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謁見の間にて
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謁見の間はこれまた豪華なものだった。
まるで一枚の西洋絵画の中にでも迷い込んでしまったかのような感じだ。
広い空間に何本も等間隔にそびえ立つ柱、その床を流れる一筋の赤い絨毯、その先の玉座に威厳たっぷりで座っている人物。これでふさふさの髭でも蓄えていたら完璧だったのだが、あいにくと年は召していそうだが髭は生えてはいなかった。
しかしその空間は、優弥が今まで見たことがないくらい豪華で、そして厳かだった。
王がいる空間だからだろうか、何とも言えない、今まで感じたことのないような重苦しい空気があった。
優弥が緊張しているからだろうか。それとも不安からか。
隊長と優弥はゆっくりと玉座に近付いていく。
玉座がある辺りは一段高くなっていて、その段の手前で隊長は立ち止まり、跪いた。
「サーベルブラックジャガーの調査、ご苦労であった」
しわがれた声が低く響く。
その声の重圧におののき、優弥も隊長に倣って跪く。
「勿体無きお言葉、ありがとうございます」
隊長は頭を下げたまま答える。
「して、その者は何者だ?」
話題がいきなり優弥に向けられた。ジロリと怪しんでいる視線を感じる。
「報告よりも先に私に会わせる程の者なのか?」
「はい、この方がサーベルブラックジャガーを討伐したのです」
「なんとっ……!」
隊長はさらりと答えた。だが、王は信じられないと目で訴えていた。
「この方は異界人なのです」
「なっ……!」
またも隊長はさらりと答えた。しかし、それに反応したのは王ではなく、その隣にある柱だった。
正確には、その柱の影に隠れていた人物なのだが。
優弥と隊長の視線がその柱に集まる。
隠れている人物はもうこれ以上は無理かと悟ったのか、観念して三人の前に姿を現す。
それは銀の鎧を着込んだ大男だった。背丈は二メートル近くありそうだが、その存在感はそれ以上あるように感じさせた。
顔を横断するように大きな傷があり、常に戦場に身を置いているかのような威圧感を身に纏っている。
逆立った金髪がライオンのたてがみを彷彿とさせ、優弥をギロリと睨んでいるのだが、それだけで自分はか弱い草食動物にでもなったような気分だった。
「あれを、倒したというのか」
その問は優弥に投げられるのが誰にでもわかるくらいまっすぐだった。
「王もお人が悪い。人払いをお願いしたのに、この人を残しておくだなんて」
隊長はまるで気にしないで王を責める。その様子だと始めからわかっていたようだった。
「王を一人にしておけるわけがなかろう」
答えたのは隣にいる大男だった。
「それは失礼いたしました、第一部隊隊長リオナディオ殿」
然り気無く紹介してくれた。この状況を挙動不審に見守っている優弥への配慮だろう。
王に気圧され、リオナディオ隊長に気圧され、どんどんと縮こまっていく優弥はまるで小動物のようだった。
「本当にそやつが異界人だと?」
リオナディオ隊長も疑いの眼差しを向ける。
それは当然の反応だった。
異界人が現れるのは、この世界に滅亡の危機が迫った時だけ。
しかし、今はそんな差し迫った状況ではないし、前に異界人が現れてから二十年しか経っていない。だから優弥が異界人だということを隠してほしいと。
だが王にだけは事情を説明することになるので、今回こうして謁見をすることとなった。
隊長が王に、優弥との出会いからサーベルブラックジャガーを退治したところまでを説明した。
「お主がそう言うのだろうから、そうであろうが、しかしな……」
隊長の説明を聞いても、王とリオナディア隊長は半信半疑だった。
「では、一つ試しましょう」
そういって隊長は面白そうに向き直った。
「今回のユウヤ殿の活躍がなければ、我が隊は甚大な被害、もしくは全滅もあり得ました。そこで、今回の活躍の褒賞として、ドゥメーヌ金貨を差し上げていただきたい」
それを聞いて王はぎょっとした。
「ユウヤ殿、ドゥメーヌ金貨五枚でいかがかな?」
(いかがかな、と聞かれましても……)
優弥は困惑していた。これはどう答えるのが正しいのか、隊長の意図がわからなかった。
この世界の通貨、もしくはこの国の通貨なのだろうが、優弥にはその価値がまったくわからなかった。
この国への道中でもそんな話題はなかった。
(金貨っていうくらいだから、相当価値があるものなんじゃ……)
元の世界でも金は価値の高いもの、という認識程度しかない。ただの高校生が金の価格などわかろうものもない。
(その金貨一枚が百万円くらいの価値があるとして、五枚だと五百万円……!)
いくら命を賭けたとはいえ、さすがに高すぎるのではないだろうか。
「それはちょっといただき過ぎなのではないでしょうか……」
優弥は小さく答えた。
それが正解なのかどうなのかはすぐにわかった。隊長が吹き出しそうになるのを必死に我慢している。
王とリオナディア隊長はますます驚き、信じられないものを見ているような目で優弥を見ていた。
(一枚一万円くらいだったか……?)
金貨といえども、大きさによってその価格は大きく変わる。それくらいであっても十分にあり得る話だった。
「ユウヤ殿」
隊長がいたずらっ子のように微笑みながら教えてくれた。
「ドゥメーヌ金貨とは、子供達に大変人気な金貨の形をした飴菓子です」
どうやら思いきり騙されたようだ。
まるで一枚の西洋絵画の中にでも迷い込んでしまったかのような感じだ。
広い空間に何本も等間隔にそびえ立つ柱、その床を流れる一筋の赤い絨毯、その先の玉座に威厳たっぷりで座っている人物。これでふさふさの髭でも蓄えていたら完璧だったのだが、あいにくと年は召していそうだが髭は生えてはいなかった。
しかしその空間は、優弥が今まで見たことがないくらい豪華で、そして厳かだった。
王がいる空間だからだろうか、何とも言えない、今まで感じたことのないような重苦しい空気があった。
優弥が緊張しているからだろうか。それとも不安からか。
隊長と優弥はゆっくりと玉座に近付いていく。
玉座がある辺りは一段高くなっていて、その段の手前で隊長は立ち止まり、跪いた。
「サーベルブラックジャガーの調査、ご苦労であった」
しわがれた声が低く響く。
その声の重圧におののき、優弥も隊長に倣って跪く。
「勿体無きお言葉、ありがとうございます」
隊長は頭を下げたまま答える。
「して、その者は何者だ?」
話題がいきなり優弥に向けられた。ジロリと怪しんでいる視線を感じる。
「報告よりも先に私に会わせる程の者なのか?」
「はい、この方がサーベルブラックジャガーを討伐したのです」
「なんとっ……!」
隊長はさらりと答えた。だが、王は信じられないと目で訴えていた。
「この方は異界人なのです」
「なっ……!」
またも隊長はさらりと答えた。しかし、それに反応したのは王ではなく、その隣にある柱だった。
正確には、その柱の影に隠れていた人物なのだが。
優弥と隊長の視線がその柱に集まる。
隠れている人物はもうこれ以上は無理かと悟ったのか、観念して三人の前に姿を現す。
それは銀の鎧を着込んだ大男だった。背丈は二メートル近くありそうだが、その存在感はそれ以上あるように感じさせた。
顔を横断するように大きな傷があり、常に戦場に身を置いているかのような威圧感を身に纏っている。
逆立った金髪がライオンのたてがみを彷彿とさせ、優弥をギロリと睨んでいるのだが、それだけで自分はか弱い草食動物にでもなったような気分だった。
「あれを、倒したというのか」
その問は優弥に投げられるのが誰にでもわかるくらいまっすぐだった。
「王もお人が悪い。人払いをお願いしたのに、この人を残しておくだなんて」
隊長はまるで気にしないで王を責める。その様子だと始めからわかっていたようだった。
「王を一人にしておけるわけがなかろう」
答えたのは隣にいる大男だった。
「それは失礼いたしました、第一部隊隊長リオナディオ殿」
然り気無く紹介してくれた。この状況を挙動不審に見守っている優弥への配慮だろう。
王に気圧され、リオナディオ隊長に気圧され、どんどんと縮こまっていく優弥はまるで小動物のようだった。
「本当にそやつが異界人だと?」
リオナディオ隊長も疑いの眼差しを向ける。
それは当然の反応だった。
異界人が現れるのは、この世界に滅亡の危機が迫った時だけ。
しかし、今はそんな差し迫った状況ではないし、前に異界人が現れてから二十年しか経っていない。だから優弥が異界人だということを隠してほしいと。
だが王にだけは事情を説明することになるので、今回こうして謁見をすることとなった。
隊長が王に、優弥との出会いからサーベルブラックジャガーを退治したところまでを説明した。
「お主がそう言うのだろうから、そうであろうが、しかしな……」
隊長の説明を聞いても、王とリオナディア隊長は半信半疑だった。
「では、一つ試しましょう」
そういって隊長は面白そうに向き直った。
「今回のユウヤ殿の活躍がなければ、我が隊は甚大な被害、もしくは全滅もあり得ました。そこで、今回の活躍の褒賞として、ドゥメーヌ金貨を差し上げていただきたい」
それを聞いて王はぎょっとした。
「ユウヤ殿、ドゥメーヌ金貨五枚でいかがかな?」
(いかがかな、と聞かれましても……)
優弥は困惑していた。これはどう答えるのが正しいのか、隊長の意図がわからなかった。
この世界の通貨、もしくはこの国の通貨なのだろうが、優弥にはその価値がまったくわからなかった。
この国への道中でもそんな話題はなかった。
(金貨っていうくらいだから、相当価値があるものなんじゃ……)
元の世界でも金は価値の高いもの、という認識程度しかない。ただの高校生が金の価格などわかろうものもない。
(その金貨一枚が百万円くらいの価値があるとして、五枚だと五百万円……!)
いくら命を賭けたとはいえ、さすがに高すぎるのではないだろうか。
「それはちょっといただき過ぎなのではないでしょうか……」
優弥は小さく答えた。
それが正解なのかどうなのかはすぐにわかった。隊長が吹き出しそうになるのを必死に我慢している。
王とリオナディア隊長はますます驚き、信じられないものを見ているような目で優弥を見ていた。
(一枚一万円くらいだったか……?)
金貨といえども、大きさによってその価格は大きく変わる。それくらいであっても十分にあり得る話だった。
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