これで異世界なんて、どうかしてるっ!

ひむべーれ

文字の大きさ
28 / 40

四つの異変、その一 はたまたお約束のアレ

しおりを挟む
「四つ、ですか?」

 優弥は息を飲んだ。それは多いのか少ないのか判断が難しいところだ。そもそも、何と比べればいいのかわからないが。

「はい、まず一つ目はダンジョンです」

 異世界の代名詞、ダンジョン。
 この世界ヴァルデールにも当然のように存在した。ヴァルデールのダンジョンは急に現れるものらしい。
 例えば、昨日まではなかったのに突如として山道の途中に洞窟が現れたとか、長年誰も住んでいなかった屋敷がダンジョン化したとか、パターンはいろいろあるらしい。
 ダンジョンは入る度に地形が変わるというもので、中には魔物がいる。奥に行けば行く程魔物は強くなるが、宝箱を見つける可能性も高くなるという。
 宝箱には貴重なアイテムや武器などが入っているが、たまになんだかわからない物も入っているという。
 ダンジョンの最奥にはボスモンスターがいて、倒すとダンジョンコアというアイテムが手に入る。それはその名の通り、ダンジョンのコアで心臓部。壊すとダンジョンコアを入手したダンジョンはなくなってしまうが、壊した者に新たな力を授けるという。ユニーク魔法が使えるようになったとか、クラスチェンジしたとか、ただ単純にステータスが上がったとか、多種に渡り、その効果は絶大らしい。
 そのため、ダンジョン攻略は大変人気だという。ダンジョン攻略を生業とする、冒険者と呼ばれる者達が現れるくらいに。
 ダンジョンには入場制限があり、最大七人までを一組として、そのダンジョンの大きさによって変わるが、三組から十組くらいしか入れない。だから我先にダンジョンに入ろうとする者が多くて、いさかいが絶えなかった。死者が出ることもざらにあったそうだ。
 それは元も子もないだろうということで、国と冒険者達を束ねる冒険者ギルドがダンジョンの管理をし始めた。と言っても、入場の順番を整理したりするだけなのだが。ダンジョンに入る者は基本的に自己責任だし、もし攻略中に危機に陥っても誰も助けてはくれない。ダンジョンの中で死んでも、死体から装備まで全部ダンジョンに吸収されてしまう。一説ではそれが宝箱の中身となったり、ダンジョンコア破壊の恩恵の元になっていたりするのではないかと言われている。
 危険と魅惑を同時に孕んだもの、それがダンジョンだ。

「我がマクルストと北に隣接しているガモルティの国境に突然、ダンジョンが現れたのです」

「突然、ダンジョンが現れた……でも、それっておかしなことではないのでは?」

 この世界のダンジョンは突然現れる。ならばこの話のどこにおかしな点があるのだろうか。

「洞窟型のダンジョンや地形型のダンジョンならおかしくはないのですが、今回現れたのは建物型のダンジョンなんです。建物型は元々存在していた建物がダンジョンとなる事例しかないのです」

「つまり、突如として謎の建物が現れ、それがダンジョンだったと?」

「はい、そういうことです」

 ヴェルディス隊長がよくできましたと言わんばかりに首肯した。
 ヴェルディス隊長は面倒見が良いのだが、たまに優弥を子供みたい扱うことがある。それが少し恥ずかしかったりする。

「しかもその建物の形が少し特殊で……なんというか、緑色の大きな人物像が立っているのですが、それが何なのか、過去の文献からも当てはまるものがなかったそうで……」

「緑色の大きな人物像……」

 優弥にはふと思い当たるものがあった。しかしそんなわけがないと頭を振る。それは元の世界にあるものだ。こちらに来ているわけがないし、それがダンジョンになるだなんて、意味がわからない。

「すぐにでもダンジョンに探索部隊を送りたいのですが、何分ガモルティとの国境にあるので、どちらの国の管轄かで揉めてしまっていて……」

 北の大国ガモルティ。高い山々に囲まれており、王都はこの大陸で一番高い山の上にある。それはまさに自然の要塞で、山砦大国と呼ばれている。領土はマクルストと西に隣接している農耕の国ドルバレーン、そして東に隣接している鍛冶師国家レシキンの三国の北部に渡っている程広い。
 国土が広いということは、その分人も多い。しかし国土のほとんどが山であり、しかもその山のほとんどが自然の育まれていない岩山で、それ以外も荒れ地が広がっているばかりで作物は育ちにくく、食料は不足しがち。マクルストからの輸入に頼っている。
 だが、山や荒れ地の多いガモルティに届けるのは一苦労で、どうしても値が上がってしまう。ガモルティから輸入するものといったら鉱石なのだが、最近は珍しい鉱石や質の良い鉱石が取れなくなりつつあり、輸入するものがあまりないのだ。

「つまり、貿易摩擦が起きている、と」

 優弥は一人で納得しているが、ヴェルディス隊長には伝わらなかったようで、きょとんと不思議な顔をしている。

「輸入と輸出のバランスが悪くて、国家間で経済的な問題が起きてる状態のことですよ」

 優弥が苦笑気味に説明する。元の世界の言葉では通じないということがたまにあったりする。かと思えば変なことは伝わったりしたり。こういう時に、本当に不思議な世界だと改めて感じる。

「なるほど、そうなんですね」

 隊長は納得してくれたようだ。

「そのせいでガモルティとはあまり良い関係とは言えないということですね」

「その通りです」

 ガモルティは国力がどんどん削られていっている。資金や資材など。そんな中に新たなダンジョンが現れたら是が非でもほしいだろう。
 ダンジョンはそれだけで価値がある。人を呼ぶし、中には資金や資材が豊富だし、ダンジョンコアはその希少性からとんでもなく高値になるらしい。

「ガモルティは新しいダンジョンを手に入れようと必死です。特に見た目からして普通ではないから中も未知数です。これで攻略中に珍しいアイテムでも発見されたらそれこそ莫大な富を生むでしょう」

 人が集まるところは金が集まる。どこの世界でもそういうのは一緒ということだ。

「しかも、ガモルティは少し前に管理していた唯一のダンジョンを攻略されてしまい、今はダンジョンを所有していない状況です。我がマクルストも今は二つのダンジョンしかありません。これは他の国と比べると少ない方で、我々としても管理権を手に入れたいところです」

「それで、管理権を巡って争いが起きてしまっていると」

 優弥は悲しそうな顔をする。やはりどこの世界でも人と人との争いは避けられないのか。

「まだ直接的なことは何も起きていません。まだ牽制しあっている状態、と言ったところですかね。この先はわかりませんが……」

 隊長は真顔になる。この先のことを見据えているのだろうか。

 どう転ぶかわからないが、まだ少し先のことだ。どちらの国のものになるかはわからないが、今は手を出せないようだ。

「一つ目はダンジョンというのはわかりました。では、次の情報は何でしょうか?」

 肩を落とすにはまだ早い。情報はまだ三つもあるのだ。

「二つ目は地形の変化です」

「ち、地形の変化?」

 これまた壮大な話が出てきた。

「はい。そしてこれが、司祭殿が帰ってきていない理由でもあります」

 二ヶ月経ったのにまだ司祭が帰ってきていなかった。
 優弥としてはそれも充分驚きだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...