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四つの異変、その四 気にしないでいい人達
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「ご存じなんですか?」
優弥の表情を読んでヴェルディス隊長が訊ねてくる。
「はい、名前は知っています。こちらの世界での知名度は高いです。アメリカという大国の軍のようなものです」
ヴァルデールには警察という組織は存在しない。軍が警察の役割も果たしている。より正確にいうならば軍の中でも担当が分かれていて、警察に当たる治安部隊というのが存在し、マクルストだと第四部隊がそれにあたる。
FBIは普通の警察組織ではないはずだし、優弥もそこまで詳しいわけではない。それくらいの説明で充分伝わるはずだ。
「もう少し詳しく彼らの情報を教えてもらってもいいですか?」
「はい、勿論」
隊長は咳払いを一つ挟み、説明を続ける。
「レシキンの東の果てに、無法者が集まる村があります」
マクルストの東に隣接する国、レシキン。鍛治師国家と呼ばれるくらいに鍛治師達で成り立っている国だ。鍛治が盛んというか、鍛治で成り立っている言っても過言ではない。実際に国を収めているのも鍛治師だし、政を行っているのも鍛治師。国というより鍛治師達の集まり、鍛治師の組合といった方が正しいのではないかと思ったくらいだ。
鍛治師という職業柄かはわからないが、どちらかというと気性の荒い人達が多い。鍛治師同士の小競り合いや喧嘩などは日常茶飯事らしい。
そんな環境の中で育ったせいか、レシキンには無法者が多い。世界に名を轟かす悪人、歴史に名を刻む罪人の中にはレシキンの出身者が多いらしい。
そんなレシキンの東の果てに一つの村がある。無法者ばかりが集まる、その名も無法者の村。世界地図には勿論載っておらず、レシキンの公式な地図にすら載っていない。しかし無法者の村の存在は広く知れ渡っている、レシキンの汚点とも言えるような村。
そこに、とある世界的に有名な悪人が戻って来たという噂があった。
今、その村に住んでいたのはレシキンの中での無法者だったが、世界の無法者がいるとなると黙ってはいられない。
レシキンの軍が、これも武装した鍛治師達なのだが、無法者の村に攻め入った。その悪人を探し出すために。
しかし、そこに誰も見たことがない二人組がいた。
「それが異界人の二人組」
「そうです。最初は戸惑ったレシキンの軍でしたが、取り合えず取り押さえることにしました。無法者の村にいるんだから、無法者に違いないと」
その考えは少々乱暴だと思ったが、それが普通の行動だと思われるくらいに無法者の村が荒れているということなのだろう。
優弥はそう納得し、続きを促した。
「しかし彼らは反撃を受けました。今まで見たことがないような強力な魔法で、爆発音と共に何人もが一瞬にしてやられてしまったとのことです」
ああやっぱり、と優弥は妙に納得した。
彼らが使ったのは魔法ではない。ある武器を使ったのだ。このヴァルデールにはなく、彼らが持っていて然るべき武器、銃だ。銃を使ってレシキンの軍を撃退したのだ。
「その後もレシキンの軍が何度か無法者の村に攻め込みましたが、二人の前に悉く倒れていったそうです」
いくらこの世界には魔法があるとはいえ、銃の存在、その性能を知らなければ防ぐことすら難しいだろう。何人もの鍛治師が成す術もなく銃の前に倒れていったことだろう。
だが、銃を撃つには銃弾が必要だ。ストックがあるとはいえ、そんなに多くは持ってきていないはず。レシキンの軍が何度攻めているのかわからないが、もう撃ち尽くしたか、あるいは残数が残りわずかということもありえる。
頼みの銃がなくなった時、彼らはどうなるのだろうか。
レシキンの軍に捕まり、そのまま処刑だなんてことも……。
そんな恐ろしい考えを振り払うかのように優弥は頭を振った。
「レシキンはその二人をどのようするつもりなんですか?」
「レシキンは無法者の村の存在すら外に出そうとしていません。それなのにそこに厄介な二人組が住み着いたとなると、どう対処するか……おそらくは秘密裏に処理しようとするでしょうね」
「秘密裏にというと、捕まえてそのまま……」
「手っ取り早く村ごとそのまま、なんてこともありえるかも知れません」
ヴェルディス隊長の恐ろしい考えに、優弥はぞっとした。
しかしそれでも、心のどこかに大丈夫だと思う気持ちがあった。
FBIに知り合いがいるわけはないし、詳しく知っているわけでもない。姉がハマっていて一緒に観た海外ドラマの中での認識しかないが、彼らはどんな状況でも勇敢に悪に立ち向かっていく。
それに優弥とは違い、彼らは特殊な訓練を受けたプロフェッショナルだ。どんな状況でも生き残る術を持っている。
例え銃弾がなくなっても、簡単に負けるとは思えないし、ただで捕まるとも思えない。
「よくわかりました。ありがとうございます」
優弥はヴェルディス隊長に礼を言って、今手に入れた四つの情報を整理する。
その中で自分が一番最初にやらなければいけないこと。
それはやはり……。
「隊長、ドルバレーンの王都に行く許可をいただきたいのですが」
他の異界人との合流。それが最優先事項だろう。
聖女とFBIの二人組のどちらを優先するかといえば、やはり聖女の方だ。どちらもヴァルデールの人とは言葉が通じないが、FBIは二人組なのに、聖女の方は一人だ。心細いことこの上ないだろう。
それにFBIということはアメリカ人だ。優弥は英語の成績も優秀とはいえ、外人とすんなりコミュニケーションを取れるかと聞かれたら自信はない。FBIの二人組とコミュニケーションを取るのに手間取って、聖女の方を疎かにしている間に何かの事情で遠くに行かれてしまっただなんてことになっては元も子もない。聖女の方は何人かの情報は全くないが、ある程度手間取ったとしてもFBIの方は本人達が何とかしてくれるはず。
諸々の事情を考え、まずは聖女と会うことを優先すべきだと判断した。
すると、お見通しだと言わんばかりにヴェルディスはにまりと笑った。
「そう言うだろうと思って、すでに出立の許可は申請してあります」
こうして、当初の予定とは変わってしまったが、優弥はドルバレーンに向かうことになった。
優弥の表情を読んでヴェルディス隊長が訊ねてくる。
「はい、名前は知っています。こちらの世界での知名度は高いです。アメリカという大国の軍のようなものです」
ヴァルデールには警察という組織は存在しない。軍が警察の役割も果たしている。より正確にいうならば軍の中でも担当が分かれていて、警察に当たる治安部隊というのが存在し、マクルストだと第四部隊がそれにあたる。
FBIは普通の警察組織ではないはずだし、優弥もそこまで詳しいわけではない。それくらいの説明で充分伝わるはずだ。
「もう少し詳しく彼らの情報を教えてもらってもいいですか?」
「はい、勿論」
隊長は咳払いを一つ挟み、説明を続ける。
「レシキンの東の果てに、無法者が集まる村があります」
マクルストの東に隣接する国、レシキン。鍛治師国家と呼ばれるくらいに鍛治師達で成り立っている国だ。鍛治が盛んというか、鍛治で成り立っている言っても過言ではない。実際に国を収めているのも鍛治師だし、政を行っているのも鍛治師。国というより鍛治師達の集まり、鍛治師の組合といった方が正しいのではないかと思ったくらいだ。
鍛治師という職業柄かはわからないが、どちらかというと気性の荒い人達が多い。鍛治師同士の小競り合いや喧嘩などは日常茶飯事らしい。
そんな環境の中で育ったせいか、レシキンには無法者が多い。世界に名を轟かす悪人、歴史に名を刻む罪人の中にはレシキンの出身者が多いらしい。
そんなレシキンの東の果てに一つの村がある。無法者ばかりが集まる、その名も無法者の村。世界地図には勿論載っておらず、レシキンの公式な地図にすら載っていない。しかし無法者の村の存在は広く知れ渡っている、レシキンの汚点とも言えるような村。
そこに、とある世界的に有名な悪人が戻って来たという噂があった。
今、その村に住んでいたのはレシキンの中での無法者だったが、世界の無法者がいるとなると黙ってはいられない。
レシキンの軍が、これも武装した鍛治師達なのだが、無法者の村に攻め入った。その悪人を探し出すために。
しかし、そこに誰も見たことがない二人組がいた。
「それが異界人の二人組」
「そうです。最初は戸惑ったレシキンの軍でしたが、取り合えず取り押さえることにしました。無法者の村にいるんだから、無法者に違いないと」
その考えは少々乱暴だと思ったが、それが普通の行動だと思われるくらいに無法者の村が荒れているということなのだろう。
優弥はそう納得し、続きを促した。
「しかし彼らは反撃を受けました。今まで見たことがないような強力な魔法で、爆発音と共に何人もが一瞬にしてやられてしまったとのことです」
ああやっぱり、と優弥は妙に納得した。
彼らが使ったのは魔法ではない。ある武器を使ったのだ。このヴァルデールにはなく、彼らが持っていて然るべき武器、銃だ。銃を使ってレシキンの軍を撃退したのだ。
「その後もレシキンの軍が何度か無法者の村に攻め込みましたが、二人の前に悉く倒れていったそうです」
いくらこの世界には魔法があるとはいえ、銃の存在、その性能を知らなければ防ぐことすら難しいだろう。何人もの鍛治師が成す術もなく銃の前に倒れていったことだろう。
だが、銃を撃つには銃弾が必要だ。ストックがあるとはいえ、そんなに多くは持ってきていないはず。レシキンの軍が何度攻めているのかわからないが、もう撃ち尽くしたか、あるいは残数が残りわずかということもありえる。
頼みの銃がなくなった時、彼らはどうなるのだろうか。
レシキンの軍に捕まり、そのまま処刑だなんてことも……。
そんな恐ろしい考えを振り払うかのように優弥は頭を振った。
「レシキンはその二人をどのようするつもりなんですか?」
「レシキンは無法者の村の存在すら外に出そうとしていません。それなのにそこに厄介な二人組が住み着いたとなると、どう対処するか……おそらくは秘密裏に処理しようとするでしょうね」
「秘密裏にというと、捕まえてそのまま……」
「手っ取り早く村ごとそのまま、なんてこともありえるかも知れません」
ヴェルディス隊長の恐ろしい考えに、優弥はぞっとした。
しかしそれでも、心のどこかに大丈夫だと思う気持ちがあった。
FBIに知り合いがいるわけはないし、詳しく知っているわけでもない。姉がハマっていて一緒に観た海外ドラマの中での認識しかないが、彼らはどんな状況でも勇敢に悪に立ち向かっていく。
それに優弥とは違い、彼らは特殊な訓練を受けたプロフェッショナルだ。どんな状況でも生き残る術を持っている。
例え銃弾がなくなっても、簡単に負けるとは思えないし、ただで捕まるとも思えない。
「よくわかりました。ありがとうございます」
優弥はヴェルディス隊長に礼を言って、今手に入れた四つの情報を整理する。
その中で自分が一番最初にやらなければいけないこと。
それはやはり……。
「隊長、ドルバレーンの王都に行く許可をいただきたいのですが」
他の異界人との合流。それが最優先事項だろう。
聖女とFBIの二人組のどちらを優先するかといえば、やはり聖女の方だ。どちらもヴァルデールの人とは言葉が通じないが、FBIは二人組なのに、聖女の方は一人だ。心細いことこの上ないだろう。
それにFBIということはアメリカ人だ。優弥は英語の成績も優秀とはいえ、外人とすんなりコミュニケーションを取れるかと聞かれたら自信はない。FBIの二人組とコミュニケーションを取るのに手間取って、聖女の方を疎かにしている間に何かの事情で遠くに行かれてしまっただなんてことになっては元も子もない。聖女の方は何人かの情報は全くないが、ある程度手間取ったとしてもFBIの方は本人達が何とかしてくれるはず。
諸々の事情を考え、まずは聖女と会うことを優先すべきだと判断した。
すると、お見通しだと言わんばかりにヴェルディスはにまりと笑った。
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