これで異世界なんて、どうかしてるっ!

ひむべーれ

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意外な展開

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 ごほんっ、という王の気まずそうな咳払いが響く。

「どうやら本当に知らなかったようだな」

 隣でリオナディア隊長もあんぐりとしている。どうやらドゥメーヌ金貨のことはこの世界の人なら誰でも知っているようだ。

「ユウヤ殿、この世界の通貨はリグナスです。鉄貨一枚が一リグナス、銅貨一枚百リグナス、銀貨一枚千リグナス、金貨一枚一万リグナスとなります」

 ついでみたいに教えてくれたが、この世界で生きていく上ではとても大事なことだ。気にも止めなかった優弥も悪いが、このやりとりをやるためにあえて教えなかったようである。
 優弥は隊長をじっと睨むが、隊長はまったく気にしないで王の方へと目を向けた。

「これで信じていただけましたか?」

「ああ……信じ難いことだが、どうやら本当に異界人アイナーらしいな……。名は何と申されるのか?」

「ユウヤ・オリクボと申します」

 いつまで隊長を睨んでいるわけにもいかず、再びかしこまって王に返答する。

「そう、かしこまらずとも良い。異界人アイナーならば、こちらがかしこまらなければならないのだから」

「はあ……」

 そうは言われても、遥か目上の人間に対してそのようなことはできない。
 これは姉達の教育の賜物なのだが、優弥は基本的な礼節を弁えている。目上の人に礼儀を欠いたことはないのに、いくら別の世界とはいえ、王に対してそんなことはできない。そんなことをしたら、姉達に何と言われるか。
 優弥は苦笑した。

「それで、これからどうするつもりだ?」

 王が隊長に問う。
 それは優弥も知りたいところだった。

「はい、欲しいものがございます」

 隊長は再び跪き、頭を下げる。

「情報です」

「情報が欲しいとな?」

 王は頭を捻る。一体どんな情報かと考えているのだろうが、優弥にはわかった。それは王が今持っている情報ではない。これからの情報なのだ。

「ユウヤ殿が異界人アイナーということは、この世界にまた滅亡の危機が訪れているということ。しかし、我々はその兆しの情報すら知り得ません。なのできっとこれから普通ではない情報が舞い込んで来るかと思います」

「普通ではない情報?」

「はい。どんなものかはわかりません。例えば天変地異かもしれませんし、例えばどこかの国が一夜にして滅びたというものかもしれません」

 ごくりと王が喉を鳴らした。
 国が一夜にして滅ぶだなんてことがもしあったとして、それは他人事ではないのかもしれないのだから。

「どんなあやふやな情報でもいいです。とにかく、今この世界に起きている不可思議な出来事、異変の情報が欲しいのです。ユウヤ殿が世界のあらゆる情報が集うこのマクルストに現れたのは神の御導きと言うほかありません」

 隊長の言葉はまっすぐと王に届く。
 この世界を守るため。隊長の熱い思いはすぐ隣にいる優弥にも伝わってきた。

「わかった。正確性は問わず、世界のあらゆる異変についての情報をまとめ、知らせよう」

 王はゆっくりと頷き、隣にいるリオナディア隊長を見た。
 リオナディア隊長も王を見て、頷いた。

「して、今後はどうするつもりだ?」

 王が隊長に再び聞いてきた。

(それはさっきと同じ質問なのでは……)

 優弥は心の中で突っ込むが、どうやら隊長には真意がわかっていたようだ。

「情報が集まるまでは私の隊について、色んなことを学んでいただきます」

(なるほど、そういうことか)

 情報が集まるまでは時間がかかる。この世界にはネットなんてものはないだろうから、世界中の情報を仕入れようとしたら、いくら世界中の情報が集まるマクルストといえど時間がかかってしまう。
 その情報が集まるまでは何をしているのか、ということか。

「ユウヤ殿はこの世界に不馴れ。地理や情勢、それに戦闘など、色んなことを学んでいただかなければ生きては行けません」

 恐ろしいことを言い出すが、実際その通りだ。今さら一人ぼっちで放り出されるだなんて想像したくもない。
 優弥はこの世界に来てすぐの頃の孤独感や不安を思い出し、背筋が冷たくなった。

「なるほど。なら、異界人アイナーのことはそなたに任せよう」

「ありがとうございます」

 隊長はさらに頭を下げた。王の隣にいるリオナディア隊長がなぜか自慢げな顔をしている。

(どういうことだ?)

 優弥は疑問が湧いたが、今すぐに消化しなければならない問題でもない。
 とりあえずは気にしないでおくことにする。

「王都に戻るのにかなりの強行軍を敢行しました。まずはその疲れを癒し、その後司祭様の元へお伺いします」

「司祭殿のところへ?」

 王は首を捻った。

「はい、私は異界人アイナーの伝説については不勉強なので、司祭様にご教授願おうかと……」

「いや、そうではなく。司祭殿は今いないぞ?」

「は?」

 優弥と隊長の声が重なる。

「緊急の議会が入ったとかで昨日、聖王国ファレスに向けて旅立たれた」

「ファ、ファレス? ということは……」

 謁見の間に入って、初めて隊長が狼狽する。
 その姿を見て、優弥は嫌な予感がした。

「戻るのは二ヶ月後くらいになると申されていた」

「二ヶ月後!」

 素っ頓狂な声を出したの優弥だった。隣で隊長も苦笑いしている。
 まさかそんなことになっているとは隊長も思わなかったのだろう。
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