これで異世界なんて、どうかしてるっ!

ひむべーれ

文字の大きさ
12 / 40

サーベルブラックジャガーの実力

しおりを挟む
「魔法、だと?」

 サーベルブラックジャガーが魔法を使うという情報はなかったのか、隊長は訝しむ。

「だが無理だ。あの魔法炎の塊を防ぐ程の防御魔法はS級でないと使えまい」

 隊長の声は明るかった。すでに勝利を確信しているようだ。
 皆が上空を見上げている。

「仮に使えたとしても、完全に防ぎきることなど不可能。そのまま滅びるがいいっ!」

 炎の塊はサーベルブラックジャガーの目の前まで迫っていた。
 その距離で防いだとしても無傷で済むとは思えない。それ程の大きさ、それ程の熱量を持っていた。

 炎の塊がサーベルブラックジャガーの出した青色の魔方陣に触れる、よりも先にサーベルブラックジャガーの四本の足が魔方陣に触れた。

 それを見て、優弥はゾクリと背中が冷たくなった。
 嫌な予感がする。

 隊長達は気付いていないのか、何も次の行動を起こそうとしない。
 いや、今更どうこうしても遅い。おそらく次の行動で状況は一変するが、それを打開する術など優弥は持ち合わせていない。
 ただ、見守ることしかできなかった。

 サーベルブラックジャガーが魔方陣を足場にして、もう一度跳躍するを。

「なっ……!」

 余程予想外だったのが、全員が固まってしまい、炎の塊が飛んでいく先を見つめていた。

 当のサーベルブラックジャガーはそれを空中跳躍でひらりと躱し、優弥の後方に着地した。
 そう、魔法部隊がいる辺りである。

 サーベルブラックジャガーはゆっくりと体勢を整えてから、けたたましく吠えた。

「ガアアアァァァ!」

 それを皮切りに、魔法部隊に襲いかかる。
 まずは両前足で二人を切りつける。

「ぎゃあああ!」

 その叫び声でようやく我に返った隊長が指示を飛ばす。

「弓部隊、放て!」

 その声にはっとして、弓部隊の七人の兵士が弓に矢をつがえて放つ。
 しかし、矢はやはり弾かれてしまう。
 さらに最悪なことに……

「もう矢がありません!」

 二十本も放たない内にもう終わってしまった。先程大量に使ったのだ、当たり前と言えば当たり前か。

「くっ……!」

 隊長は苦虫を噛み締めるように剣を抜いた。
 それは随分と立派な剣だった。刀身にも装飾が施されている。

「はあああっ!」

 抜くやいなや、サーベルブラックジャガーに向かって行く。
 他の兵士が持っている剣では歯が立たなかったが、あの剣ならあるいは……。

 その間に魔法部隊が二人、サーベルブラックジャガーの爪の餌食になっていた。
 それを見て持つ手に更に力を込める隊長。走る速度も上げ、勢い良く迫る。

 サーベルブラックジャガーは向かってくる隊長にカウンター気味に前足を振る。
 それを紙一重で躱し、そのまま後ろ足に剣を叩き込む隊長。

「ギャアアァッ!」

 剣は弾かれずに足に切り傷を負わせ、初めて攻撃がまともに入った。

「おおっ!」

 それを見た兵士達の士気が上がる。
 最後列になってしまっていた剣や槍や盾の兵士が一斉にサーベルブラックジャガーに向かっていく。

 サーベルブラックジャガーは後ろに飛んで距離を取った。
 先程、囲われたのが余程嫌だったようだ。

 隊長が追撃する。応戦するサーベルブラックジャガー。
 隊長の剣を爪や牙で受け、剣戟音と火花が飛び散る。

 剣や槍の兵士達もそれに続ことするが、隊長のような体捌きができず、サーベルブラックジャガーの攻撃を受けて次々と倒れていく。

 盾の兵士が再び取り囲もうとするが、それを嫌ったサーベルブラックジャガーは激しく暴れまわり、尻尾も使って盾ごと一蹴されてしまう。

 その隙を狙って隊長が剣を二、三発叩き込むがサーベルブラックジャガーの動きが鈍ることはない。傷を負わせるとこはできても、かすり傷程度のようだ。

 いつの間にか、サーベルブラックジャガーに相対しているのは隊長だけになっていた。
 お互いに決定打を与えられないまま、何度も剣戟音が響く。

 しかし、均衡は呆気なく崩れてしまう。
 持ち前の速度と機動力を駆使し、サーベルブラックジャガーが隊長を手数で圧倒し始める。
 捌き切れなくなった隊長は、ついに爪での一撃を受けてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...