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あの日々を求めて
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「槍が……出た……!」
思わず息を飲む程の白くて美しい槍。
その存在感を前に、サーベルブラックジャガーもこの槍を見つめていた。
その隙を突いて、隊長が優弥に駆け寄ってきて声をかけてくる。
「~~~~~~~~」
しかし何と言っているのかわからなかった。
(また言葉が通じなくなってる……?)
先程、急に言葉が通じて、また急に理解不能になった。
思い当たるのは、今は手に持っている槍。
(もしかして同化してる間は言葉が通じるのか……?)
あの時、優弥が呟いたのは「どうかしてる」という言葉だった。
おそらく、どうか、という言葉が鍵となって優弥の右手と槍は一つになった。
同化したのだ。
そして、槍の攻撃力を持った右手となった。
詳しいことはまだ色々と試してみないとわからないが、しかしこれで武器が手に入った。
サーベルブラックジャガーと戦うための武器が。
まだ色々と声をかけてくる隊長を手で制し、サーベルブラックジャガーを睨み付ける。
隊長が何を言っているのかわからない以上、こちらが何を言っても伝わらないだろう。
ならば今は目の前の敵に集中した方が得策だ。
サーベルブラックジャガーも負けじとこちらを睨んでいた。
優弥はぎゅっと槍を強く握る。
武器が手に入ったとはいえ、相手は優弥よりも大きい獣。身体能力ではこちらの分が圧倒的に悪い。
それに剣道なら友達に誘われて相手をしたりして、なんならヘルプで大会に出たりしたこともあるけれど、槍を使ったことなど一度もない。
それでも、優弥には勝算があった。
ゆっくりと目を閉じて、息を深く吐く。
あの夏の日々を思い出す。友達に頼まれて剣道部の練習相手をしていた武道場を。
目を開け、サーベルブラックジャガーに向けてまっすぐと駆ける。
後ろから隊長の声が聞こえる。おそらく制止させようとしているのだろうが、意味がわからないのだから聞けない。
サーベルブラックジャガーはカウンターで迎え撃とうと、左前足で攻撃してきた。
優弥は走りながら槍の左袈裟斬りで受け止め、流す。
スピードは落とさず、バランスの崩れたサーベルブラックジャガーの後ろ足を左足を斬り裂く。
「ギシャアッ!」
隊長が与えた掠り傷とは比べものにならないようなしっかりとした深手を与える。
その一瞬のすれ違いの攻防を隊長は驚きの目で見つめていた。
しかし、優弥の攻撃は終わらない。
振り向き様、右袈裟斬りを繰り出す。
それは尻尾で柄を捕まれて止められるが、優弥は槍をくるりと回して尻尾をはずし、その回転で尻尾の半分以上を切断した。
さすがに体勢を立て直した方がいいと考えたのか、優弥に背を向けたままその場を逃げ出そうとするサーベルブラックジャガー。
しかし四本の足のうち、三本もダメージを受けているので出足が鈍かった。
優弥はそれを見逃さず、突きで無傷だった右後ろ足を貫く。
これでサーベルブラックジャガーの機動力は奪った。
「ガアアアァッ!」
移動もままならないサーベルブラックジャガーは威嚇するように吠えるだけ。
その姿を見て優弥は確信する。
(やっぱり、通じる!)
目を閉じて思い出した光景。それは、幼馴染みの姿。
あの夏、武道場は剣道部と薙刀部で半分ずつ使っていた。薙刀を振る幼馴染みの姿を毎日隣から見ていた。
友人達はやや邪な目で見ていたようだが、優弥は違った。
その凛とした立ち姿、颯爽と薙刀を振る姿。その全てが格好良かった。
焼き付く程に見ていたその姿をイメージし、自分に重ねる。
(あいつがどう動くか、どう戦うかを考えたら自然と身体が動く)
それだけで戦える。自信が湧く。
全国大会まで進んだ実績は伊達ではない。二回戦で負けて大泣きしてたけど……。
優弥はくすりと思い出し笑いをこぼした。そんな余裕すら出てきている。
しかし、目はまっすぐとサーベルブラックジャガーを見据えていた。
サーベルブラックジャガーはグルグルと唸っているだけだが、敵意は剥き出しのままだ。
しばらく睨み合いが続く。
どのくらいそうしていただろう。
隊長がごくりと喉を鳴らした音が聞こえてくる。
先に動いたのはサーベルブラックジャガーだった。
大きく口を開け、その二本の大きな牙を優弥に突き立ててやろうと身体を倒すようにして迫ってくる。
五十センチはあるの牙は脅威以外の何物でもない。
しかし、四本の足はダメージを負っていて、それしか攻撃手段がないとわかっているのだから対処の仕様はある。
しかも優弥の持っている武器は迫り来る牙よりも倍以上の長さがあるのだ。
あと必要なのは勇気だけ。
優弥は再びサーベルブラックジャガーに向かって走り出す。
一瞬、幼馴染みの顔が頭の片隅にちらついた。
優弥ははっとした。
今、自分は槍をサーベルブラックジャガーの眉間に叩き込もうとした。
しかしこの槍の攻撃力はとんでもない。眉間からもずぶずぶと入っていってしまうかもしれない。そうなるといくらこちらの方がリーチがあっても、牙が自分に届いてしまう可能性もある。
優弥は突き出そうとした手を止める。
しかしどうすれば?
牙はもう目の前にまで迫ってきている。
「~~~~!」
隊長の叫び声が聞こえる。相変わらず何を言っているのかはわからないが、きっと激励してくれているのだろう。
「同化!」
優弥がそう叫ぶ。
すると優弥の右手と槍が光の粒子となった。
目の前にあったものがなくなり、急に光が現れた。
淡い光ではあるが、夜ではさすがに目立つ。
サーベルブラックジャガーは一瞬目が眩んでしまう。
その隙に、優弥は牙をすれすれで避けながらサーベルブラックジャガーの顎の下に身体を滑り込ませた。
辿り着く頃には、槍と右手は再び同化していた。
「同化解除!」
すぐさま槍を出現させ、そのままサーベルブラックジャガーの顎下から一気に突き上げる。槍は勢いよくサーベルブラックジャガーの脳天まで突き抜けた。
サーベルブラックジャガーは力なく項垂れて、倒れ込んでくる。
そのままだと押し潰されてしまうので、優弥は早々と逃げ出す。その左手にはきんつばが入ったビニール袋が握られている。
なんとも格好の着かない勝利だった。
思わず息を飲む程の白くて美しい槍。
その存在感を前に、サーベルブラックジャガーもこの槍を見つめていた。
その隙を突いて、隊長が優弥に駆け寄ってきて声をかけてくる。
「~~~~~~~~」
しかし何と言っているのかわからなかった。
(また言葉が通じなくなってる……?)
先程、急に言葉が通じて、また急に理解不能になった。
思い当たるのは、今は手に持っている槍。
(もしかして同化してる間は言葉が通じるのか……?)
あの時、優弥が呟いたのは「どうかしてる」という言葉だった。
おそらく、どうか、という言葉が鍵となって優弥の右手と槍は一つになった。
同化したのだ。
そして、槍の攻撃力を持った右手となった。
詳しいことはまだ色々と試してみないとわからないが、しかしこれで武器が手に入った。
サーベルブラックジャガーと戦うための武器が。
まだ色々と声をかけてくる隊長を手で制し、サーベルブラックジャガーを睨み付ける。
隊長が何を言っているのかわからない以上、こちらが何を言っても伝わらないだろう。
ならば今は目の前の敵に集中した方が得策だ。
サーベルブラックジャガーも負けじとこちらを睨んでいた。
優弥はぎゅっと槍を強く握る。
武器が手に入ったとはいえ、相手は優弥よりも大きい獣。身体能力ではこちらの分が圧倒的に悪い。
それに剣道なら友達に誘われて相手をしたりして、なんならヘルプで大会に出たりしたこともあるけれど、槍を使ったことなど一度もない。
それでも、優弥には勝算があった。
ゆっくりと目を閉じて、息を深く吐く。
あの夏の日々を思い出す。友達に頼まれて剣道部の練習相手をしていた武道場を。
目を開け、サーベルブラックジャガーに向けてまっすぐと駆ける。
後ろから隊長の声が聞こえる。おそらく制止させようとしているのだろうが、意味がわからないのだから聞けない。
サーベルブラックジャガーはカウンターで迎え撃とうと、左前足で攻撃してきた。
優弥は走りながら槍の左袈裟斬りで受け止め、流す。
スピードは落とさず、バランスの崩れたサーベルブラックジャガーの後ろ足を左足を斬り裂く。
「ギシャアッ!」
隊長が与えた掠り傷とは比べものにならないようなしっかりとした深手を与える。
その一瞬のすれ違いの攻防を隊長は驚きの目で見つめていた。
しかし、優弥の攻撃は終わらない。
振り向き様、右袈裟斬りを繰り出す。
それは尻尾で柄を捕まれて止められるが、優弥は槍をくるりと回して尻尾をはずし、その回転で尻尾の半分以上を切断した。
さすがに体勢を立て直した方がいいと考えたのか、優弥に背を向けたままその場を逃げ出そうとするサーベルブラックジャガー。
しかし四本の足のうち、三本もダメージを受けているので出足が鈍かった。
優弥はそれを見逃さず、突きで無傷だった右後ろ足を貫く。
これでサーベルブラックジャガーの機動力は奪った。
「ガアアアァッ!」
移動もままならないサーベルブラックジャガーは威嚇するように吠えるだけ。
その姿を見て優弥は確信する。
(やっぱり、通じる!)
目を閉じて思い出した光景。それは、幼馴染みの姿。
あの夏、武道場は剣道部と薙刀部で半分ずつ使っていた。薙刀を振る幼馴染みの姿を毎日隣から見ていた。
友人達はやや邪な目で見ていたようだが、優弥は違った。
その凛とした立ち姿、颯爽と薙刀を振る姿。その全てが格好良かった。
焼き付く程に見ていたその姿をイメージし、自分に重ねる。
(あいつがどう動くか、どう戦うかを考えたら自然と身体が動く)
それだけで戦える。自信が湧く。
全国大会まで進んだ実績は伊達ではない。二回戦で負けて大泣きしてたけど……。
優弥はくすりと思い出し笑いをこぼした。そんな余裕すら出てきている。
しかし、目はまっすぐとサーベルブラックジャガーを見据えていた。
サーベルブラックジャガーはグルグルと唸っているだけだが、敵意は剥き出しのままだ。
しばらく睨み合いが続く。
どのくらいそうしていただろう。
隊長がごくりと喉を鳴らした音が聞こえてくる。
先に動いたのはサーベルブラックジャガーだった。
大きく口を開け、その二本の大きな牙を優弥に突き立ててやろうと身体を倒すようにして迫ってくる。
五十センチはあるの牙は脅威以外の何物でもない。
しかし、四本の足はダメージを負っていて、それしか攻撃手段がないとわかっているのだから対処の仕様はある。
しかも優弥の持っている武器は迫り来る牙よりも倍以上の長さがあるのだ。
あと必要なのは勇気だけ。
優弥は再びサーベルブラックジャガーに向かって走り出す。
一瞬、幼馴染みの顔が頭の片隅にちらついた。
優弥ははっとした。
今、自分は槍をサーベルブラックジャガーの眉間に叩き込もうとした。
しかしこの槍の攻撃力はとんでもない。眉間からもずぶずぶと入っていってしまうかもしれない。そうなるといくらこちらの方がリーチがあっても、牙が自分に届いてしまう可能性もある。
優弥は突き出そうとした手を止める。
しかしどうすれば?
牙はもう目の前にまで迫ってきている。
「~~~~!」
隊長の叫び声が聞こえる。相変わらず何を言っているのかはわからないが、きっと激励してくれているのだろう。
「同化!」
優弥がそう叫ぶ。
すると優弥の右手と槍が光の粒子となった。
目の前にあったものがなくなり、急に光が現れた。
淡い光ではあるが、夜ではさすがに目立つ。
サーベルブラックジャガーは一瞬目が眩んでしまう。
その隙に、優弥は牙をすれすれで避けながらサーベルブラックジャガーの顎の下に身体を滑り込ませた。
辿り着く頃には、槍と右手は再び同化していた。
「同化解除!」
すぐさま槍を出現させ、そのままサーベルブラックジャガーの顎下から一気に突き上げる。槍は勢いよくサーベルブラックジャガーの脳天まで突き抜けた。
サーベルブラックジャガーは力なく項垂れて、倒れ込んでくる。
そのままだと押し潰されてしまうので、優弥は早々と逃げ出す。その左手にはきんつばが入ったビニール袋が握られている。
なんとも格好の着かない勝利だった。
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