は自分の後ろにものすごいエネルギーが集まっているのを感じた。
五人の魔法を唱えている兵士の頭上の空間が歪んで見えるようだ。
その歪みがどんどんと大きくなり、そして炎の塊になった。
「すごい……」
思わず漏らす。
炎の塊は一つだけ。しかし、その一つでもサーベルブラックジャガーを飲み込むには充分な大きさだった。
これなら剣や矢が効かなくても倒せるに違いない。
「キシャアアアアア!」
自分よりも大きな炎の塊を見て焦ったのか、サーベルブラックジャガーは威嚇するように吠えた。
しかし、依然として逃げ場はないし、矢は降り注いでいる。
これなら確実にあの炎の塊を当てられる。
だが……。
「あの、このままだと周りの兵士も巻き添えになりませんか……?」
サーベルブラックジャガーよりも大きな炎の塊。どのような魔法かはわからないが、あのままサーベルブラックジャガーに襲いかかるとしても、周りで牽制している剣や槍の兵士だけでなく、取り囲んでる盾の兵士も巻き添えになってしまうのではないか。
まさかこのまま魔法を放ってしまうのか。少ない兵士を犠牲にしてでも、確実にサーベルブラックジャガーを倒そうとするのだろうか。
いや、優弥に優しさを見せてくれたこの隊長が、そんなことをするはずがない。
「そう、だから機を待っている」
優弥の不安を払拭するかのような、力強い言葉だった。
「攻める手数を増やせ! 多少強引になってもいい、作戦通りに!」
隊長の声が飛ぶ。
盾で取り囲んでいた兵士の数名が剣を抜いて攻撃に加わる。抜けた穴を埋めるため、盾の囲いが狭くなる。
弓の兵士達も、まるでラストスパートかのように矢を射る速度をあげた。
サーベルブラックジャガーはストレスを払拭するかのように前足の爪で剣や槍の兵士を切り裂こうとするが、牽制のみで引き気味に戦っている兵士達はひらりと避けている。その爪が盾を襲うこともあったが、木とは思えないほど頑丈で爪を弾いた。
その間も絶えず矢は飛んでくる。刺さりはしないものの、速度が上がってせいか、当たった時の衝撃は無視できないものになったらしい。顔がますます険しく歪んでいく。
しばらく膠着状態が続いた。
魔法は完成したらしく、炎の塊はこれ以上大きくならなかった。
何を待っているのか優弥にはわからなかったが、急に視界からサーベルブラックジャガーが消えた。
「え……」
しかし相変わらず剣戟音は聞こえている。
よくよく見たら、サーベルブラックジャガーは体勢を低くしていただけのようだ。
そして、大きく上へと跳躍する。
「今だっ!」
「はっ!」
それは待っていたかのように隊長が合図をすると、魔法の兵士が応じた。
五人が更に魔法を唱えると、炎の塊がサーベルブラックジャガーに向かって飛んでいく。
それはものすごい速さだった。
空中では避けようがない。これは必ず当たる。
優弥だけでなく、隊長も、おそらく全ての兵士がそう思っただろう。
だがサーベルブラックジャガーの表情に焦りの色は見られなかった。
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