これで異世界なんて、どうかしてるっ!

ひむべーれ

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四つの異変、その二 地形の変化?

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「し、司祭様が帰って来ていないというのはどういうことですか?」

 さすがに動揺を隠しきれていない。二ヶ月後に司祭と会わせてもらえるというから頑張ってきたのに。

「まだ、お伝えしていませんでしたっけ?」

 ヴェルディス隊長は恐る恐る優弥に訊ねる。
 どうやらうっかりしていたようだ。

「はい」

「それは失礼いたしました!」

 ヴェルディス隊長は土下座でもするのではないかというくらいの勢いで頭を下げた。こちらの世界には土下座という概念がないのでしないだろうが。

「実は先日、司祭殿がお戻りになれないという知らせが参りました。帰路の途中で問題が起きたということです」

「それが、地形の変化ですか?」

「はい、そうです」

 地形の変化で帰れなくなった。理由としてはわからなくないが、イメージは湧かない。

「どういうことなんですか?」

「端的に言うと、山ができたんです」

「や、山?」

「はい、山」

 優弥は声が裏返ってしまった。山というのはそれこそとんでもなく長い時間をかけて作られるものだ。地形の変化というくらいだから小規模のものを予想していたが、山ができたとなると地形の変化と言うよりも地殻変動とまで言えるのではないだろうか。
 そんなことがヴァルデールではよく起こるのかとも思ったが、そんなわけがないから異変として情報が回ってきたのだ。

 ヴェルディス隊長は申し訳なさそうに話を続ける。

「今回、司祭殿が向かわれたのはヴァルディノウス島というところです。そこにウルマティス教の聖都、アマルルがあります」

 ウルマティス教というのは、この世界唯一の宗教だ。唯一神ウルマティスを崇め、研究している。優弥が話を聞いた限り、宗教というよりも学問に近い感じだった。ウルマティス神が何をし、どうやってこの世界を作ったのか。それを紐解き、調べていく。それがウルマティス教の主な活動だ。それを積極的に広めようとはせず、どちらかというと来る者拒まずの姿勢で、色々と教えを広めている。
 それで成り立つのかと疑問に思ったが、彼らの研究はとても役に立っているらしい。新しい魔法や法則など、日常生活を豊かにする術を発見し続けているらしい。
 そして、彼らの研究はウルマティス神だけに止まらない。世界の危機と異界人アイナーについても研究している。

 度々世界に危機が訪れるのは何故なのか。
 それを救うのがウルマティス神ではなく異界人アイナーなのは何故なのか。
 異界人アイナーが選ばれる理由は何なのか。
 異界人アイナーとは何なのか。

 そんなことを研究している。
 最後に異界人アイナーが現れたのがわずか二十年前ということもあり、その研究が今、最も熱を持っているらしい。世界中の司祭(研究者)がこぞって日々研究を重ねている。

 そんな者達の総本山が聖都アマルル。今回は緊急の会合、言わば学会のようなものが行われ、マクルストにいる司祭もアマルルに向かったわけだ。

「ヴァルディノウス島は大きな島ではありません。アマルルがあるだけですが、港とは離れています。アマルルは山の上にありますので」

 ガモルティも王都が山の上にある。どこの世界でも権力者達には高いところというのが魅力的らしい。
 優弥はうっすらとそんなことを考えていた。

 そんな中でふと思い付いたことがあった。
 今までの話、これまでこの世界について学んだことを考えると、ある一つの推論が立った。

(もしかしてその山って……いや、まさかそんなことないか)

「その港とアマルルの間に、山ができたのです」

 変なことを考えていたらいきなり話が戻ってきた。

「つまり、アマルルから山を下りて港に行くには、その山を登らないといけなくなってしまったわけですか」

「はい、しかもその山が霊力を多く含んだ霊山らしく……」

 なにやらヴェルディス隊長がさらに申し訳なさそうに話を続ける。こういう時は必ず良いことなどではないのは経験でわかっていた。

「彼らの研究者魂に火が付いてしまったようで、その山を研究しに登ると……」

「え?」

 話がおかしくなってきた。つまりマクルストの司祭は急に山が現れて足止めを食らってしまったわけではなく……

「自らの意思で山に登り、帰って来ないと?」

「……はい」

「えええええっ!」

 思わず大声を出してしまった優弥。だがこれは仕方がないと言えるだろう。

(じゃあ、俺はどうしたら……)

 優弥の目標は元の世界に帰ること。その鍵となる司祭に話を聞けないとなると、途方に暮れてしまう。
 だが、しばらくして落ち着いたのか思考が戻ってくると妙案が浮かんだ。

「じゃあ、俺がアマルルに行けばいいのでは……」

 これは悪くない案だった。目的の人物が帰ってこないなら会いに行けば良い。自分はついさっき、それができる地位を手に入れたのだから。

「ヴァルディノウス港は山の危険度がわからないため、基本的に閉鎖となりました……」

「なっ……」

 それは考えなかった。いや、そんなことになるだなんてわからなかったと言った方がいいか。

「じゃあ、俺は一体どうしたら……」

 本気で落ち込む優弥。司祭に会って話を聞くという目的がなくなってしまった今、何をすればいいのかがわからなかった。

「ユウヤ殿、会いに行ったらどうですか?」

「え? でも港は閉鎖されてるんじゃ……」

「そうではなく、他の異界人アイナーにです」

「え?」

 それこそ訳がわからなかった。他の異界人アイナーに会いに行こうにも居場所がわからない。
 いや、もしかして残りの情報というのは……。

「あとの二つ情報は、おそらく異界人アイナーだと思われる人物についての情報なのです」
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